第三百六十一話 中級ダンジョン後半 砂漠層
累計PV数809万突破いたしました!
これも皆さまからのご愛顧の賜物です。
これからもりあダンをよろしくお願いいたします!
「おおっと、後半戦第一、こう来たか」
「……また暑い所」
次の階への好奇心と若干の緊張感を抑えて入り込んだ次の階層。
見渡す限りの砂、砂、砂……遠くにぽつりぽつりと何か見えるのは恐らく敵ではなくサボテンか何かだろう。
つまりここはまごう事なき砂漠である。
感心した様子の秋彦と違って茜はげんなりしている。さっきようやく苦手な熱い階層を突破したと言うのに今度は熱いと言うより暑い階層に来てしまったのだ。ご愁傷様である。
「しかしやっぱこれあると快適だな、妖精の耐熱コート」
「本当だね。炎的な熱しか効かないと思っていたけど、普通に太陽光由来の物も熱をカット出来るんだね」
「……確かに。言われてみると文句いう程でもない」
「暑さに関しては前の階がおかしかっただけ、ともいえるかもしれないわね」
「まああれがデフォだと活動できるのが親友だけになっちまうからな。俺だって長居はごめんな熱波だったし。んじゃ行くかー」
………………………………
ザクザクと砂を踏み締める音だけが響く。目的地を探し歩き回るほど早一時間と言った所。熱による暑さがなんてことなければどうにでもなるだろうと言う甘い考えは見事に打ち砕かれていた。
「ねぇ秋。本当にこっちであってるの?」
「分かんねー、直感フルに働かせてなんとなくこっち行くべきっていう方歩いているけど確証がねぇ……」
「それもそうだけど、敵との遭遇もちっともないのはなんで……?」
「……今まで何度も迷宮に入ったけど、こんな迷わせ方をしてくる迷宮は初めて」
体力的にも精神的にも話をしている余裕がなくなりつつある。
というのもこのダンジョン、今までのダンジョンと違って迷宮のように道がある感じではなく、どうやら広い砂漠のどこかにある出口を探させるダンジョンだからだ。視界は360度砂しかない世界、しかももう1時間は歩いているはずなのに魔物との遭遇もいまだに0である。これは道さえ覚えていればそのうちゴールに辿り着ける今までのダンジョンとは違い、正解の場所を探し当てられない限り延々と彷徨い続ける羽目になる様だ。
「妖精の水筒無かったら普通にここで引き返してた所だな……」
「ええ、いくら耐熱コートで暑さを克服したと言っても普通に動く量が増えるせいで汗出るもの」
すでに数十回は空にした妖精の水筒のありがたみを感じる。
ポーション、又は酒以外の飲み物を一種類入れておき、水筒が空になった状態で蓋を閉めると自動で最後に補充した飲み物が補充される魔法の水筒。今更だが長期の探索にはこれ以上ない程有能だ。その性能にあらためて感謝する。耐熱コートの恩恵で暑さに対応できても長時間の運動には水分は必須だ。
「おまけに、一面砂地で歩きづらいしね。ここ、見た目以上にフロア自体の殺意が高い気がするよ」
「……上の階は直接的にフロアが殺しに来てたけど、ここのフロアは間接的にこっちのリソースを削りに来ている気がする……」
優太の言う通り、砂漠地帯の砂は崩れやすく、思わぬところで踏ん張りが利かない。普通の土やコンクリートといった固い地面を動くよりも、只動くだけで体力を削られる。
前階層ほどではないにしろの暑さにおぼつかない足元、更に出口の見えないと言う心理的な負担。はっきり言って今まで経験したどんな迷宮とも違う、しかし今までのどの迷宮よりも明確にステータス上では測れない部分に存在するリソースを削ろうと言う悪意を感じた。
上の階層では敵との戦闘で体力を削りに掛かっていたが、まさかダンジョンの地形自体が体力を削りにかかるとは正直予想外だった。
なんとか、状況を打開しないと、と思っていても今の秋彦に出来るのは自分がスキルとして習得した直感をフル活用して自分の進むべき方向を決める事だけだった。
今の秋彦達には何の指針もない。ならばせめてこれまでの歴戦の経験から鍛え上げられた秋彦の直感を信じて進むしかなかった。それすらなければ本当に闇雲にこの茫漠とした砂漠を根拠もなく歩くことになる。
通常なら馬鹿げているような方針ではあったが、誰も反対されなかった。
代替案もなかったこともあって受け入れられたが、一時間の歩き通しとなれば流石にそろそろ何かないと直感を持っている秋彦自身が本当にこの直感に頼っていいのかを疑問視しかねない状況でもある。
何かないかと周りを見回しながら動いていた秋彦だが、突如立ち止まる。
「秋? どうしたの?」
「えっと……よくわからねーが、この辺りになんかある気がする」
「それってカン? 考えた事じゃなくて?」
「あ、ああ。ぼんやりとなんかありそうな気がしてるから多分直感だと思う」
「……高レベルの直感持ちな秋彦の曖昧な言い分は信用できる。ぱっと見何もなさそうだけど」
「砂に埋もれてるとかないかな?!」
「ありえそうね、ちょっとこの辺掘り返してみましょ!」
「あ、なら僕が風おこすよ! この辺り砂だし、風で散らしちゃう方が手で掘るより簡単で確実だよ!」
心なしか全員気分が高揚しているようにも見える。まあこの延々と同じ景色を背景に歩くのはスポーツジムにおいてあるウォーキングマシンで歩いて移動しようとするような物だ。時間とカロリーは消費できても移動距離は1㎝もない。
そんな状態でやっとウォーキングマシンから降りれるのだ。わずかにでも前進できる手掛かりがあるかもしれないと思えば気分も高揚すると言う物だ。
「いっけー! ハイ・ブロウ!」
いつものように無詠唱で風を起こす魔法であるブロウの強化版であるハイ・ブロウを使う。その大風に堪らず砂は大きく吹き飛び、砂塵どころか砂嵐の如く多くの砂を伴って吹き荒れる。
そして、大きく抉れた砂の中に変化を待望する秋彦達にとっては直感よりも確実な予感が生まれる物があった。
「あった! 宝箱だ!」
「すごい! 本当にあった!!」
「お、すっげ、マジであったぞ、カンなのに」
「……大手柄」
宝箱である。しかも装飾が結構豪華だ。今までの経験上豪華な装飾の宝箱はその階層の攻略に不可欠な物が多い。今回の宝箱もその期待に応えてくれる中身である事が確信に近い形であった。
「よっし、開けてみるぞ……」
「あ、罠チェック、罠チェックは一応しておこう!」
「あ、そうよね、今まで私たちあんまり意識してなかったけど、関西方面では罠チェック無しの宝箱開封は自殺行為って聞くし!」
「……安全第一」
「おっとと、そ、それもそうだな。まさかとは思うが、最悪は想定しなきゃだしな」
慌てて手を引っ込める秋彦。そして慎重に罠が無いかの検査を行っていく。
人が油断しそうな時こそ罠を探らなければならない、というのは関西にいる探索者の中では常識らしい(糸魚川談)が、関東のダンジョンであっても中級ダンジョンの後半ともあれば万が一と言う事もないとも限らない。
ダンジョン内では用心はしてもし足りないと言う事は無いはずだ。
「よし、ちょっと待ってろよ、ちゃーんと調べつくしてやるからな……」
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