第三百三十ニ話 ダンジョンアイテム検分 レシピ本と魔物の卵
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これも皆さまからのご愛顧の賜物です。
これからもりあダンをよろしくお願いいたします!
「さあ、第二階層でのアイテム、まず最初はこれよ!」
と言ってジュディが広げた物は大量の本だ。そしてそれらの本は秋彦に馴染み深い魔法力を放っている。
「お、レシピ本じゃん! えーっと、何々? 【迷宮に産業革命を! 量産型魔道具作成説明書】か……タイムリーだな、モロジュディに必要なやつじゃんこれ」
「え、ちょ、ちょっと見せて!」
奪い取るような勢いで秋彦から機械系素材で作れる道具のレシピ本を受け取り読み耽り始めるジュディ。しばらく止まりそうにない。
「え、えーっと、他には……【魔法薬学入門書】だと」
場が少しどよめく。中身をざっと見てみると、どうやらポーション類の製作に使用出来るレシピ本の様だ。
「ああ、装備だけじゃなくていよいよ消耗品も作らせようって話?」
「だろうな。これ、製薬会社当たりが喜ぶんじゃないか? 今でさえポーションを材料に使った精力剤や栄養剤、エナジードリンクなんて普通にあるんだし」
「……だけどそれを一から作るとなったら話は全く変わってくる。薬の製造の過程は長い時間がかかる」
「そうですね、ポーションを混ぜた栄養剤とポーションでは話は全く変わって来ます。国がどう判断するかは未知です」
少し盛り上がりかけた所を冷静に茜と副ギルドマスターが諌める。
確かに大手製薬会社などがポーションを量産し、それを売りに出すことができる様になるとなったら探索者だけでなく一般人も大喜びだろう。
何せポーションは最早ダンジョンに入るものにとっては必需品、生命線とも言えるものだ。回復魔法が使えればポーションなんて必要ないだなんて大間違い。
もし回復魔法を使える光魔法使いの魔法力が切れたら怪我が治せず、骨折を引きずりながら逃げ帰れればまだマシで、大量の切り傷から失血死することもある。
状態異常の回復するポーションなんて更に必要不可欠の代物だ。今回で状態異常がある状態での戦闘とはそれ則ち死と同義であると言う事を思い知らされた上に、そう言う物だと言う認識がある前から状態異常はかかると著しくパフォーマンスが落ちる厄介な物と言う認識が常識である。
事実今回ジュディが状態異常解除のポーションを全種5個以上常備していたから良かった物の、そうでなければどうなっていたことか。
今では探索者だけでなく一般人でさえ、探索者から購入したポーションを一家に一瓶は備えている物だ。生傷の絶えない子供のいる家庭とかでは尚更需要がある。
そしてそんなに目覚ましい効果を持つポーションだが、もしもこれを一から製造、販売しようと思ったら、その実現には長い時間が必要になるだろう。
薬は効果があるならすぐに売れると言うわけではない。今まででさえ有効な成分の発見からそれらが錠剤などの薬となって世に現れるまでに治験や非臨床試験等様々な工程が必要になる。期間も10年以上掛かる。
そして本来薬とは、薬機法などの薬の取り扱いを定めた法律によって許可のある薬局以外では売ってはいけないし、薬剤師によって調剤、処方されなければならないとなっている。
尤も、ダンジョンで拾った場合や妖精商店で売られているポーション等は、迷宮探索収集物と言う扱いになっており、ダンジョンで手に入れた、妖精商店で買った物に関しては特にお咎めはなかった。
だがそれが人の手で作ることができるとなった時に、国がどの様に判断するかは未知数だ。
「そうか、早々景気の良い話にはならないか」
「残念ですね、ポーションは光魔法の使えないチームには必須の物。探索者人口の上昇とともに需要は膨れ上がるばかりのものです。製薬会社が確保できたなら値が落ち着き、多くの人の元に届けられるのですが」
「とにかくこれは非常にデリケートな問題となります。このレシピ本はギルドの会議で今後の処遇を決めますので、こちらをお預かりしてもよろしいでしょうか?」
「「「「お願いします」」」」
残念がるギルドマスターと買取役を後ろに淡々と副ギルドマスターは話を進めていく、ある意味プロフェッショナルだ。
そして流石のレインボーウィザーズも、これは流石に手に余ると判断して満場一致だった。
その後しばらく全員で手分けして内容の大雑把な把握と必要なものと不要なものの取捨選択を行い、秋彦が使える骨加工を始めとしたレシピ本と、優太が使う料理系のレシピ本、ジュディ待望の機械素材を使用できる機械系のレシピ本以外は売却することにした。
「いいね、俺がまだ知らない骨系のレシピ本なんかもあった。これは捗るぜ……」
「このレシピ本の何かを家の料理に使えるといいなぁ」
「とりあえず私これのためにダンジョン潜ってよかったと思えたわ」
「俺らとしてもこの量のレシピ本の大量入荷は助かるぜ、各地の探索手芸店からは毎日のようにレシピ本の入荷が無いか電話がくるからな」
「精一杯色をつけさせていただきました。良い取引でした」
まだ宝箱の中に物はあるが、既にやりきったような顔をしているギルドマスターと買取役の人。
とはいえ第二階層で出てきた物の中で目を引くのはレシピ本位で、残りは機械系をはじめとした各種魔法素材や装備類と言った物が多かった。
「2階層目の宝箱は次で最後ね。これ、まさかここで出てくるとは思わなかったわよ! はい!」
どうやらジュディが意図的に最後に回していたらしいとっておきのアイテム。
それは秋彦達がかつて一度見て、長く持ち歩き続け、そして今でもそれから生まれたものは、自分の仲間として、家族としてそばに居続ける懐かしい物だった。
「あー!! 魔物の卵じゃん!」
「そうなのよ! 懐かしいわねー! これからエリーは生まれたんだから!」
「な、なんだって?! そ、それが!?」
「ええーーー!!?」
「信じられない! 初めて見た!! これが!!!」
「みみみみみなさんおおおっちちちついいててて」
レインボーウィザーズはかつて一度見たことのある物だが、初めて見る魔物の卵にその場が大騒ぎになった。さっきまで淡々としていた副ギルドマスターまで盛大にどもっている。
ジュディが2階層目の最後に相応しいとして後に回したもの。それは魔物の卵であった。
今では世界中どこへ行っても見かけることの出来ない、かつてライゾンから渡された自分の従魔となる魔物が生まれる魔物の卵である。
自分の適正に合った魔物が生まれるその卵は、レインボーウィザーズの従魔が生まれたものとしてもとても有名で、己の最高の相棒欲しさに、この卵一つに探索者が相当な高値で賞金をかけていたりもする。
龍や精霊、妖精といった物まで出てくるのだから、いくらかかったって欲しいという富豪や探索者は多いのだ。
「ど、どうする……?」
「いや、これを即決で売るとはならんだろ」
「……同感」
「うん、これもちょっと保留ね。どうするかは今後みんなで決めましょ」
驚くべき物が出てきたことに対して一旦保留する事にした。
「そ、そんな! せめて一個、一個だけでもなんとか融通してもらえないでしょうか!?」
「確かにえっと、1、2、3、4、5、6、7。7個か。結構あるけど……」
「ちょっとこれほどのものになるとじゃあ一個だけ、と言う訳には行きませんわ」
「ちょっと勿体無いよね……」
「……この卵を持っていて欲しい人たちは私たちが決める」
「そ、そうか……そうか〜……」
がっくりと肩を落とす道具の検分役の職員。彼は特に目の輝きが違っただけに多少の罪悪感が芽生える。
とにかく第一階層と打って変わって比較的あっさりと終わった第二階層分の宝箱。最後は熱さに耐えて敵を探す最中に二つだけ拾えた第三階層の宝箱のみとなった。
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次回の更新は4/11(月)とさせていただきます。宜しくお願い致します。




