第三百六十六話 中級ダンジョン後半 攻略、砂状体
累計PV数849万突破、総合評価19,600pt突破、評価ポイント合計9,000突破いたしました!
これも皆さまからのご愛顧の賜物です。
これからもりあダンをよろしくお願いいたします!
「……で行く。どう?」
「成程ねー、茜ちゃんも色々思いつくねー」
「これで上手く行くかしら?」
「……ダメならまた違う手を考える。でもこれで行けると思う」
「まあモノは試しだな。どうせ今これ以上の手はないんだし」
作戦会議を終えて改めてデザート・ゴーレムの群れと向き合う。作戦会議の際に少し距離を取ったとはいえ、相手は大人しくその場に佇んでいた。
と言うより動きの鈍いあいつらでは遠距離での攻撃以外に攻撃手段はないし、その遠距離攻撃も近くにいたって躱せるレベルだ。無駄に手を出すよりまた秋彦達が近づくまで待っていた方がマシだと判断したのかもしれない。
「じゃ、頼む」
「……ん、【ウォーターエンチャント】」
茜が一言口に出すと、秋彦とジュディは水で出来た薄い膜に覆われた。呼吸はちゃんと出来る。動きの邪魔にもならないが、ひんやりとした冷たさは水中にいるかの様な気になる。
ウォーターエンチャント、優太が以前炎の階層で熱に対する耐性を付けるために使っていたファイヤーエンチャントと似た魔法で、かけた相手に水属性を付与する魔法だ。
以前の階ではフロアが発する圧倒的な熱波に対して耐性を得るために使用したが、今回は暑さ故に使用したのでは無い。
「どれ、じゃあ2度目の突撃、行ってみようか!」
もう一度槍を構えて攻撃を行う! ……手応えあり。さっきの攻撃は文字通り砂の山を崩したかの様な手応えの無さだったが、茜の予想通りバッチリ質量を感じられる手応えを感じた。何も無いままでの攻撃ではすぐに元に戻っていたゴーレムが、切られた場所の再生がされていないのも手応えの証拠と言えるだろう。
「よし! 茜の読み通りだ!」
「じゃあ、私達はこのまま近くのゴーレム達を倒して来ちゃうわね」
「分かった、相手の攻撃には注意してね」
意気揚々と前線に出る前衛。
「……ん、これで上手く行くならこれでも、いけるはず」
ゴーレムの反応を見て茜も動く。聖なる水差しから魔力を使い水を取り出す。取り出された水はさらに魔力を込められ、発射の合図を待つ。
「……ウォーターショット」
言葉と共に、水の塊は弾丸の如き速度で飛ぶ。飛んだ先にいるのは当然デザート・ゴーレム達だ。五発の水の弾は動きの鈍いゴーレム達に難なく着弾した。
「やった! 当たった……ってあれ?」
「……倒れていない」
水の塊をまともに受けたがゴーレムは倒れていない。その代わりに流れる砂が山上に盛り上がったかのような見た目をしているデザート・ゴーレムが濡れた砂山みたいになっている。攻撃動作どころかぴくりとも動く感じがしない。
「えっと、これは……トドメは物理攻撃じゃ無いとダメって感じ?」
「……みたい」
そう言いながら茜は弓を取り出し矢を放つ。矢が当たると、ゴーレムはボロボロと崩れ落ち砂の山になっていった。
「……最初から矢に水属性付与して飛ばした方が早かった」
「ま、まあ一つ経験ってことで、ね?」
「……ん」
………………………………
数十体いたデザートゴーレムだったが、終わってみればあっという間だった。砂状体と削り攻撃には驚かされたがタネが割れてしまえばそこまで苦戦する相手ではなかったと言えるだろう。
だが今回の戦いの終わりに際して全員何処となくがっかりしていた。それは思っていたような強敵との戦いがなかったからではなく……
「戦利品……ほぼ無しかよ」
「剥ぎ取りも相手がこんな有様じゃやろうにも出来ないしね……」
「そういえば今までの敵って何らか剥ぎ取れるものあったけど今回一切無かったね……」
「……骨折り損のくたびれもうけ」
今回のデザート・ゴーレム。びっくりするほど旨みがなかったのである。
あの後も数十体単位で倒したにも関わらず何も落とさないし、武器や防具に攻撃が当たれば削り攻撃で損傷が激しいし、だからと言って逃げようにも数も多いから万一相手の攻撃が当たることを考えたら無視するのにも限度がある。
ゆっくりと確実に心身を削りにかかって来ていた。これでせめて戦利品でいいものがあればと思えば、こいつら倒したら砂の山になってはい終わり。砂以外何も残らないのである。
トドメにその砂さえ、元の砂漠の砂と混じっていてどれが魔物から出た砂なのか区別できないのである。濡れて山になっている間ならば回収のしようがあるが、この場が砂漠という特性を持っている以上、戦闘中に水を付与して固めて倒しても、すぐに回収しないと驚くような勢いで乾くのである。
普通の場所だったら水で濡れた物を1時間放置しようと乾く物では無いだろう。だが、ここでは普通に戦闘をやっている間に乾くのである。回収できるのはせいぜい戦闘後半に倒した個体位であり、下手したら半分も戦利品として回収できていないかもしれない。
せめてこの砂が魔力を宿すガラスの材料にでもなればいいのだが、正直それすら定かではない。こんな有様では正直やる気が炎天下に放置されたバターのような勢いで溶けていくのだ。
「あー、もう。もう考えるのやめにしようぜ、嫌になってきた」
「うん、ここはもうただ通り過ぎるだけ。そうしよう……」
「ええ、ピラミッドも見えてるんだし行きましょ」
「……はぁ」
過去色々なダンジョンに入ったり魔物と戦いもしたが、うんざり度合いで言うなら過去1番の場所かもしれない。全員そう思わずにはいられなかった。
皆様からのご愛顧、誠に痛み入ります
これからも評価、ブックマーク、感想、いいねなど、皆様の応援を糧に頑張って書いていきます。
次回の更新は未定とさせていただきます。宜しくお願い致します。




