第三百二十三話 フロア効果
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これも皆さまからのご愛顧の賜物です。
これからもりあダンをよろしくお願いいたします!
「よし、終わったよ!」
「……今回も良い経験になった」
中級ダンジョン第二階層目のボスを無事に撃破し、優太と茜から安堵の声が上がる。今回も無事に全員が生き残れた事は喜ぶべきことだ。
「ジュディ! 大丈夫か?!」
だが、秋彦だけはボスゴーレムが倒れてすぐにジュディの元に向かう。秋彦に急かされるかのように悠太と茜も続く。
「え、ええ。なんとか全身石化しきらずにはいるけど……まだ石化が止まらないの」
ジュディは今も少し苦しそうな顔をして右腕を押さえている。右腕は石化しきっていた。そして石化は今もなお進行しているらしい。
「みんなが戦っている間色々試していたんだけど……【キュア・ロック・ポーション】みたいな石化解除の道具を使ってもすぐに石化が始まっちゃうの。ボスがいるからなのかと思ったんだけど……」
そう言いながらジュディはいざという時のために持っていた状態異常を解除するポーションを口にする。
石化した右腕に亀裂が走り、石化した腕が砕ける。当然だが中の右腕は石化しておらず、無事な状態だ。
しかし、すぐに中指がゆっくり石の様に白く変色しかかってしまっている。
「これは……どういうことだ? もうここにはボスはいねぇぞ?」
「とりあえずあのボスがいるだけで石化をばら撒く様な能力を、ペネトレイトでも見破りきれない様に巧妙に隠しきっている可能性は無くなったわ」
「……石化の要因は他にある?」
「ええ、そ,それって一体何……?」
「……分からない。けどなんとなく心当たりがないこともない」
「あ、あ〜、そう言われると俺もそんな気がしてきた」
茜と秋彦は思うところがあるらしく、秋彦はその予感を確証とするべく行動する。
「とりあえずジュディ、これ付け直してくれ」
「あ、ありがとう!」
「もう予備はないから気をつけてくれ。次誰かがアクセサリー壊されたら帰還石使って緊急離脱するからな?」
まず秋彦はジュディに予備で作成していた、秋彦お手製の全状態異常無効効果があるアクセサリーを渡す。
ついでとはいえ多めに作っておいた甲斐があるものだ。尤も、こんなに早々と役に立つとは思っていなかったが。
「よしよし、無事に石化も解けたな」
「良かった……流石に当事者としてはやっと安心できるわね……」
ジュディが状態異常無効の装備を付けたことで石化に耐性が出来て無事に徐々に石化する状態異常が消えた。
ここでやっと秋彦とジュディに安堵の表情が浮かぶ。ここまできてようやく勝利といえるだろう。
「で、だ。ジュディ。今それ付け直した時に何か悪寒みたいな物を感じなかったか?」
「ええ、ここに入った時も感じたゾクッとした感じがあったわ」
「……やっぱり」
「まあそうだよな」
ジュディの回答にやっぱりと言わんばかりに頷く秋彦と茜。
「えっと、どういう事?」
「……多分、この部屋に耐性のない物を石化させる能力を持つ何かが隠してある可能性がある」
「ああ、俺もそう思う」
秋彦は辺りを改めてよく見る。今のこの部屋は一見何もないだだっ広い土と石の壁で覆われた空間の様に見える。
だがこの何もない空間でボスモンスターを討伐し、それで尚ジュディの石化が進行し続けていたことを考えると、この部屋になんらかの仕掛けがあったと考えるのが自然だろう。
「部屋入った時に感じた悪寒は、その何かが石化させようとして耐性に阻まれたのを俺らが感じ取ったんだろう。てかあの悪寒って多分状態異常を常駐の効果で無効化した時に感じる物なんじゃねーのかな? まあカンだけど」
「……そんな気がする」
「ふーん……そうは言っても何もなさそうだけど……」
「でも優、ここでそれに対して明確な答えを出さないままにしておく訳には行かないわよ?」
「ああ、ライゾンのことだ。絶対放置してたら次辺りでもっとキツいのが問答無用で出てくるだろうし」
それを聞いて優太はウヘェと嫌そうな顔をする。
確かにダンジョンといえばライゾン達が、人々を強く育てるために餌をぶら下げて入れさせる教育施設の様なものだし、入門、初級で散々潜ってきたことで知った今までの傾向から言えば、次の階層ではそれを踏まえた上で何か来ることは十分有り得る。
「じゃあその何かを探してみようか」
「そうだな。じゃあ親友はこっち。ジュディはあっちを。茜はそっちを。俺は向こうを見てくる。とりあえず15分探してみよう」
「わかった。何かあったら声かけるね」
「オーケー、でもこういうのって最初にやっておくべきだったのかもしれないけど、もう命の危険がないことが分かっているだけ気楽かも知れないわね」
「……同感」
………………………………
そうして秋彦の宣言した15分後、部屋の調査をしていた四人は浮かない顔で戻ってきた。
「俺はハズレっぽい。なんもなかった」
「僕もダメ、何もなかったよ」
「私の方にも何もなかったわ」
「……同じく空振り」
四方でそれぞれ、石化に関連しそうな物を探してみるも一向にそれらしい物が見つからない。
「……どういう事?」
「全員ダメかー……」
「おっかしーな、予想外れたか?」
「困ったわね、流石に何も分からないまま先に進むのはちょっと……」
秋彦と茜の予想が外れ、煮詰まりかかってきて全員頭を抱えてしまう。流石に石化の謎が解けないまま先に進むのは怖い。だがここでいつまでも立ち止まっているわけにもいかない。
どうしたものかと思う秋彦。ここでまた一つ思いついた。
「でもよ、逆にいえばこの部屋には何も物はないって事がわかったって事だよな?」
「……そうなる。それが?」
「何か思いついたの?」
「ああ、この部屋の中には何もないならひょっとしたらこの部屋自体に何か効果があるのかも知れない。ええっと、どこに向かって放てば……どこでも良いか。とう!」
秋彦自身もひょっとしたらと思った程度、物は試しで適当に部屋の床に向かってアナライズとペネトレイトを使う。すると、以下の様にでた。
<【中級ダンジョン二階層目ボスの部屋】>
<【フロア効果】>
<徐々に石化:石化耐性のない者を徐々に状態異常の石化を付与する。五分で完全に石化が付与される>
「うわ、出たよ本当に……」
「アナライズってペネトレイト込みだとこんな事まで調べられるんだね……」
「ふ、フロア効果? まさかこの二階層目って全部そうだったの?」
「……この階層に来た時はあの違和感はなかった。便宜上フロアと呼んでいるだけだと思う」
ここに来て新情報である。
フロア効果。一部屋単位をフロアと呼ぶのか階層全体をフロアと呼ぶのかは分からないが、いるだけで効果を発揮する特殊な場所という事だろうか。
「これは知っておいてよかったわ。次からは絶対このフロア効果がありきの構成になるに違いないだろうし」
「これは……状態異常の回復アイテムとかあっても次の階層からは油断できないな」
全員一斉に頷いた。
フロア効果についてはまだ分からないことの方が多いが、この先どの様なトンデモ効果を付与されるか分かったものではない。備えはしっかりしてきたつもりだが、全状態異常無効のアクセサリーだけでも十分と思っていたのも相まって緊張感も一層高まってくる。
「……一応回復アイテムは持って来てはいる」
「どうする? 進む?」
「そうだな……ちょっと様子見だけしよう。ボスに行けても今回は挑まない。軽く階層の様子と雑魚敵と軽く交戦して終わりにしよう」
「そうね、フロア効果次第ではさらに備えが必要になるかもしれないし」
その上で秋彦たちはもう少し進む事に決めた。そこまで決めた所で、ボスモンスターの残骸と現れていた宝箱を回収し、秋彦たちは次の階層へ向かう。
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次回の更新は3/10(木)とさせていただきます。宜しくお願い致します。




