第三百三十四話 話を聞きたい探索者達
累計PV数686万突破、ユニークPV数108万突破いたしました!
これも皆さまからのご愛顧の賜物です。
これからもりあダンをよろしくお願いいたします!
やっとの事で三階層分の宝箱の検分が終わり、すっかり疲れた顔でギルドマスターの部屋を出る。
「や、やっと終わった……」
「今日は長かったけど、いい収穫があったわ、早速エンジニア達に素材とレシピ本を見せないと!」
「僕は早く帰って新しいお肉の試食したいなー」
「……今日は流石にくたびれた。早く帰ってお風呂に入って寝たい」
「全くだな。さっさと帰って……」
探索者であってもくたびれる物はくたびれる。今日一日はいつもよりもだいぶ長く感じた。四人は早くも1日終了モードである。
早く帰って寝たい。そんな空気が流れていた。
だがそれは、脆くも崩れ去る事になる。秋彦がホールに戻ってきた瞬間に。
「来た! 戻ってきたぞ!」
「うおおおおおお!!! お帰りなさいレインボーウィザーズの皆さん!」
「皆さん! 中級ダンジョンにはどんなお宝がありましたか!?」」
「敵は!? 罠は!? どうなってました?!」
「持って帰ってきたお宝の何を売って頂けるんでしょうか!?」
「何でもいいのでお話を聞かせてください!!」
大混乱である。デモ活動か大安売りのセールの会場かの様な人の集まり様である。流石に探索者として肉体力も高い秋彦達は押しかけてきた人々に押されてもびくともしない。
だがたっぷり事務仕事のようにアイテムの仕分け作業をしていた秋彦達にとっては溜まった疲労のおかわりがきた様なものであり、先程前のゆったりとした空気は粉々に吹き飛んでいた。
今日はまだまだ帰れそうにない。
全員がため息と共に諦め、覚悟を決める。
………………………………
「で、何とか一発やり込めてダンジョンから出てきたって事ですね」
「ほうほう、成程……もはや状態異常になる様では中級に挑む資格はないとでも言う感じですね……」
秋彦達はそれぞれに分かれて今までダンジョンであったことを話していく。話を聞きたがる人たちがあまりにも多かったからだ。聞こえなかったと言われて話直しをさせられるのも嫌だったので、とりあえず宝箱から手に入れた物以外の情報は開示してしまおうと言う事になった。どのみちこれらの情報は遅かれ早かれ伝わる内容だ。
自分達が言わなければわからない、自分達が今何を持っているかの情報さえ知られなければまあいいだろうと言う結論に行き着いたのだ。あまり持ってるものを詳細に話すと、取引を持ちかけてくるならまだしも空き巣を狙うものが出ると困るからだ。今あの家は探索者が本気で盗みに入ってきたら何の対策もされていないも同然だ。普通に危ない。
盗み対策として近い内ににライゾン達に盗まれては困る道具などを預かって貰う必要も出てくるかもしれないだろう。
なお、話を聞いている側の反応としては、かなりの数が熱心にメモを取っており、残りは割とうっとりと、あるいは目を輝かせながら話を聞いていた。
前者は中級に挑もうと言う人々が情報収集をしているのか、あるいはSNSでの話の種でも得ようとしているのかは分からないがかなり熱心にペンを動かしていた。
後者は芸能人か何かの武勇伝を聞いている様な感じなのだろうか、秋彦自身は正直自分の武勇伝を他人に聞かせるなんてかなり痛々しい行為だとも思っているが、秋彦も今となっては有名人だ。バラエティ番組で芸能人が自分のエピソードを語るもので有名、人気な番組は数多くあるのだから、それと似た様なものなのかもしれない。
「とまあ今回はこんな感じかな。もういいか?」
「あ、あの!」
一通り話をして締めに入ろうとした秋彦に秋彦の聴衆の中でも一際目を引く可愛らしい少女が手を挙げた。
「ん? まだ何か聞きたいことがあるのか?」
「こ、今回の探索で得た宝箱の中身や何をギルドに売ったかのお話を聞きたいのですが……」
またえらくど直球に聞きづらい事を聞いてくる子だ。怪訝に思いながらも先程チームで話し合った自分達の持ち物についての結論を話す。
「あー、悪いがそれは俺らで相談したけど教えない事になってるんだ」
「な、なぜですか?!」
「俺らが何を持っているかとかをあまり多くの人に知られたくない。多くの人に知れ渡ることで、おかしな奴等に目をつけられたくないからね。最近特に物騒だし」
「そ、そんな……」
がっくりと肩を落とす少女、この世の終わりの様にがっかりしている。秋彦からしたら何をそんなにがっかりしているのかと言う話なのだが。
「大体君そんなこと聞いてどうするんだ? 何か持っている物で買いたい物でもあるのか?」
「いえ、単純な興味です!」
「ほう……そうか。でもそう言うのって聞かれてあんまり気分のいい話じゃないからやめたほうがいいぜ。最近空き巣とか起きてるみたいだし、用心に越したことはないからな」
「わ、わかりました……」
「よし、じゃあ話終わりね。はい、解散!」
えらく不満げではあった様だが、一旦納得はしてもらえたらしい。
時計を見ると、時間は既に夜の9時を回っていた事だし、一旦強引ではあるが話を切る事にした。これ以上縋ってこられても面倒だし。
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次回の更新は4/18(月)とさせていただきます。宜しくお願い致します。




