第三百五十話 ギルドからの新依頼
累計PV数721万突破いたしました!
これも皆さまからのご愛顧の賜物です。
これからもりあダンをよろしくお願いいたします!
「じゃあ、今日はここまで、号令!」
「起立、気を付け、礼」
五月も後半。桜の花はすっかり散り、緑を蓄えていく今日この頃。帰り支度を終えて、秋彦は優太に話しかける。
「おっす、親友お疲れ」
「お疲れ様―、今日はこの後どうするの?」
「今日は風紀委員の仕事無いからなぁ、どうすっかなー」
大きな伸びをしながら今日の予定を考える。ついこの間までだったら一も二もなく探索者としてダンジョンに走ったが、最近は女子陣が忙しそうにしていることもあってあまりダンジョンには潜れていない。
「今日もジュディさんと茜ちゃん来れないんだっけ?」
「そうなんだよなぁあの二人まだまだ忙しそうにしてるし」
「二人で行けるダンジョンにでも行く?」
「帰って店の手伝いしてあげなよ。親友のとこだって忙しいんだろ?」
「それはそうなんだけどさ」
優太はダンジョンに誘ってはくれるが、秋彦は優太も実家の中華料理店の赤龍が繁盛していて、バイトを新たに雇い入れたと言うのに猫の手も借りたい忙しさである事はよく知っていた。
メンバー全員が揃う時ならその言葉に甘えたいが、そうでない時にまで優太を連れまわすのは少々気が引ける。
「いいよいいよ、今日は職人として作業するにはもったいない位いい天気してるし、俺一人でこなせるギルドの依頼でもやっておくから」
「え、大丈夫? 危険じゃない?」
「いやいや、危なくはないから問題はないって」
「というか、ギルドからの依頼で危なくない物って?」
「ああ、パトロールだな」
「……パトロール?」
………………………………
学業も終わり、のんびりと地元から少し遠くの土地にたどり着く。今日依頼があった地区だ。今日はスタート地点から初めてゴール地点まで、たっぷり2、3時間使って見て回るコースだ。
ゴミ袋とトングを持って、秋彦にしてはかなりゆっくりとしたペースで歩き始める。
普段のペースならば1時間で終わるであろうペースだ。そこをわざわざ2、3時間使って歩くと言うのは何度やっても不思議なものだ。
「こんにちはー、今日もいい天気ですねー」
「あ、どうもこんにちは。今日は風が気持ちいいわね」
「もう春も終わりですかねー、では」
「さようならー」
道行く人たちと時折このようにコミュニケーションを取りながら町を散歩していく。そして、時々道に落ちている空き缶やたばこの吸い殻を見つけてゴミ袋を拾っていく。
パッと見完全にボランティアである。地域の清掃活動そのものだ。
だが最近は秋彦だけでなく探索者にもこの仕事は回ってくる。回ってくる理由が出来たのである。
「こんにちはー!!」
「おお、元気だな。こんにちはー。学校帰り?」
「ううん、おともだちのおうちにあそびにいくの! ばいばい!」
「ばいばーい、いやー元気でいいこった。平和平和って、穏やかじゃねー気配が……」
友人宅に遊びに行く小学生と思われる子供とあいさつを交わした。ついこの間まで魔物が闊歩していた国とは思えない平和さである。
そう思いながらのんびり散歩しながら指定のコースを歩いていると、コース外ではあるが、不穏な気配を感じ取った。危険感知等の感知系のスキルが高いと見まわる範囲が広くなる。
「ああもうヤダヤダ、戦闘にならなきゃいいけど」
とにかくこういう時は見に行かなければいけない。不穏な気配を感じた現場に先ほどまでとは比べ物にならない速度で向かう。
………………………………
取り敢えず気配を消して急行したのは土手近く。茂みが成長し緑が深くなっている中に、探索者が三名と不穏な気配を感じる何か。置かれている物が発する気配の不穏さから、不法投棄よりも悪意のある物であることは間違いなさそうだ。
とはいえこの時点ではグレーだ。いきなり威圧的になるのはよくないので、逃げられない程近くに寄ってから消してた気配を露わにして声を掛ける。
「すみません、そこで何をしているのですか?」
「おあ!? な、なんだテメェ?!」
相手の方が威圧的に出てきた。だが、急に現れて話しかけられたであろう向こうからすれば仕方ないかもしれない。まだまだ落ち着いて話をしようとする。
「すみません、お話をお伺いしたいんですがよろしいですか?」
「って、うわ!! 南雲秋彦!?」
どうやら相手がこっちの正体に気付いたらしい。だがまぁそれならそれで都合がいいだろう。
秋彦は相手を怪しむように語気を強くする。
「あなた方こんな茂みに隠れて何をしているんです?」
「あ、あー、いや。ちょっと探し物を……」
冷や汗をかきながら目を合わせようともせずにしどろもどろに答える。嘘なのがバレバレだ。
「探し物ですか。ほうほう、一緒に探しますよ。私の感知スキルならすぐ見つかります」
「い、いえお構いなく、べ、別のところを探しますので! では!」
「ちょっと待った!」
逃げるように立ち去ろうとする探索者達三人を大声で呼び止める。雷が近くに落ちたかのように驚き身を竦める三人。
「皆さん探索者ですよね? 感知から察するにレベル15程度でしょうか。迷宮探索許可証出してもらえます?」
「え、いやいや違いますよ、違いますって。私たちは探索者じゃありませんって」
いよいよ怪しいので本題を切り出す。
探索者は迷宮探索許可証を常に携帯する事を義務付けられているし、提示を求められたら必ず出さなければならない物だ。迷宮探索許可証の不携帯は現行犯で捕まえられるレベルである。
試験に必ず出るし、知らなかったでは済まされない事だ。
だが目の前の探索者達は持っていないのか、よりによって秋彦相手に探索者では無いと言い始めた。
「嘘はよくありませんよ、私力量感知持ってますし、相手のレベルくらいわかるんですから。そんなにレベルが高いのに探索者じゃないなんてことないでしょう?」
「い、いえ、本当に私たちは探索者じゃないんですって! 確かにダンジョンが出来た最初期頃は細々やってましたけど、ギルドとか出来る前頃にやめたんですって!」
相手のレベルを見て強く出たがなおもしらを切られてしまった。パッと聞いたところだと無理のある言い分だが、そういう人がいる可能性が無い訳ではないので、こうはっきり言われては引き下がる他無い。
そして先ほど三人の中心に半分埋められていた謎の物体を地面から引き抜く。ビニール袋でくるまれているが、明らかに不穏な気配を漂わせている。
「そしてこれ何です? 明らかに不穏な気配を漂わせていますが?」
「い、いえ、それは私達の探し物ではないです……」
流石にここでこの怪しい物体と自分達との関係性は話さなかった。この三人が埋めたのは状況的には明白だが証拠がない。ならばこれについてはこれ以上追及出来ないだろう。
「そうですか、ではこちら不法投棄物としてこちらで預かりますね。貴方達の物ではないですし、いいですよね?」
「はい……」
「わかりました、お話ありがとうございました。探し物、見つかるといいですね?」
「……はい、そろそろ別の場所を探しに行きます……」
ビニール袋に包まれている謎の物体についても執着せずにあっさり諦めて帰ってしまった。これで謎の物体に固執して襲い掛かってきたら返り討ちでもよかったのだが。
とにかく、今回の地域貢献活動の様な依頼、悪い意味で成果が出る形となってしまった。とにかくゴール地点まで行ったらギルドに報告しなければ。
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次回の更新は6/13(月)とさせていただきます。宜しくお願い致します。




