第三百四十九話 現在の風紀委員
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入学式が終わり、約二週間。
矢のように過ぎ去る日々だが、秋彦達は学年が上がってから学校関連で忙しくなってしまった。この忙しさは地方都市奪還作戦が終わって暫くの間に経験した忙しさだった。
「……という訳で、学校内での武器の取り出しは禁止だ。見せびらかす目的でもな。マジックバッグの所持は禁止されていないし、中みてたらキリないから信用して深く追求しないように」
教壇に立つ秋彦の言葉を真剣にメモする新入生で風紀委員になった生徒。
今秋彦は風紀委員の新メンバー達に風紀委員の役割を講義している。風紀委員として秋彦は後半からあまり活動出来ていなかったが、去年から引き続き風紀委員に在籍している。
というのも、この学校に於いて風紀委員は探索者が悪さをした時の為の防波堤の役割も与えられてしまっているからだ。風紀を乱すものを取り締まるという点で、探索者の相手も仕事の内と投げられてしまった感があるが、一応間違っていない以上引きうけざるを得ないところがあった。
そしてそうなった以上秋彦が風紀委員から抜けることは許されなかった。風紀委員の仕事はしなくてもいいし、何だったら名前だけでも良いからと現風紀委員長が頭下げてきたあたり必死さが伺えるという物である。
とはいえその言葉に甘えて仕事を放棄する訳にも行かず、結局仕事量は減らして貰いつつも在籍している。
「あの、もしも探索者の先輩方が悪い事をしていたら、やっぱり止めるんですよね? 僕はまだ探索者ではないですけど」
「ああ、それは基本的には見て見ぬ振りして」
「え、良いんですか?!」
風紀委員となった以上、やはり戦う事も必要なのかと考えて、まだ探索者としてダンジョンに入ったことがない新入生が不安そうに尋ねるが、秋彦はあっさりと見なかったことにしろという。
聞いた本人もこの回答には驚いたようだ。
「うん、いい。むしろ下手に止めようとして君らが怪我した時が大問題に発展するから」
「先輩、それはどういう事でしょうか?」
「いいかい、探索者同士の喧嘩なんてこのご時世スキャンダルもいいところだよ、そんなことが起こったら、学校だけで済む訳ない。たとえ俺らがどんだけ上手く隠そうとも見つける奴らはいるさ。増してまだ探索者でない人に暴力を振るったなんて事になったらえらい事になる」
そして秋彦は理由を話す。と言ってもなんということはない。ただの体面から来る話である。
地方都市奪還作戦後、地上に魔物がいなくなった日本では高校生探索者という者の存在に対して、存在の是非を問う者が増えたのは周知の事だ。そしてそしてその手の連中は本当は探索者の存在の意義と、その存在の少数さを理解している者達だ。そしてその上で承認欲求と愉快犯的な心情から度々話題に出し、放火魔の様に騒ぎを大きくする。
そんな中で高校生探索者同士の喧嘩。しかも秋彦達のいる学校でそれが起こったとあっては喜んで喧嘩騒ぎを取り上げ大事にしようとするだろう。
そう言った類の下衆で下世話な事をしようという輩はいつになっても消えることはないらしい。
「だから喧嘩になりそうな場合は俺か一部の風紀委員が向かうことになってる」
「え、でも探索者同士の喧嘩が駄目なら秋彦さん達が行っても駄目……というか秋彦さん達が出ることの方が駄目なんじゃ?」
「いや、一部風紀委員にはこれ持たせてるからね」
秋彦はスッとポケットから魔法石を取り出す。
「それは、魔法石ですか?」
「そう、サレンダーの魔法を刻んでいる」
「サレンダー? 聞いたことのない魔法ですね……」
「まあ無属性魔法だから使い手が珍しい物ではあるかな。これは戦意を喪失させる事ができる魔法でな。これを使って基本的に戦う意志や敵対する感情を消してるんだよ」
新入生達がどよめく。
この学校における風紀を乱す者が現れても大事になりにくいのはこの魔法石のおかげと言っても過言ではない。実際に血の気が多い学生もそれなりにいたが、この魔法石を風紀委員が使う様になってからは喧嘩などの騒ぎに発展することは無くなった。
「相手の敵対の意志を消すってのがミソでな。別に恐怖による屈服っていう訳じゃなく、なんか白けたり、まあいうこと聞いてやろうっていう感じになるんだよ」
「じゃあそれさえあれば問題になる事なく先輩達にも注意できるんですね」
「まあ相手よりレベルが上である必要があるからこれを持たせているのは風紀委員でも上位のレベル、実力があるやつだけだけどね」
「あ、流石に万能ってわけではないんですね」
「そらそうだ、と言うか万能って訳でもなければ誰彼構わず持たせて良いものでも無いからね。風紀委員になったからといって全員に渡してもいないし」
少し残念そうにする新入生達。
確かに戦闘力さえあれば相手を言いなりにできると言っても過言では無い魔法だ。使ってみたい、欲しいと思うのは当然だろう。
勿論、だから渡す相手は厳選しているのだが。
「さて、これで大体風紀委員として何をすべきは大体説明できたかな。君らもしばらくしたら一緒にやるから今日のことはちゃんと覚えておいてくれ。じゃ、今日はこの辺で終わりにするよ」
「はい、お疲れ様でした!」
少し強引に話を切って風紀委員の活動に割り当てられた教室を出る。
まだまだ教える事、やらなきゃいけないことは多いが、新しく後輩が入って来た事で、久々に先輩と呼ばれる高揚感は良いモチベーションになりそうだ。
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