第三百五十五話 灼熱層 封印されし物
累計PV数746万突破いたしました!
これも皆さまからのご愛顧の賜物です。
これからもりあダンをよろしくお願いいたします!
その後、灼熱層を探索する事一時間少々。
流石に探索者と言えど、この熱さの中を一時間の移動はなかなか辛いものがある。耐熱コートが無ければもっと早くにギブアップ宣言していた所だ。
そしてもう何度目かの行き止まりを発見し、全員が肩を落とした。
「また行き止まりね……はぁ〜」
「僕は楽で良いけど、みんな大丈夫?」
「……そろそろ休憩を」
「そーだな、戦闘かなり楽になったとはいえこれじゃ持たねえよ……」
「じゃあ一旦戻って……あれ? 何だろうこれ?」
「どーした親友?」
優太が行き止まりの所に何か違和感を感じ取ったらしく行き止まりに向かっていく。秋彦達も後に続いた。茜も文句言わずに付いてきたのは、こう言う時の違和感というか直感じみたものは案外馬鹿にできない事を、今までの探索の経験で理解しているからだ。
行き止まりになっている場は完全に袋小路だ。秋彦の直感ではここに何かある様には感じられなかった。
「なんかある様には感じられねーけど、どうした?」
「うーんとね、なんか見たことがある様な柄が今見えた様な気がしたんだけど……」
「……見た事のある柄?」
「ど忘れしちゃった、なんて言ったかなアレ……」
キョロキョロと辺りを見回す優太につられて全員で周りを見回してみる。
正直どこを見てもあまり変わり映えがしない。この階層は石で出来た床も壁も熱を帯びて赤くなっており、割れ目の部分は強く熱せられて白く発光している。
最初こそ物珍しい光景だったがあ優太以外はすぐにうんざりする光景になったし、なによりこの石の割れ目部分の白く光っている所からは強力な熱波が出ているのでもはや腹立たしいまである。
優太はむしろ居心地がいいまであるのだが、こればかりは相性の問題だから仕方ない。
そう考えた所で優太は視線を床に落とした。やはり変わり映えしない溶岩の上の様な床だ。
が、床の特に熱くなって白く発光している部分に何やら見覚えのある物が見えた。
「あ? 『火炎』? ……え?」
「どうした? 何か見えたか?」
「い、いやこれ……あ!」
一見ただの床の亀裂に見えた物は、よく見てみると火炎という魔法文字の様に見えた。さらにそこからよく見てみると文字には続きがあり、文字が円形に一周していた。
そこまで見えた時、円形に書かれた魔法文字の内側に図形が見えてきた。三角形、四角形、色々な図形が重なってマークの様に見える。
それを見て優太が一瞬チラッと見たものの正体がわかった。
「これ、魔法陣だ!」
「え!? 魔法陣!! って何だったっけ?」
優太が盛大にずっこける。もはやお約束である。
「……結界とかを張ったり、魔法の威力を高めるために床に描いて作る陣。結界術では魔筆で刻んだ魔力で描く」
「魔法石を作る時に魔石に似た様なのを書き込むでしょ?」
「あ、ああ、そうだったな。で、それがどうかしたか?」
「えーっと……ちょっと待ってね、ええっと、この形の結界は……」
優太は自分のマジックバッグから結界術のレシピ本を取り出し、結界の効果を調べ出した。
「あ、それ今親友が読んでたんだ?」
「……私が別件で忙しかったから渡してた」
「分かった、これ、【封印結界】だ。何かが封じ込めてある」
本を見ながら眉間に皺を寄せていた優太がパッと顔を上げた。
「え、じゃあ触れるとまずいものかコレ?」
「ううん、この形の魔法陣だと魔物とかじゃないね。物が封じ込められてる」
「意味深だな……封印解けるか?」
「ちょっと待っててね、えっと……」
優太がそういうと右手を結界に向けてかざす。
「これが物なら……これか『ここに封じられし物よ、遣われず壊されず棄てられし物よ、今ここに拾われ世に再度現れよ!』」
岩の割れ目で出来た魔法陣が、優太の言葉に反応し更に激しく輝き始める!
「あつつつつつ! あっつい!!」
「熱い熱い痛い痛い!」
「あちゃちゃちゃちゃ! ってお前ら何俺を盾にしてんだよ!! てか本当アチい!」
封印を解いている本人は炎に親和性があるから平気だが、残りが大騒ぎである。そうして魔法陣の中心から、まるで水に沈んでいた物が浮かんでくるかのようにぬるりとゆっくり物が浮き上がってくる。
浮かんできたのは石像だ。
石柱に人の上半身だけがどっしりと乗っていて両腕の部分が無い。いわゆる胸像と呼ばれる物だ。そしてその胸像が完全に魔法陣の上に出た所で、突然周りの熱波が急に無くなった。
「あ、あれ? なんか急に熱い風が吹かなくなったぞ?」
「な、何で……?」
「……何でってどう考えてもその石像が原因」
「この石像ただの石像じゃないよね、ちょっと見てみてよ」
「お、おう」
急な環境の変化に戸惑いつつ、取り敢えず優太に言われるままに目の前の胸像にペネトレイトを含めたアナライズを掛ける。鑑定結果は驚きの代物だった
【封印の<火炎巨人>像】
《かつて世界を焼き尽くした巨人を模して作られた胸像。<封印される事で封印された周辺一帯を灼熱地獄へと変える。効果:封印結界にて封印で効果発動。結界効果範囲にフロア効果:灼熱層を付与>》
「ですってよ」
「ここのフロア効果である灼熱層はこれが生み出してたのね」
「……腹立たしい。でも良かった。この熱さから解放されて」
「というか、これどうしようか?」
「そうだなぁああ!!?」
どうしたものかと思って触れようとした秋彦の手は思い切り弾かれてしまった。どうやらぼ魔防壁が張られており、触れない様にしてあるらしい。
「痛ってぇ! ……ああ成程、ステージギミックみたいなもんだから一時的に解除は出来るけど外に持って行けない様にはしてるらしいな……おーいてて……」
「ひょっとしてこれ、私達がこのフロアを離れたら再封印されるのかしら……?」
「……壊せない?」
「うーん……いや無駄だと思うぜ、明らかにこれこの階層の肝になるギミックだ。壊せないし持ち出させないだろうさ。どうも徒労に終わる気がしてならねぇ」
「……分かった。でも幸いな事に灼熱層の効果が無くなったから私は快適に動けるし、火傷無効を無効にする効果も無くなったから無茶な動きをして攻撃を食らっても死ぬことは無くなった」
「あ、そういやそうだよ。じゃあ状態異常無効さえ付けてりゃもう安心だな」
「……まだ余熱はあるけど耐熱コートのお陰で熱くないくらいにはなってる。脱出しなくていいからここで少し休憩して探索を続けられる」
「おう、じゃあここでちょっと休憩したらボス部屋捜索に戻るか」
皆様からのご愛顧、誠に痛み入ります
これからも評価、ブックマーク、感想、いいねなど、皆様の応援を糧に頑張って書いていきます。
次回の更新はまだ未定とさせていただきます。宜しくお願い致します。




