第三百五十六話 中級ダンジョン 第三階層ボス 打って変わって
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すっかり熱が消えた第三階層、灼熱層のフロア効果が一時的にとは言え解除されている事で茜もすっかり本調子だ。反対に先ほどまでの力が無くなったのは優太だが、フロア効果による強化だったこともあり、まあ仕方ないだろう。
休憩後の探索は非常に楽な物だった。
何せ先程までと比べて圧倒的に楽だからだ。折角揃えた全状態異常耐性を火傷のみ無効化され、火傷の状態異常を持っていると、耐性を無視して即死させてくる恐ろしい特殊攻撃をこの階層の魔物は持っていた。火傷一つが即死に繋がることもあり、火傷付与効果を持つ攻撃を全力で躱し続けていた。
だが火傷の状態異常耐性を無効化するフロア効果が無くなった以上もはや怖いものなど無い。元々敵の攻撃は当たりやすい攻撃ではある物の、攻撃力自体は大したことはない。火傷付与能力は持っていても、最早こちらの耐性で受け付けない。
はっきり言ってコソコソするまでもない敵の弱体化ぶりだ。今の秋彦達には何の障害にもなり得ない。
もう何度目かになる魔物の襲撃を返り討ちにして、ジュディが軽くため息をついた。
「これでもう10度目かしら。あんなに苦労したのが嘘みたいね」
「いや全くだ。火傷さえしなけりゃ普通の魔物と何も変わらんもんな。耐性さえ身に付けときゃこんなに楽とはな」
「……今後は階層自体に仕掛けられているギミックというのも無視出来ない事がよくわかった」
「何だかここに来てダンジョンの新しい要素を見た気がするよ……今まで潜って戦ってお宝見つけての繰り返しだったし」
「そう言われりゃ確かにそうだな。今までただ戦ってりゃ良かったのが、今後の状況次第じゃそう言うわけにもいかねーって事あるんかね?」
「……可能性は念頭に入れておいた方がいい。それはそうと見えた」
秋彦達が話をしていると茜が道の突き当たりを指差す。
先程は行き止まりだったが、今度の突き当たりには大きな扉がくっ付いていた。
「いよいよこの階層も終わりって訳かい」
「次の階層はどんなのだろうね? ちょっと楽しみ」
「ええ、新たなお宝に胸が膨らむわ!」
「……まずは目の前の障害から」
早くも次の階層に想いを馳せる3人を茜が諌める。その言葉に全員が相槌を打ち、改めて秋彦が扉を開く。
開けた扉から湿気を孕んだ涼しい風が吹き込んで来る。
扉の先にあったのは、階層の雰囲気と全く違う光景だ。鼻から息を吸えば香るのは緑の匂い。そして花のいい香りだ。先程までの地獄の様な灼熱っぷりが嘘のようだ。
「え、これ……」
「お花畑、ね」
「奥に大きな木があるけど……」
「……敵影は無い様に見える」
何とも不思議な気分だ。ここがボス部屋なのは明らかだ、だが周りが緑豊かで綺麗な場所であるところから少しホッと気を緩めてさえしてしまう。そんな空気だ。
「……秋彦、まだ敵が居ないうちにこの部屋のフロア効果を調べて。それ次第では考えることが増える」
「え? あ、ああ、そうだな。OK」
しかし茜はやはり冷静だ。油断無く、今まで自身が散々苦労させられてきたフロア効果を調べる様に秋彦に指示を出す。
秋彦も少し驚いたが慣れた物で部屋を調べる。そしてやはりあったフロア効果は次の様に出た。
<【大宮公園白鳥池のダンジョン第三階層(ボスの間)】>
<フロア効果:状態耐性緩和(状態異常「耐性」以上の耐性を「『【遅効】」へ変化させる)>
出てきた解析結果に4人共盛大に嫌な予感がしていた。
「だってよ。しかしこれは……」
「……状態異常遅効……」
「ああ、私なんかすごく覚えがあるわ……」
「一つ上の階層のボスでなんかあったね」
状態異常遅効とそれっぽく記されてはいるが、要はどんなに状態異常に耐性を持っていても、ここでは敵の攻撃を受けても即座に状態異常にはならない物が、例えて言うなら徐々に毒とか、以前ジュディがそうなった徐々に石化と言った風に、状態異常になる前に一定の猶予を与えられる代わりに、さっさと治療しないと状態異常を受けてしまう状態になる、と言った所だろう。
「今までの傾向からして、状態異常になったら耐性無視で即死させる技飛んでくるわよねこれ……」
ジュディが重苦しい声を出す。
思わず思い出してしまったのだ。一つ上の階層のボスで相手の即死の条件に引っ掛かりかかったあの時を。
あの実力なんて関係無く、状態異常を持ってしまえば即死といういきなり死の淵に立たされた様なあの感覚は、足元が急に崩れて落ちて行く様な恐ろしい物だった。思い至ってしまい、知らないうちに冷や汗が出てきてしまう。
「なんかいよいよ殺しに来てる感出てきてるんだけど……」
「やべーぞ全員確認、それぞれ状態異常の治療のポーション何をどれだけ持ってる?」
全員改めて荷物を確認する。
いくら状態異常を無効化するアクセサリーを作れると言っても以前それが壊された事やフロア効果で一部であっても無効化された事を知っている秋彦達は当然の様に状態異常を治療するポーションの一式を大量に買い込んでいた。
ざっと各種状態異常治療ポーション一式が1人30セットと言った所だ。
正直この手のポーションは流通量もあまり無く、妖精デパートでも品薄が続く商品で手に入りにくいが命には変えられない。
以前の探索から半年も時間が経ったが、探索者としての本分を忘れない為にもちょくちょく探していたことが功を奏し、かなりの量を確保できていた。
「どうよ、これで行けると思うか?」
「そうね……一度徐々にの付く状態異常になった身からすると行ける気はするわ」
「うーん……本当か?」
「う、ちょっと、自信が無くなる様なこと言わないでよ……」
前衛的には真っ先に状態異常にかかることが予想されるため、少し及び腰になっている。
「いざとなったら僕も治療するからね。【アンチ・サイレンス・ポーション】はあるし」
「……最悪優の光魔法による治療を含めるなら少なくとも様子見出来る位の量ではあると思う」
「そうか……よし、じゃあ分かった。だったらまあちょっと腹括ろうか。今回も生きて帰るぞ!」
「「「おー!」」」
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