第三百四十五話 探索者神社
累計PV数708万突破いたしました!
これも皆さまからのご愛顧の賜物です。
これからもりあダンをよろしくお願いいたします!
「明けましておめでとうございます、今年も宜しくお願い致します!」
秋彦が大声で新年の挨拶をすると、この場に集まった面々が新年の挨拶を返した。言うまでもなくレインボーウィザーズとモンスターキラーズの面々である。今回はビューティフルドリーマーはいない。
新年の初詣の様子を生放送する番組に出ているらしい。
「つーわけでお参り行きましょうかお参り」
「ビューティフルドリーマーの人達からここの神社来いって言われてるんだっけ?」
「……新年早々人使いの荒い話」
「ま、まあまあ……」
不満げな茜を優太が宥める。
ビューティフルドリーマーが今ここにいないのはビューティフルドリーマー抜きでお参りに行こうと言う話ではない。単純にあちらは現地で待ち構えているだけと言う話である。どうやら偶然装ってサプライズ的にテレビに出そうと言う魂胆らしい。ギャラが発生しない様にしたいのか、随分とせこい話である。
「それ、俺らが行っても大丈夫なの?」
「むしろ偶然装うんならお前らがいねー方が不自然だよ」
「そうそう、世間一般としてはお互い有名な探索者だけど、僕らにとってはクラスメイトだからね」
「はははー、なんか今となってはアイドルの追っかけしてた俺の追っかけが出来てるんだから人生分からないもんだよ」
エミーも恐る恐る聞いてきたが、本人にとっても今更感があるらしくあっさり納得した。エミーも良くも悪くも有名人扱いになれている証拠である。
「にしても今更だけど俺ら相当に物々しいな」
「袴なんて、まさか今着る事になるなんてね」
「うーん、ちょっと苦しい」
不満げに真崎と石崎は自分の今着ている服をひらひらとはためかせる。
この場に集まったメンバー一同全員袴である。男は馬乗袴、女は振袖である。女子も男子も探索者活動のせいかこのチームメンバー揃いも揃って美女美男子揃いである。はっきり言って今異様に目立っている。
「とりあえず行くか。あんまり待たせるもんじゃないし。準備できたら行くぞー」
かなりグダグダしているがとりあえずテレビカメラの前で必死に尺を稼いでいるであろう桃子の事を考えさっさと行くことにする。女子陣はともかくとして男子一同は窮屈なのでとっとと袴から着替えたいし。
………………………………
「ホイ到着っと」
「うわぁ……本当にこんな所にあったんだ!」
いつも通り瞬時の移動ではあったが、着いた場所にあったものを見て一同感嘆の声を上げる。
何せ非常に立派な神社だ。仮にも東京のど真ん中だと言うのにこの立派さには驚きを隠せない。ここは日本の探索者達の総本山と言っても過言ではない、東京新宿の関東ギルドも近くにある場所だ。
神社や公園が意外と多くある新宿の中でも以前の新宿には無かった新しい神社である。
「ん? あー! あ、あんた、レインボーウィザーズの!」
「え、ええそうですよ」
そして急に大声で声を掛けられる。来た来たと思いつつとりあえず応対する。
「レインボーウィザーズだ! モンスターキラーズもいる!」
「うおお!! すげぇ!! 新年早々【探索神社】にこの両チームが揃ってお参りかよ!!」
「す、すみません! あ、握手してください! サインも!!」
そしてそうやって騒ぐのが一人いれば、あっという間に周りの人に取り囲まれる。
仲町商店街では割と配慮してくれてはいるけど、地元から出て街を歩いていればこの取り囲まれ方はある意味いつも通りだ。今日は袴を着ているからあまり派手に押し退けたくはない。さてどうしたものか、そう思ったのも束の間、非常に見覚えのある一団を見て胸を撫で下ろす。
「あー! 秋彦じゃん! お参りー?」
「おお、桜じゃん、皆も。なんだお前ら参拝客の生中継ってここでやってたのかよ」
非常に白々しいやり取りがされたが、とりあえず挨拶は出来た。そしてテレビカメラが回っていると言うことで秋彦達のファン達もあまり強く出れずに大人しく引いてくれた。おそらく仕込みだと思われたことだろうがまあ気にしてはいけない。
「やっぱり探索者たるものこの探索神社でお参りするしかないっしょ! 一緒にお参りしよう?」
「はいよー」
多少棒読み感が拭えない秋彦だが、桃子の方が迫真の演技をしている。とりあえずこれはあくまで偶然という体を装いたいようだ。
ADがカンペで人を避けさせるのでお参りしちゃって下さい! とカメラの後ろで指示を出している。これには流石にやれやれである。
とは言えお参りに来たのも確かなのでとりあえずさっさと進むことにする。
参拝客達がレインボーウィザーズとモンスターキラーズ、ビューティフルドリーマーの今の関東を代表する3チームの登場に列が真っ二つに割れた。そして代わりにスマホを取り出しこちらに向け出す。
「モーセか何かかよ……」
「関東どころか国を代表しそうな探索者がこの探索神社でお参りなんて言ったらそりゃねぇしょうがないよ」
探索神社。建設は地方都市奪還作戦が終わってすぐの新しい神社だ。本当はもっと長い正式名称があるのだが、探索者達は皆そう呼んでいる。
迷宮時代のダンジョンからの生還とダンジョンに挑むものに対しての成功が得られるという御利益があるともっぱら有名になっている。
新しい概念故に祀る神もいない神社で、根拠のない話。とも思うかも知れないが実際はそうではない。
ここには何と地方都市奪還作戦で討伐したグレイトアンデッドドラゴンの真っ二つにして破壊されたコアの片方が祀られているのだ。
あのグレイトアンデッドドラゴンを、ダンジョンが生まれ世界が変わった節目の日本における最大の試練を与えるために降臨した神として、魂を鎮めるだけでなく祀って神にしてしまおうというと言うことらしい。
正直昔で言う八岐大蛇を祀ってる様な物なので正直首を傾げる話ではあるのだが。まあ確かに神話の時代に探索者やダンジョンなんてなかっただろうし、祀れそうなものと言えばこれくらいしかなさそうなのも事実ではあるのだが。
それに強力な魔法力が篭る代物が祀られているだけあって、御利益は相当な物らしい。理屈はよく分からないが参拝の作法、手水による手の清めに始まり、賽銭、二礼二拍手一礼をきちんとこなすと祈った願いに対して効率良く働くのだとか。
「グレイトアンデッドドラゴンのコアと神社として作られた施設があるだけで神聖な空気を生み出す環境結界の様になってんのかね?」
「まあ、そこまでは分かってないけど、ご利益目当てに今日という日に参拝しようって人は多いね。さ、他の人も待ってるしお参りしちゃおう!」
そう言えばさっきから他の客が待ちっぱなしだった。ささっと手水を済ませ、割れた列に頭を下げながら進んでお参りを行う。
その後はこれもまた神社における魔道具であるお守りを一式買う事にした。神社にとってはこちらも無視できない収入だがこちらもかなり人気である。最近では学業成就が人気なのだとか。
騒がしい形になったが、とりあえず一年最初のノルマ達成である。
新年早々巻き込まれた感はあるが、なんとか無事にお参りを済ませることができた。そのうち来ようと思っていたところではあったので、いい機会になった。と思うことにした面々であった。
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次回の更新は5/26(木)とさせていただきます。宜しくお願い致します。




