第三百二十二話 第二階層目ボス 後編 2
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これも皆さまからのご愛顧の賜物です。
これからもりあダンをよろしくお願いいたします!
ハイ・トパーズ・ゴーレムが両手を平手の状態にして振り上げる。そしてそのまま秋彦に向けて左手を振り下ろしてきた。
攻撃範囲を広げる為に拳を作らなかったのだろうか? だが、大振りで動作が見え見えの攻撃など喰らいはしない。右へ、さっと余裕を持って移動し躱す。
それを追うかの様にゴーレムは右手を振り下ろす。
前、右、左前。
秋彦が振り下ろす手を躱す度に左、右と交互に腕を振り下ろす。人が机の上で蠢く蚊や蠅を手で潰す時の動きか、または子供の駄々っ子の様にも見える。
こんな調子では秋彦を捉える事など出来はしない。だが、その動作をさらに数回繰り返すと、いつの間にか辺りは土煙が巻き起こり、周りの様子が見えなくなっていた。
これを狙ってやったというなら意外と知性も冴えている。ボスゴーレム自体も力任せではなく、作戦を練ることも出来る程の物があることが窺えるだろう。
土煙の煙幕に囲まれて数秒。どこから来るか。視界を阻まれてどこから攻撃が来るか見極めづらい。いっそあのままバンバンと追いかけ回していればよかったのにとも思う。
どうしたものかと思っていると、煙幕の外から茜の声がかかる。
「左ラリアット! 攻撃来る!」
直感に従い瞬時に高めの跳躍で攻撃を躱す。土煙の煙幕を薙ぎ払うかの様に太い腕を十全と使ってのラリアットを仕掛けてきたのだ。走って居たら躱しきれなかっただろう。危ない所だった、茜が攻撃法とタイミングを教えてくれて居なければ攻撃を喰らって居たかも知れない。
「すまん、助かった!」
「まだ終わってない!」
だが、咄嗟のこととは言え跳んでしまったことで秋彦は攻撃を避けづらい空中だ。
ラリアットを外したゴーレムはすぐに体勢を立て直して、渾身の張り手を放ってきた。身動きの取りづらい空中での追い打ちだ。
「おお、こりゃ打つ手無しかな。さっきまでならな」
だが秋彦もこの局面で不敵な笑顔が出てくる。ポケットからまだマジックバッグにしまっていなかったシルフの手箒を取り出す。
「ブロウで強風を吹かせるっていう事は……こういう事も出来るって事だよな!」
団扇で扇ぐように自分自身に真上からシルフの手帚を振る、すると秋彦の目論見通りシルフの手帚は自分に向かって真上から強風が吹きこんだ。秋彦はその強風に押されて勢い良く地面に落ちた。そのままならば喰らって吹き飛ばされて居たであろう張り手は虚しく宙を切る形となった。
「よしよし、ついさっきまで存在忘れてた割にすげぇ役に立つなこれ」
「……ブロウの更なる可能性を見た気がする……待って、ならばこういう事も可能かも……」
攻撃の範囲外で感心する茜。そして何か思いついたらしい。
ボスゴーレムからの攻撃を確実に躱しつつ順調に時間を稼げている。拳を振りかぶってからの連続パンチの回避にもゆとりが出てきた。
先程の絶好の場面で攻撃を決められなかったボスゴーレム、先程までは作戦があるかの様な動きをしていたが、だんだん攻撃が単調になり出してきた。
もしくは小手先の小技では攻撃を当てられないと判断したのだろうか。いずれにせよ動き自体は単調になっているが、その分純粋に速度が上がってきたのでそこは気をつけなければならない。
左のジャブをやり過ごし、右ストレートに備える。予想通り放たれた右ストレートを右に避ける、と思ったら右ストレートを放ったタイミングで右から風が吹いた!
ブロウで吹かせる強風よりもさらに強い。という事は先程コウザンイシツツキとの戦闘で使われたハイ・ブロウだろう。
そしてハイ・ブロウという強風の煽りを受けて、ボスゴーレムは体勢を崩してしまい、ボスゴーレムはしっかりと腰を地面に突き刺して固定して居たのに、逆にそれが軸になってしまったらしく、しばらく回転していたが、やがて遠心力が上乗せされてバランスを崩し、そのまま回転しながら倒れてしまった。
動き自体はコミカルだが、倒れた時の土煙の大きさや轟音、何より今までのボスゴーレムのどの攻撃よりも強くボス部屋が揺れたことからその威力の凄まじさが分かるというものだ。
「え、今の誰がやった?」
「……予想より綺麗に体勢が崩れた。大きな家には大きな風。大きな物ほど強風の影響を受けるけどここまでとは」
「お前かよ茜!」
突発的に起こった事に頭がついていかない秋彦を余所に満足気にしている茜。思わずツッコミの声も大きくなるというものだ。
「……あれだけ大きければ自重で倒れた時のダメージも大きいはず。ちまちまとしか与えられなかったダメージも大幅に稼げた。秋彦にもダメージなしで万々歳」
「いやいやお前なぁ……ああ、もういいや反論する気力もわかねぇ」
確かに茜の狙いは正しかった。超重量にして超巨大な相手に対して風による転倒、自重によるダメージは甚大だ。実際派手に転倒したボスゴーレムは今の転倒で右腕が取れる大惨事になってしまっている。確かにあの大ダメージではもはや戦うことも出来まい。這って移動するにも時間がかかるようになった今決定打になったと言えるだろう。
だがあの巨体が倒れるとなれば影響を受ける範囲を考えれば一歩間違えれば秋彦どころか最悪その場にいる全員に被害が出ていたかも知れない事を考えると、誰にも被害が出なかった事はただの結果論だ。
それだというのに、このある意味いつも通りの態度。もうため息も出てこない。
「……上手く相手にダメージを与えられた。トドメよろしく」
「あ、は、はーい……」
最後に放たれたのは優太の炎魔法。それが勝負を決する決定打となった。
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次回の更新は3/7(月)とさせていただきます。宜しくお願い致します。




