第三百三十七話 クリスマスパーティー チームメイト編
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これも皆さまからのご愛顧の賜物です。
これからもりあダンをよろしくお願いいたします!
「えっと、本日は皆さんお集まり頂きありがとうございます。招待から日も浅いというのにこれほどの数の方々に来て頂けた事をとても嬉しく思います」
豪華な料理を前に招待した人々の到着に謝辞を述べる秋彦。
時間は19時。夕方も過ぎ、夜の始まりと言える時間。何とか料理の用意も間に合い招待した人々を迎えての挨拶である。
まあ肩肘を張らない様なクリスマスパーティーではあるので、あいさつも堅苦しくなり過ぎない程度の簡単な感じにはしている。
「さて、あまり堅苦しい話をするつもりはありません。ですが、私たちが今ここにこうして集まってるのは間違いなくあの迷宮がきっかけでしょう。現れた当初は我々の生活を脅かし、絶望を与えた存在でした。多くの人命を奪った恐るべき、憎むべき物でした。でも、その体験から私達は今こうして繋がることが出来ています。今年は激動の一年と言える年でしたが、来年は是非平穏な年になる事を祈りたいですね。今日は今年の嫌な事を忘れて存分に飲んで食べて、遊んでいって下さい、それではこのまま乾杯致しましょう、乾杯!」
乾杯の合図と共にどっと話し声で場が一気に賑やかになる。
緊張してしまったせいか、割と言いたいことだけ言ってさっさと乾杯してしまった感じもするが、とりあえず歓談のターンになったのでひとまず大丈夫だろう。
「お疲れ様〜、緊張してた?」
「したした。ダンジョンで魔物と相対する時より緊張した」
真っ先に声をかけてくるのはやはり優太だ。ジュースの入ったコップをチンっと打ち、ぐいっと飲む。冷えたコーラはいつ飲んでも美味いが、緊張した後に飲むと炭酸が緊張を喉から洗い流す様だ。
「ダンジョンでとんでもない怪物相手でも槍一本で単身勇敢に立ち向かう秋が、この人数相手に緊張すんの〜?」
後ろから声を掛けてきたのは桃子だ。今は自分の探索者チームであり、アイドルグループのビューティフルドリーマーを率いているが、ダンジョンが出来て間もない頃は五人体制でレインボーウィザーズの一員でもあった。
「おっと桃。いやそうは言うけどな……あれ……」
言い淀んだ秋彦はチラッと目線だけを向ける。
『いやー、まさか僕が今をときめく英雄である秋彦君の家にお邪魔出来るとはねぇ。桃ちゃんも凄い人をリーダーにしてた時があったもんだ。誇らしいよ』
『あっはは! 本当にね。それにしても探索者さんが出す料理だけあって本当に美味しいわぁ』
『探索者の強さの秘訣を聞くと、食べてるものが違うって言う話はよく聞くけど、こんなに変わってくる物なんだね』
視線の先にいたのは桃子の両親だ。フランスを拠点とする超一流デザイナーと、女優の夫婦だ。
「何、うちのパパとママに緊張してたの?」
「いいや、だってパパさんはともかくママさんがすげぇ有名人じゃねーかよ。しかもそれだけじゃねーし」
呆れた様な声で緊張の原因を聞く桃子に否定的な声を出す秋彦。
『ええ、そりゃもうそうですよ。迷宮から持って帰ってくる食材はどれもこれも凄い旨さですからね』
『うちの子もよく持ってきてくれてはいますが、お恥ずかしいお話ですがしばしば取り合いになってしまって……』
『食べるだけで強くなるどころか味が純粋に美味しいのはとても嬉しい事ですね』
『お腹が出ずに筋肉に即変わることは、我々としては嬉しい所ですが、ついお腹がパンパンになるまで食べてしまうのですよね』
桃子の両親が歓談している相手。それこそが秋彦緊張の原因だ。
秋彦の両親に茜の両親、ジュディの両親も加わって話をしていた。会話の中身自体は割と他愛ない内容ではある物の、言語が全員英語なだけあって、英語が聞き取れない人達からすれば高貴な話し合いでもしている様な雰囲気だ。
「何だよあの史上最強の保護者会みてーな雰囲気。てかクリスさんとアンジュさんの気合いの入り様がやばくてつい緊張した」
「あー、成る程ね。確かに服とか装飾品とか絶対いいところのブランドもんだよ。下品な金の掛け方してないからこの場にも溶け込んでる様に見えるけど」
「そうなんだ、僕にはよく分からないけど」
「なんかここん所鑑定鑑定で魔法使いまくってるせいなのか魔法使わんでも物の良し悪しが見抜ける様になってきてんだよなぁ……正直あの気合いの入れようは目に毒だわ。何でこんなささやかなクリスマスパーティーなんぞにあんな気合いの入れ方してんだろうな?」
「さ、さあ……?」
頭を掻く秋彦。どうやらジュディに聞いた話ではこの集まりにかなり気合を入れているようだということは聞いていたが、どうも本人はそんなレベルではないらしい。
そんな話をしていたら新たに二人、話に加わってきた。
「決まってるじゃない。日本の探索者と言えばの代表格級の有名人が主催者のホームパーティーよ。しかも参加者もその有名人が、自分の身内と公言する探索者チームばかりじゃない」
「……ここで顔と名前を売っておいて繋がりが出来れば、日本の進んだ探索者達の使う道具や迷宮収集物を売ってもらえるチャンスが来る。ここで顔を売っておきたい企業の社長は多い」
「あ、ジュディに茜」
「久しぶりね桃子、楽しんでる?」
「……やっほ」
秋彦の疑問に答えたのはジュディと茜だ。
「久しぶりじゃん! どこいたの?」
「来てくれた人たちと話してたのよ」
「……桃子も芸能関係ばかりじゃなく探索者としても有名。そっちにもアンテナを伸ばしていた方がいい。モンスターキラーズも実力としては上位」
「逆にこのパーティーの参加者、国内外問わなければ無名の人がいないわよ」
「え、俺と親友の両親は?」
「二人の親ってだけで無名が無名じゃなくなってるわよそんなの」
「そ、そんなもんかなぁ……」
確かに言われてみれば、モンスターキラーズも中級ダンジョン挑戦者だ。現在存在する探索者の大半を占める入門級と初級ダンジョンに潜っている連中とは次元の違う能力の持ち主だ。中級ダンジョンに潜って生きて帰って来れるのはそれだけで箔になるし、注目もされる。
桃子達のチームも今でこそ芸能関係で有名ではある物の、その気になれば探索者としてもやっていけることからも有名かつ人気だ。迷宮探索関連の雑誌でも表紙をよく飾っていることからもそれが窺える。
コネクションを形成しにかかるのは当然と言えることだったのかもしれない。
「それはそうと、秋彦もパーティーの主催者なんだからちゃんとお客様とお話ししてきなさいよ」
「え、俺?」
「当然でしょ。大体ビューティフルドリーマーとモンスターキラーズ、後は私たちの両親しかいないんだからほぼいつものメンバーじゃない。気後れしてないで行ってくるの」
「は、はーい……じゃあまた後で」
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次回の更新は4/28(木)とさせていただきます。宜しくお願い致します。




