第三百四十七話 機械工業大躍進
累計PV数716万突破、ユニークPV数112万突破いたしました!
これも皆さまからのご愛顧の賜物です。
これからもりあダンをよろしくお願いいたします!
秋彦が職人として確実に進歩し続ける中、打って変わって大躍進した所がある。ジュディが支社長を務めるマクベスコーポレーションの日本支社だ。
彼女は学業と探索者業の兼ね合いもあって、あまり会社の方にはいられていない。その分部下にして副支社長であるトーマス氏が会社の現場を支えている。
今日、ジュディは珍しくその成果を見に来ている。
ジュディが今いる場所はマクベスコーポレーションが新しく建造した探索者用装備の製造工場だ。この工場で製造される探索者用装備の新ブランド【セイブ・ザ・ライフ】シリーズの製造を視察しに来ているのだ。
『設備としては最新だけど、工程としてはそれほど目新しいものはなかったわね』
『それはそうですよ、使用している素材、製造に使用している機械が特殊であれど製造自体は機械産業がおおよそ完成させた工程を行っているに過ぎません』
ジュディはダンジョンが現れる前から、さまざまな製造工場に父と一緒に出入りしている事もあってこの手の工場における製造過程は割と見慣れている。
セイブ・ザ・ライフシリーズは下着を始めとした布系の素材を使用した装備であり、当然探索者向けではない布製品も当然製造過程から工場で何度も見ている。
その上で一通り製造過程を見終わって、会議室に戻ったジュディは特殊な工程は見受けられなかったと感想を述べ、トーマスもそれを否定しなかった。
『ですが、出来る物は桁違いですよ。違いなんて機械素材を使用して、レシピ本にある量産品の製造機で行っているだけなのにです』
『まあそうでなければ困るわ。結局引き取って来た機械素材、あれだけあったのにとうとう歯車一個でさえもギルドに渡せなかったんですもの。機械素材に関してはこれからもほぼ独占する事になりそうだし、ギルドからは恨めしそうな顔で見られちゃったわよ』
『耐えて頂かないと今度はここの従業員から恨めしそうな顔で見られますよ、さあ、次はその甲斐あって量産できるようになった製品を見てください』
そう言って会議室に並べられた大量の服の数々に目を向けさせる。
ジュディは別にアナライズを使えるわけではないが、服の良し悪しは持ち前のセンスで、そして魔法力の籠り具合は探索者として鍛えたスキルで把握する。
『こっちが現在普通の工場で製造されているもので、こっちが今私たちがいる工場で製造されている物、と取っていいのよね?』
『流石ですね、よくぞお見抜きになられました。探索者としての実力が遺憾なく発揮されているようで、私の現場を支え続ける苦労の甲斐もあるという物です』
『探索者じゃ無いあなたには分からないかも知れないけど、大安売りのセール品と一級ブランド品並に違うわ。探索者で間違える者がいたら入門ダンジョンクリアしたて並のレベルでしょうね』
『おや、それ程ですか。一応製造法も使用素材も変わらない物なのですけどね。正直信じられません。ただ製造した機械が機械素材によって作り上げられた物であるというだけでそれほどに変わるのですね』
てっきり見比べさせるために同じ装備を同じ製造法で作った物を用意したのかと思ったが、揶揄うためだったらしい。
だが実際量産的に製造された装備は今までの物と比べれば驚くべき差がある。
例えば肌着類。今までは量産品であれば大体、肉体力+100、魔法力+100の上がり幅で値段が10万もしていた。地方都市奪還作戦前の相場ではあったので、今なら下着なら同じ上がり幅でも一万くらいには下がっているだろう。
だがジュディの工場で出来た肌着は違う。なんと肉体力+500、魔法力+500の上がり幅を見せたのだ。最近制定された法では戦闘力500以上の装備をしてのダンジョン外を移動する行為は禁止されているので、これだけを付けているだけでオーバーしてしまうのは確実だ。この水準は一昔前の職人によるオーダーメイドレベルの仕上がりである。
『良くこれほどのものが作れたわね……』
『機械素材、恐るべしと言ったところですね。セイブ・ザ・ライフシリーズは全て布装備ですが、肌着、下着、上着の一式揃えれば戦闘力が一万超えます。上着から更に鎧を付けることを考えれば戦闘力は更に上がりますね。これはオーダーメイドの布装備に相当する戦闘力の増強にも相当します』
落ち着き払って言うトーマスだが、ジュディは驚きを通り越していた。
この戦闘力の上昇幅はジュディ達が現在愛用している布装備の水準と大差ない。
ジュディ達の様な、探索者の界隈における実力中トップを走る人々が金を稼ぎ、実力をつけ、時間を掛けてやっと到達した領域だ。少なくとも御霊具ではない布装備に関してはどこも似たり寄ったりだろう。
だが、そんな苦労をせずとも、そんじょそこらの駆け出し探索者達でも自分達が手に入れているレベルの物、たとえ布装備だけだったとしても手を出せるレベルの物が出来たと言う事だ。
今までの常識から冷静に考えれば驚く程の戦闘力の上昇と言えるだろう。
『驚くべき事ね……今後は布装備だけじゃなく鉱物などの装備にも手をつけるのでしょう? これは確実に革命よ。これが鉱物素材となったら一体どうなるのかしらね?』
『我々としては是非、それが生み出す利益を見てみたい物です。次期社長、お願いしますよ?』
『……いいわ。私が、私達が時代を切り拓くの。機械素材を集めに集めて、工業化を加速させるわよ』
『ええ、現場の指揮はお任せ下さい。値段設定も済み販路等々も確保しております。当然本国の方にも輸出していきますよ。この時代に本国が乗り遅れないように』
恭しげに礼をするトーマス。
この後登場するマクベスコーポレーションの新作布装備は、探索者に大きく普及する事になる。
量産品の装備が大幅に戦闘力を向上させた一大事件として、業界に新しい風とも言える変革となったのである。
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