三百七十二話 中級ダンジョン後半 暗黒階層 暗中の探索
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光なき階層に敢えて光を灯した結果を見届けた後、秋彦達は取り合えず上の階層での経験を踏まえて無闇に灯りを使わない方針を取る事にした。
理由はここにいる敵を倒してもやはりうまみらしいうまみが無さそうに見えたからである。
戦闘力が万を越える訳でもないなら戦闘の経験としても価値は薄いのは目に見えている上にガスト・ストーカーの持つ分裂スキルが未知数過ぎる。
単純なスキルの説明文を見る限りだと、一匹敵を倒したら倒した敵が二匹に増える事になる。
「つまり、倒すと増えます、倒し切れません。ってことだよね……」
「正直今までのダンジョンモンスターって絶対倒せたのにな、ここに来て事実上とは言え倒せない敵をお出しすんのかいって気はする」
そう、事実上倒せない雑魚敵の登場である。なまじ一応倒せる所がより嫌らしい。
テレビゲーム、特にRPGのジャンルだと戦闘中時々見かける光景だ。〇〇Aはなかまをよんだ! 〇〇Bがあらわれた! いくら倒しても次々に敵が現れキリがないという感覚としてはこれに近いだろう。
それと違う点としては倒してもその死体が分裂して蘇って来ると言う点だろう。いってしまえば相手を倒した瞬間自動発動する仲間を呼ぶ行動だ。しかも必ず二匹呼び出せる。
まともにやり合ったら負けることはまず無いが、延々と戦わされる羽目になる事になってしまい、あまりの長丁場に体力が尽きてしまい不覚を取る、という可能性はあるだろう。まさにゴリ押しである。
「それもあるけど後半になってから急に戦う旨みがガクッと減ったわよね」
「……戦いを避ける必要性の教育が後半のコンセプトなのかもしれない」
「あー、それは俺も思った。上はからくり理解しなきゃ倒せないし、倒しても旨みがない。そっからのこれだもんなぁ」
「じゃ、ここからは極力戦闘は避けるって方針で行こうか」
「……異議なし」
これらの事から戦いを避ける事こそがここから先のベストな進み方だと判断した一行は、極力戦闘を避けて探索を行うことを決定した。ここからの探索では魔物素材には期待出来ないが、逆に言えば素材の剥ぎ取りにかかる時間を探索に使えると言う事でもあるし、ここからは戦闘はボスに集中出来るだろう。
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その後の探索は実に順調だった。なにせこの階、暗闇でも行動ができるならば事実上障害がない。
これが灯りが必要な探索者だった場合、灯りを消されない様に群がるガスト・ストーカーを増やさない様に倒さずに逃げてと立ち回る必要が出てくる。先の見通しが聞きづらいこともあってかなりやりづらい階層になるのは明らかだ。
だが秋彦達は周りがほぼ見えないような暗闇でも何処に何があるかや道などを理解できるスキルや道具を持っている。
灯りを使いさえしなければ魔物が襲ってこないこの階層では倒す旨みのない魔物を相手にする面倒もなく、宝箱のアイテムを回収できるのでとても楽だ。
「よしよし……さっきまでの面倒が嘘みたいに順調にお宝を回収出来てるな」
「ええ。上の階層で嫌な目にあった分期待したいわー」
「だねー、さっきみたいに嫌らしい戦い方して無視もできなかったし、戦わなくていい分体力温存になってるもん」
「……本当にそう思う」
上の階層での出来事も、少しは飲み込めるというものである。
「まさか前に秋彦の家のダンジョンで使ったものをまた使う事になるとは思わなかったよ」
「……正直一度きり程度に思ってた」
「まああそこには今ときどきくらいしか入ってないし、みんなを連れて入ることもなかったからなぁ。それに今林のところ明るいし」
不意に放り込まれた聞いた覚えのない話に優太と茜が驚く。
「え、林のところ明るいしって何? 僕聞いてないよその話」
「あ、しまった」
「……また伝え忘れ? 話して」
「いやいや待て待て違うって」
今まで一緒にいた事で秋彦は報・連・相を怠る悪癖があることを知っているので、詳細を聞こうとするが秋彦はそれを制止する。
「これに関しては故意に誰にも言ってないから。あの林今ちょっとよく分からん事になってて、取り合えず今ライゾンに調査してもらってて、詳細判明したら話そうと思ってたんだよ、まあ流石に一緒に住んでるジュディには言ったけど」
「まああのワンダーランドは見た方が早いわよね……でも面白い事になってたわ」
「ワンダーランドって何?! いまどうなってんの秋彦んちって!」
「……興味ある」
「あーもーわかったわかったってば。後でな、後で」
「えー、教えてよ〜」
「ジュディは見た方が早いって言ってたけど見ないと信じられない意味わかんなさだからさ、今はちょっと勘弁してくれって。ほら行こうぜ」
興味津々な2人に対して随分と言いづらそうにする秋彦は強引に話を終わらせて先へ進んでしまう。
せっかくの興味深い話を先送りにされて不満げな優太と茜であった。
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