第三百五十一話 探索者巡回依頼
累計PV数723万突破いたしました!
これも皆さまからのご愛顧の賜物です。
これからもりあダンをよろしくお願いいたします!
「はい、出来ました。報告書です」
「はい、確かに受け取りました。本日はこちらで【探索者巡回】依頼達成となります。ご苦労様です!」
決められたコースを一周した後、秋彦はギルドへ向かい、報告書の作成を行い、提出した報告書をギルドの受付である女性、北見 円へ渡す。
北見は報告書に記載漏れがないかをチェックした後受け取った旨を告げる。
「しかし運がないというかなんというか……まさかこういうのを埋めてる現場に近いような時に見つけちゃうなんて……」
「正直苦しい言い訳でしたが、一応筋は通ってますからね。やっぱり探索者が相手だとあっちが襲い掛かってこないで誤魔化されたら見逃す以外の手段ないですよ」
「成程です、流石南雲さんですね! こういう時って襲われる可能性も高いのに、睨まれもせずにすごすごと引っ込むなんて!」
何故か北見の方が自慢気にうんうんと頷いている。
調子がいい事だ、と思いつつ言葉には出さない。ギルドの受付の大半は探索者を兼業しているだけあって綺麗な女性が多い。必然的に男の探索者からは受けがいい存在だ。変に刺激して周りから白い目で見られることもあるまい。
「そんで回収してきたあれはそっちで引き取ると言う事でいいんですよね?」
「はい、それに関しては、今ではすっかりお得意様のノアズアークカンパニー様が高値で買い取って下さいまして」
「へぇ?」
「不思議ですよね、ペネトレイトフィルムが入ったアナライズカメラでも「???(正体不明)」としか出て来ないような物、何に使うんでしょうね?」
「さ、さあ……?」
秋彦は内心冷や汗をかきながら何事もないかのように答える。
実際の所ライゾン達が今敵対している、少なくとも今の秋彦達にとっては謎の存在の回し者が何かをしているのだろう。
回収した謎の物体、黒い砂の様な見た目をしていたが、実際なんなのだろうと思って秋彦がアナライズとペネトレイトを使用して情報を見ようとしても、北見の言っていたように「???(正体不明)」としか出て来なかった。第一種、第二種問わず、危険迷宮収集物にも説明書きはアナライズとペネトレイトを使用すれば出て来るし、ペネトレイトも必要ない位だ。にも拘らずこれには何も出て来ない。
SNSやBBSなどでは、陰謀論が好きな人々が、世界を手中に収めんとする悪の組織や邪教の使途の仕業だのと、好き勝手なことをあれやこれやと並べては騒ぎ立てているらしい。
……まあライゾン達が秘密結社であることを考えれば当たっている所もあるともいえるのが何とも複雑な心境にはなるのだが。
「まあ使い道が無いなら無いなりに持っておきたいのかもしれませんしね。それに人様の事情に変に首突っ込むものでもありませんしね……」
「それは確かにそうかもしれませんね……でしたらそのように思っておきますね!」
とりあえず強引に話を終わらせる。確証等が乏しい今あんまり広げすぎても良くない話題だ。
「まあ、とにかくこれで探索者巡回依頼は終了ですね」
「はい、お疲れ様でした! 南雲さんがこの依頼を受けてくださるならこの辺で治安を悪くしようと言う輩はいなくなるでしょう! 今後も宜しくお願い致します!」
「ええ、じゃあまた」
頭を下げて秋彦を見送る北見。
探索者巡回依頼、今では社会問題になっている落伍者の起こす事件や正規の探索者であっても素行に多少問題のある、要は弱者に対してオラつきがちな探索者が、力による凶行を起こさないように考えられたものである。
といっても内容は非常にシンプル。ただギルドが決めた個所や地区を指示通りに巡回し、時折目につくゴミを拾うだけという半ばボランティアの様な内容だ。正直依頼という形では無くても本当にただのボランティアとしてやっている探索者もいるだろう。
だがこれを、ギルドが真っ当で実力もネームバリューもあると判断した探索者に対して、依頼をしてでもやらせることに意味がある。
何故なら落伍者や弱者に対してオラつきがちな探索者にとってギルドからも認められるほどの真っ当で実力もネームバリューもある探索者とは、ゲームで例えるならばラスボスや裏ボスが安全圏であるはずの街中をうろついているような物だからだ。
自分達が弱者相手にいい気になっている所をそんなラスボスや裏ボスみたいな連中に見咎められたら素直に引くしかない。この依頼を受けている間は他の探索者があくどい事を行っていたらそれを止めるのも依頼の内である以上、ギルドの後ろ盾がある状態だ。
素直に引いたとしてもギルドから睨まれるし、引かなければ実力行使の上、ギルドに報告されれば探索者としての資格をはく奪されるかもしれない。たとえ数の力で圧倒出来たとしても今後まともに探索者としての活動が出来なくなるのは確定だ。
一般人として稼ぎのいい仕事が二度と出来なくなるか、落伍者に転身し闇ギルドの一員になって犯罪に手を染めるかの二択になる。ハイリスクが過ぎると言う物である。
だが、一探索者にこれだけの物を持たせるとあっては流石に誰にでもやらせられる物ではない。この依頼をさせるからには相応の実績や能力、人柄をよく見られるのでこの依頼を任されると言うのはギルドがその探索者及びチームを認めたと言う事になる。ある意味名誉な依頼なのだ。
やる事は単純で、依頼の報酬もダンジョンに潜った時と比べても全く大した事は無い。その代わりにそこまで危険でもなく、いざとなればギルドも付いている。それが探索者巡回依頼なのである。
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「……って事があったんよ」
「へぇー、今そんな依頼あるんだねぇ」
「要は超強い探索者に縄張り主張させようって話なんだけど。まあボランティア活動ついでの小遣い稼ぎって感じかな」
翌日昼休み、秋彦は優太に昨日自分が行った依頼について話す。
「まあ大した事は無いし、これからも暇してたら適宜受けていこうと思うぜ」
「そっかー、そういうのだったら少しは安心なのかな。秋彦ならいざという時もサレンダーで大体相手は無力化できるもんね」
「そうそう。今俺らレベル的には38で、大体の奴らは無力化できるからな」
「……来る所まで来たもんだねぇ、僕ら」
「本当だよ」
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次回の更新は6/16(木)とさせていただきます。宜しくお願い致します。




