第三十一話 勧誘
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皆様からのご愛顧、本当にありがとうございます!
「さあ、このお店だよ」
「おー、ここですかー」
前祝として連れてこられたのはステーキハウス「ハワイアン」という店だった。
「おー! ステーキか!」
「やったぁ! 楽しみ!」
わらわらと中に入っていくと、今日は貸し切りになっており、席が決まっておらず、好きな場所に座っていいとの事だったので、秋彦達は適当な場所に座った。そして真正面にジュディ達が座る。
今度は秋彦が先に声をかける。
「お、そこでいいの?」
「ええ。もっとお話しましょうよ」
「あ、は、はい……」
また委縮してしまう優太。びくびくすることないと思うのだが、仕方ない事なのだ。
「どうしたのさ、そんな固くなって」
「……リラックス」
「まあまあ、舞薗さんも楠さんも。親友はちょっと事情があるのさ、あんまいじってやらないでくれよ」
「ん? そうなのか?」
「……どういう事情?」
「……まあそこら辺は、もちっと仲良くなってからかな」
舞薗も、楠もお構いなしに話しかけるので、ちょっと秋彦が窘めておく。いくらなんでも今ここで、いじめられっ子は集団で来られると委縮してしまう、とは言えない。親友の名誉のために。
そうして話していると、隣に見覚えのある人が隣にやってきた。
「隣に失礼するよ」
「あ、矢場さん、それに萌黄さんも」
「久しぶりだね南雲君。後、僕の事は大さんと呼んでくれるとありがたい。正直名字があまり好きじゃないんだ」
「あ、分かりました」
そうやって他のチームも席についていき、最後に雨宮が音頭を取る。
「いやはや、正直まさか現代に探索者ギルドなんていう組織が生まれ、そして僕がギルドマスターになるなんて、正直一か月前は想像もしませんでした。あの時は……いや、今でもそうなんですが、ダンジョンの中に入ってから、氾濫の事を知り、それから人を守るためにひたすら走り続けてきました」
いつの間にか店の中は静まり返っている。
「知り合いから心無い言葉を頂くことも多かったです。でも、それでも走り続け、今僕はここにいます。これから皆さん探索者の為に僕は、探索者としてのレベルアップもしつつ、ギルドマスターとして皆さんの探索者としての生活を支援に全力を尽くしたいと思います!」
拍手と歓声が上がる。
「皆さんありがとうございます。今日はささやかですが祝宴の席を用意しましたので、皆さま楽しんでいってください、ここではお肉のお替り自由ですので、ぜひお腹をパンパンにしてください、では、乾杯!」
乾杯! という声と共に、あちこちでグラスを当てる音が聞こえる。
秋彦達も飲み物の入ったグラスを近くの人のグラスに当てる。未成年組は当然ながら、問答無用でジュースだ。秋彦はコーラ、優太はオレンジジュースだ。
「いやー、お肉食べ放題か! 楽しみ!」
「うふふ、秋彦は食い気盛んなのね」
「いやー、はっはっは、この図体は維持費がかかっていけないね」
食い気が先行したセリフをジュディに茶化された秋彦が思わず頭を掻く。
そのセリフを聞いて、矢場がうらやましそうな顔をした。
「若さがまぶしいな。俺は最近油が辛くてな……」
「矢場君、まだまだ老け込むには早いよ。僕はまだ油とはお友達だよ」
「大さん、また健康診断で医者に叱られますよ?」
「あはは、耳が痛いよ」
そうして話をしていき、酒と肉が運ばれて、食や酒が進む内に、話題はやはり、初級ダンジョンの話になっていく。
切り出したのは矢場だ。
「いや、しかしあの妖精商店は凄かったな。初級で手に入る物があれ一つでカネーと引き換えで手に入るとは」
「ええ、そしてそれをみんなで共用しようと考えられる秋彦達も凄いと思うわ。ねぇ、初級ダンジョンって中はどうなっていた? 敵の強さは?」
ジュディがそれに乗って、結構ぐいぐい来る。
「んー、といってもなぁ。入ってすぐに魔物と戦闘して、宝箱めっけて終わりだったし、明日またダンジョン行くつもり」
「敵と遭遇したのね? なにが出たの?」
「え、えっとだな。ホーンラビットっていう頭にとがった角が生えたウサギだな。周りをピョンピョン素早く跳んでうっとおしかったけど、ある程度動体視力ありゃカモだと思うぞ。逆に見切れないと辛いだろうけど。結構重かったから、あれが結構な速度で突っ込んでくること考えると、攻撃力高いと思うし」
「そっかそっか! でもやっぱり秋彦って勇気あるわよね。率先して初級ダンジョンに入って行ったり、あのフィールドキメラゴブリン相手に素手で、時間稼ぎに行ったり……」
「うん、あの時は正直驚いた。俺が尻尾斬らなければどうなっていたか。君は結構向こう見ずな所があると思えたよ」
矢場も話に加わってきた。
「ま、まあ、僕には強化魔法ありますから、ちっとは時間稼げるかなって……」
「そう、それだ。君の魔法は俺たちの魔法とは違うサポート向けの魔法だ。今はそれを自分にかけることで自己完結型の戦士として戦っている。無属性魔法というのは特殊だとは聞いていたが、正直に言うとこの便利な魔法の数々を持っているのは羨ましい」
「そうよね、あなたがいればアナライズカメラとかも必要ないし」
「あ、あはは……お褒めにあずかり光栄です……?」
急に話の流れが変わり、少し身構えてしまう。話の意図が読めなかったからだ。
矢場がさらに続ける。
「今の君は自己を強化し、それによって自己完結型の戦士となっている。しかし、君の本領はサポートだと思うんだ。君が弱いとは言わない。むしろ強い。でもチームを先に強化してから戦えば更に君は輝くと思うんだ」
「は、はあ……」
「秋彦君、君、俺のチームに入る気はないか?」
「……え?」
素っ頓狂な声が出た。まさかの勧誘である。
「矢場さん、矢場さんのチームは秋彦と優太を入れたら7人になってしまいますよ? その点私のチームは三人だから、二人増えても五人だから、人数的にも問題ないわ。ねぇ、私も矢場さんと同じことが言いたいの。私たちと組む気ない?」
「……ええ?!」
こちらからも勧誘が来た。
するとすっと矢場が口を出してきた。
「いやいや、七人でもまだ常識の範囲内だろう。そちらは女性のみのチームだし、男性である秋彦君達とは少し合わないのでは?」
「そんなことないですよ。それに合う合わないで言うならば、社会人と学生という隔たりがあるようにも思うのですが。私達、こう見えて、学校は違えど高校生なんですよ。ね?」
「いやあの、ちょっと待って、俺と親友置いてけぼりにして話進めないで?」
いつの間にか矢場とジュディが睨み合いになっていた。笑顔で睨みあってる二人から意見を求められたので、とりあえず自分の意見を先に言う。
「ぶっちゃけこういうのって、俺と親友が相談しあわないといけない事だし、とりあえず、そういうのもあるのかってのは覚えとくので、帰ってから相談します」
「……そうか、ちょっと焦りすぎたようだね。すまない。ではこれを渡しておこう」
そういうと、矢場は一枚の紙を渡してきた。書いてある物を見ると、それが名刺だという事がわかった。
「俺たちと組みたくなったらいつでも連絡をくれ」
「秋彦、私と電話番号とメールアドレス交換しましょう? こちらは三人チームだからいつでも歓迎よ?」
「お、おおう……」
若干引き気味に電話番号とメールアドレス交換を済ませる。
………………………………
結局あの後ほとんどのチームから勧誘を受けてしまった。連絡先を交換したり、名刺を渡されたり、酔った勢いなのかどうかわからないが、ずいぶん絡まれてしまった。
食事がおいしかっただけにちょっと残念だった。
「いやー、飯美味かったな」
「ねー、また来たいね」
「そうだな。これってどんぐらいかかるんだろうな?」
「えっと……ちょっと待っててね。ステーキハウスハワイアンっと……ええ?!」
「ど、どうした親友?」
「こ、これみて!」
優太はそう言ってスマホを見せつけてくる。先ほどステーキをこれでもかというほど食べたステーキハウス、ハワイアンの店紹介だった。
……コース料理食べ放題一人3万円
「……え、じゃあ今俺らって一人頭三万の料理食ってたわけ?!」
「……お、美味しいはずだよ……」
一気に顔が青くなる二人だった。
しかし彼らは気づいているのだろうか。これから入門ダンジョンのわき潰しを一つ行うごとに5万円支払われる。二人の速度なら一日3から5程度は楽勝で依頼を終えられる。つまり、一日十五万から二十五万の収入になる。
二人にとってはギルドが本格的に動けば普通に手が届く金額なのだ。
もっとも、そうはいっても二人はまだ学生の身分で、最近までお小遣いをもらっていたり、アルバイトでお金を稼いでいたのだ。そんな二人にとって、一食が3万円という感覚は雲の上の感覚であり、初めての体験に腰が抜けるのは仕方のない事だったのだ。
皆様からのご愛顧、誠に痛み入ります。
これからも頑張っていきますので、ぜひ評価感想の方を頂戴したく思います。そうしたら私はもっと頑張って作品を展開できますので。これからもどうぞ、よろしくお願いいたします!




