第三百六十九話 中級ダンジョン後半 最後の最後まで
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これも皆さまからのご愛顧の賜物です。
これからもりあダンをよろしくお願いいたします!
濡れた髪を掻き上げて大きくため息をつく秋彦、
装備している服自体はある程度ではあるが温度調節出来る能力が備わっているがそれでもひんやりとした空間にスプリングラーの様に水をかけられるとやはり寒い。外との寒暖差もあって身震いしてしまう。
「うおっ、寒い! ともかくお疲れ」
「ええ、お疲れ様」
改めて先程まで敵だった砂の塊を見てみる。先程まで魔物の姿をしていたそれだったが、今となっては何の変哲もない砂山だ。
「うん、まあ弱くは無かった……のか?」
「うーんそうね……動き自体は悪く無かったと思うんだけど……」
いまいち歯切れの悪い感想だ。だが思い返してみると正直評価に困る相手だった。
砂状体で通常攻撃は無効になるといえウォーター・エンチャントなどで水属性を付与、或いは元々水属性が常に付与されている武器か装備を使ってしまえばそれ程苦にはならなかっただろう。
動き自体も素早いし、常に削りの効果がある攻撃を仕掛けてくるのは確かに脅威なのだが……
「勝負の決め手がただ水掛けただけだからねぇ、あっけないと言えばあっけないかな」
その代償として水をかけてしまえば流体である砂が固まってしまい、水の重さも相待ってそれだけで自滅してしまった。
仮にこの事を知っていれば聖なる水差しの様に持ち物として大量の水分を外から持ち込めるなら最初にいきなり水をボス部屋に撒いてしまえば出現すら出来ずに終わってしまったのでは無いだろうか?
「……多分あの砂状体自体が砂の流体である体を維持する為の特性だったんだと思う。水だって流体になれるのに、そうならずに固まったのがその証拠」
「えっと、つまり?」
「……砂の流体に水を混ぜ込まれたせいで、魔法の特性が不具合を起こして機能自体が機能しなくなった」
「な、成程……」
「……特性を知らずにいればそもそも戦いにすらならないけど、スキルの特性に対して造詣を深めておけばあっさり終わるって事。今回はそれで良い」
「そ、そっか。そうだな」
「それは良いけどそろそろ宝箱開けようよ。お楽しみの時間だよ?」
「おっと、それもそうだな、開けよう開けよう!」
優太に言われて宝箱の存在を思い出す。
デザート・スフィンクスが完全に崩れ落ちて砂の山になった後、音もなく出入り口付近に現れた宝箱。
「まあ開けよう開けようっつっても……」
「今回のはちょっと、ね」
いつもだったらドスンと良い音して現れて、報酬の大きさに期待が掛かるのだが、今回はやけに静かだし、心なしか宝箱自体も小さく見える。
「どうしよう提案しておいてなんだけど不安で仕方ない」
「ここきてから拍子抜けすることばっかだったし、せめてここくらい頼むぜー……?」
今までのこの階における仕打ちも相俟って小さい箱に不安を覚えつつ、恐る恐る開けてみる。
そして、その不安は的中したと言わざるを得なかった。中に入っていたのは一枚の紙切れだった。墨で「スカ」と一言だけ書かれており、無駄に達筆だ。
「あ、あーやっぱり?」
「うん、薄々思ってたわがっかりさせる方向で来るって」
秋彦とジュディはもはや怒る気力も残っていなかった。と言うより怒り散らかすだけこのフロアの悪意に嘲笑われる様な気さえして、そちらの方が腹立たしく思えたので、寧ろ悔しがりもしない事でせめての抵抗をしたと言う気さえする。
「えっと……どうする? なんか気力ごっそり削られたし、帰る?」
「……次のダンジョンアタックがいつになるかわからないから出来るだけ潜りたい」
「つかここで折れたらこのフロアに本当の意味で負けた気がするから俺は次行きたい。次で良いもん手に入れてここで何も取れなかった分取り返したい」
「うーん、それもそうかも。嫌な気分で探索から帰ったら嫌な気分引きずっちゃうし、せめてよし、やった、頑張った! って思えるところまでは行きたいかも」
「うーん、そっか。分かった。じゃあ行こうか」
「……ん」
こうして次の階層へ向かう4人だったが、4人とも口には出さなかったもののすごくモヤの様な感情を抱えることになった。
今回の階層道中のアイテムは救済用の宝箱以外は一つもなかったし、その救済用の宝箱でさえ最終的なリザルトで大きなペナルティが付く嫌なオマケ付き。戦闘経験としてもカラクリがわからなければ倒せないが分かった途端雑魚となり、戦闘経験としても旨みがない。トドメにボスを倒してさえ出てきた報酬が紙切れ一枚。
最後の頼みだったモンスターを倒して出てきた砂も、念の為に拾っておいたが、デザート・スフィンクスの砂になんの魔力も感じられないあたり、一応まだアナライズしたわけではないとはいえ、本当にただの砂である可能性が高くなってきており、素材としてすら期待できそうにない。
「……なんて不毛な階」
口数少ない茜からさえポツリとため息まじりにこう出てしまうのも仕方ないことだろう。
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