第三十二話 迷宮探索法と変わる日本
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2019/5/2
この話はレニオスさんのご指摘により、少し書き直させていただきました。ご了承ください。
親睦会が終わった三日後。
この日をもって日本に【迷宮探索法】が公布され、緊急性を要するとし、即日施行された。それにより、今日から探索者という職業が生まれ、街では迷宮、すなわちダンジョンに関わる店が、営業を開始し始めることになった。
思えばこの一か月はダンジョンの対応に追われていたが、その間に多くの事が様変わりしていた。
今回の日本魔物大氾濫という大災害(正式に災害と扱われることになった)にて、建物などは想定よりも被害は少なかったが、人的被害が凄まじかった。
死者は全国で約50万人。重軽傷者は150万人にも上った。怪我で済んだ人たちにはポーションを配ったり、病院へ搬送した。
そうやってポーションや、ダンジョン製の物を知り、今ダンジョンへの関心は企業や個人を問わず徐々に広がっている。政府としても自衛隊や警察だけでの対応が難しいこともあり、一か月の間に急速に法整備を整え、民間に探索者を増やすべく動いているのだとか。
とはいえ、平和な世に生まれた人々には、いきなり切った張ったの世界に飛び込む勇気が湧く人間はまだ少数だ。今後、どのように変わるかはダンジョンで持ち帰ってくるものにかかっているといえる。
また、建物など、公共物に対する被害は想定よりも下であったとはいえ、被害が出る所にはきっちり出ていた。
例えば流通だ。単純に運搬中のトラックが、運転手が目当てで魔物に襲撃され、運転手及び積み荷に被害が出たというのも勿論あるが、話はそれだけではない。
この業界、ただでさえ人々の努力によって高度な流通として様々な産業を支えてきていたが、それは現場で働く人の負担となっているのは以前より問題視されていた。それが魔物が世に現れることになり、ついに運搬中に運転手がどんなに気を付けていても、命が危険にさらされる職業になってしまったのだ。もちろん流通が滞ることは、それに支えられている産業にダメージが入っており、探索者ギルドはこれを解決できるようなダンジョン産アイテム、あるいは方法といったものに懸賞金をかけている。
また、漁業や農業といった一次産業にも被害は甚大だ。
漁業は、一見ダンジョンのない海には特に関係なさそうに思えるかもしれないが、実は浅瀬や、人が暮らせないような小さな孤島に何故かダンジョンが生まれていたのだ。そこで魔物が氾濫。通りがかりの漁業船、密漁船や、領海ぎりぎりで挑発行動を行う船、海上自衛隊の船一切関係なく、船を海の藻屑にした。
これにより魚の値段は高騰し、海の沖では漁が出来なくなっている。もちろんどこの国でもだ。
地方で行われているような本格的な農業は、人口があまり多くない為か、そもそもダンジョンが生まれなかったので、そこは問題にはならなかった。
問題は中途半端に都会に近い位置で農業を営んでいる人々だ。そういった人々が育てた野菜は人間目当てに畑に踏み込まれ、畑を荒らされ、既定の量の野菜が取れなくなってしまうケースが多かった。尤も、畑に関してはコケダマから作られた肥料を使うと、驚くほど速く成長し、収穫できると言う事で、辛うじて、値段に響いたのは、遠くから輸送する必要がある野菜だけにとどまった。
唯一流通以外に問題なかったのは畜産だ。
そもそも畜産は地方で行われているものが多く、泊まり込みで作業をしている人を合わせてもダンジョンができるほどの人口密集地にはならなかった。被害は全くない。それどころか、世間が今このようなことになっていることを知らない畜産農家が多いという実態まで上がったほどだった。
流通に関しては他の部分と同じではあったものの、他二つの産業と比べると問題の深刻度は下がる形となった。
今、日本は、ダンジョンに対しての対抗力は諸外国より一歩先にいる。
今は入門ダンジョンを免許持ちの新米探索者に任せ、日本魔物大氾濫で戦えた程の者たちは、初級ダンジョンへ赴き、ダンジョンに対抗するため、あるいはダンジョンを利用し更なる国の発展のためにダンジョンへ行くことを推奨している。危険があるのはもちろんだが、だからこそ探索者ギルドがサポートする。
探索者ギルドは六大都市や、主要な大きい都市にそれぞれ一つは設置してあり、雨宮を筆頭に各都市でそれぞれ指揮を執ったチームがギルドの運営を行っており、その中でも雨宮のギルドは秋彦達の手に入れた【妖精商店】のおかげで他のギルドより一つ先を行っている。
なんせダンジョンで手に入れられる硬貨によってさまざまな魔法の品を手に入れられるのは今の所【悪夢の終焉】だけだ。効果の高いポーション、魔法の装飾品等、欲しい物はたくさんだ。
秋彦達としては自分たちだけで独占するのも何だから他の人たちにも使ってもらいたいというだけの話だったのだが、ギルドに対する無償提供の事実が出来ることで、他のギルドが無償提供を強要するかもしれないという事情や、無償で妖精商店を手に入れたことで、他のギルドからのやっかみを受ける可能性がある事。
要するにただ無償で受け取ると、他のギルドや探索者からいらぬ厄介の目を向けられることになる。そういう事情から、秋彦達は妖精商店をギルドに高額にて売渡、更に提供者としてギルドに名前を残す事。そして妖精商店をギルドで使う場合、使用料として必ず妖精商店を使う際のはちみつをギルドで購入し、その購入による利益の一部を秋彦達が受け取ることを条件として妖精商店は探索者ギルドに置かれることになった。
ちなみに妖精商店から出る利益の一部は復興支援の為に寄付をしている。
話がそれたが、その様な事情も相まって、今、カネー両替場の立ち上げの為に、カネーを入手するべく、カネーを積極的に円へ交換するよう呼びかけられてもいる。
なお、現在の相場は一カネーに付き千円だそうだ。今は両替場設立のための動きでカネーが高騰しているのだ。高騰が落ち着けば、もう少し常識的な範囲で取引ができるだろう。
そういう意味でも日本の東京はダンジョンの数も多いこともあり、にわかに盛り上がりを見せている。
そして、ダンジョンで手に入る物を研究し、それを持ってエネルギー問題の改善などを目論む国の研究機関も、東京にダンジョン産の道具の買い取り事業を展開していた。
魔物の解体場をそろえ、ダンジョン内の道具だけでなく、ダンジョンの魔物も研究の対象内となっているようだ。魔物の死体も買い取りの範疇とは恐れ入る。
今の秋彦達は探索者の中でも指折りの存在と言えるだろう。不本意ながら、フィールドキメラゴブリンとの戦闘をネット上に流され、東京における魔物の氾濫をいち早く収めた戦士の一人なのだ。
とはいえ秋彦達にも日常と言う物がある。世界は変わり、さらなる変化を求められてはいる。だが、自分たちの日常は変わらない、変わりたくない。
変わりたくない自分たちの日常と、ダンジョンの真実を知るためにダンジョンに潜る秋彦は、新たに変わった日本で、今日も学校という日常と、ダンジョンというついこの間までの非日常を行き来すべく、学校へと向かうのであった。
皆様からのご愛顧、誠に痛み入ります。
そろそろ書き溜めの量が心配になってきてはいますが、これからも頑張っていきますので、ぜひ評価感想の方を頂戴したく思います。そうしたら私はもっと頑張って作品を展開できますので。これからもどうぞ、よろしくお願いいたします!




