第三百六十三話 中級ダンジョン後半 不名誉の証
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「さて茜が引き受けてくれたし宝箱の残り見て行くか」
改めて宝箱の中身を更に見て行く。次に出て来たのは絵の具が入っていそうな見た目の物だ。だが絵の具が入っている訳では無いらしいのはラベルにいかにもピカピカに磨いた剣と鎧の絵が描かれていた事で分かる。
「何だこれ、装備の艶出しクリーム的なヤツか?」
「普通艶出しクリームなら平たい容器だと思うけど」
「ダンジョンの常識をここに持って来ても仕方ないわよ、それに武器の強化だったり意外と違うものかもしれないしね。さ、鑑定して」
「あいよっと……」
ジュディに促されるままに鑑定をする。この道具はこのように出た。
【装備修復剤<低品質>】
【壊れた装備に塗ると欠けた部分が復元したり折れた部分に塗ってくっ付ければ接着剤にもなる万能修復剤。再生能力がある装備に塗ると回復が早まる。<品質は良くないので過度な期待は禁物。緊急用程度>】
「あ、あーなるほどそういうタイプの奴ね」
「良いものが手に入ったね、武器破壊を恐れずに済むって事だ!」
「ここまで来る探索者だと装備って基本一点物でしょうしね、確かにありがたいわ」
どうやらこの絵の装備は綺麗に磨いたのではなく綺麗に修復された物だったらしい。
自分達が使っている装備もいくら質はいいと言っても無理をすれば壊れる可能性が無い訳ではない。増してジュディも言っていた通りこの辺りまで来るような気合の入った探索者の装備など、大抵が苦労して手に入れた素材をお高いレシピ本を入手し、レベルの高い加工術持ちの職人に依頼してようやく手に入るような一点物ばかりだろう。
もしもの時の保険として持っておくだけで気持ちは大分楽になるし武器が壊れることを恐れて戦えないなどという本末転倒な事にもなりにくいだろう。
低品質とはあるので帰ったらちゃんと修復する必要はあるようだが複数個ある。この修復剤もありがたく持って行くことにする。
次に見つけたのはスポンジだ。
……正直それ以外に形容できないくらいに見事に普通のスポンジだ。尤も食器を洗うような大きさでは無く、洗車する際に使用するような大きさではあるが。
「ダンジョンで、スポンジが」
「宝箱から?」
「いやまあ、十中八九只のスポンジな訳ねーんだろうけど、見た目があまりにも普通すぎて逆にインパクトあるなおい」
ともあれ鑑定すると次のように出てきた。
【超貯水スポンジ】
【驚く程の水を吸収するスポンジ。10万リットル分の水を一滴漏らさず吸収する事ができる。吸収した水は絞る事で取り出せるが、浄水機能はないので取扱注意】
「これは、神秘の水差しの強化版か?」
「て言うか聖水を作れない代わりに貯水量を増やした感じかしら」
「あー、なるほど。てか浄水機能はないから取扱注意ってのは何のこった?」
「いくら飲める水をたくさん含ませても汚水混ぜたら全部飲めなくなるよって話じゃないかな、飲み水の保存はお勧めしません的な」
「え、じゃあこれ何に使えば良いんだ?」
「水系の攻撃に対する防御や水魔法に使う水の確保が主な用途じゃない? 水魔法は水っていうリソースが必要だから、水場じゃないと空気の湿気から水分生成しなきゃいけないし、その絡みでここみたいなカラカラの場所だとそもそも水魔法は使えないから」
「言われてみれば確かに。まあ攻撃に水ってあんま使わねーし、基本は防御かね。まあいいや、他には何かあるかな……?」
更に宝箱を探ると、一枚の紙が出て来た。現代のコピー機などに使われる紙ではない古めかしい紙に、でかでかと文字が書かれている。
「なんだこれ、もうすこしがんばりましょう、だってよ」
「え、何これバカにされてる僕達?」
「と、とりあえず鑑定を……」
ここまで来る探索者達相手にわざわざひらがなで書かれている辺り小学生向けの文にも見えて中々に腹立たしい煽り分だ。とりあえず鑑定する。
【不名誉証書】
【もうすこしがんばりましょう<迷宮の仕掛けに翻弄され続け延々と仕掛けを攻略出来なかった者たちの前に現れる救済の宝物庫を開けてしまったことを証明する証明書。持っていると成績発表時に減点になる。この証明書は破棄も破壊もできず、迷宮攻略の成績発表時に消える>】
「な、ななな、何だこれ! 完全にデメリットしかねーじゃねーか!」
「ええー、こんなのあるの……」
「やられたわね……道理でこっちに都合のいいまさに今欲しいような道具ばかりあると思ったら」
要するに迷宮側からいつまでこんな事してるつもりなんだと怒られたらしい。
この文面には思わず三人一斉に空を仰いでしまった。はっきりいって救済措置を謳った罠同然だ。スキルやDPで強くしたと言っても所詮はカンなのか、とんでもない宝箱を開いてしまった様だ。
「くっそぉ! ……んぐぐ固い!!」
秋彦が手に持っていた不名誉証明書を腹立たしく破ろうと力を入れてもびくともしない。本気ではないとはいえ秋彦の力で破れない辺り破棄も破壊もできないというのも冗談では無さそうだ。
「チックショー、俺のカンも当てにならねーな」
「ま、まあまあこんな事もあるって……」
「別にDPが目的って訳じゃないけど、とんだババ掴まされたわね」
一通り嘆いたら、タイミングを見計らっていたかの様に宝箱が溶解液でも掛けられたかの様に音を立てて溶けていった。今の秋彦達にはそれさえも、やるもんやったんだからさっさといけと言われた様な気分になる。
「あーもーさっさと行こう! 気分悪い!」
「どうどう」
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