第三百二十話 第二階層目ボス 中編 2
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これも皆さまからのご愛顧の賜物です。
これからもりあダンをよろしくお願いいたします!
ボスモンスターが巨大な腕を使ってこちらに向かってくる。腕だけで動いているという訳ではなく、言うならばゴリラの移動法だ。細く頼りない足での移動に剛腕がサポートする。そのおかげか機動力も皆無という訳ではないらしい。
しかしただでさえ相当な質量が見て取れるボスが、その移動法を駆使して巨体の割に素早く移動してくるせいかボス部屋がミシミシいっている。ここまで来ると最早地震に近いものがある。
あまり揺れ動かされても迷惑なので、秋彦、ジュディの前衛ペアからも近付く。
走って近づく秋彦達を確認したのかゴーレムは拳を勢い良く振りかぶり、右ストレートを叩き込んでくる。
速い。この質量で秋彦が早いと思えるような一撃を繰り出して来るとは驚きである。戦闘力4万はやはり並の領域ではないという事だろう。
そしてそんな恐るべき敵の攻撃を真正面から受け止めたりはしない。狙われた秋彦は、ボスゴーレムの攻撃を三歩分位の余裕を持ってかわす。
これだけでかいと引っ掛けただけでも大ダメージであろうことを考慮してである。
拳を叩き込まれた地面から、大きな砂煙が巻き起こり、砕けた石が飛び散って来る。抉れた地面は拳の威力を想像させるには十分だ。
これだけのパワーならば一般人だと砕けた石の一つでも致命傷だろう。だが今の秋彦にはノーダメージだ。
そして、叩き込まれた拳は秋彦にとってはいい通り道となる。
「よっと、やっぱりこういう図体のでかい相手は乗っかりやすくていいね、そら喰らえ!」
叩き込まれた拳から飛び乗り、腕を通じて頭へ駆け上がる。そして駆け上がり切った頭のてっぺんに駆け上がった勢いを上乗せして槍を人間で言う脳天に突き立てる!
「うお?! 硬いぞこいつ!」
脳天に突き立てた槍は弾かれはしなかった物の、どちらかと言うと刃の部分がめり込んだ程度となり、深手には至らなかったようだ。
深く突き刺さらなかったのですぐに引き抜きさらに数回槍で攻撃して見るもののやはり効き目は薄いようだ。
「ちぇ、ダメか! とう!」
物理攻撃では拉致があかないと判断した秋彦、とりあえずボスゴーレムの頭から飛び降りる。
「おかえりなさい。どうだった?」
「ただいま、だめだなありゃ。想像以上に硬かった。ありゃ物理攻撃は分が悪いぜ」
「……銃撃にも全く怯まない。そもそも的が大きすぎて当て放題で射撃の練習にもならない、弾も勿体無いで全く面白味がない」
「そうだね、だから……ここからは僕の出番だよ」
「ん、頼むぜ!」
ボスを前に魔力増幅で自らの魔力を高めて出番を待ち構えていた優太、お待ちかねの出番である。
優太の魔法力が昂っているのが魔法力のオーラではっきりわかる。そして、優太の手元に野球ボール程の大きさをした火球が一つ。
その大きさは一般人のような魔法が使えない人々からすれば、三階建てのビル程もあろう魔物にぶつけるには心許ないようにも感じるだろう。だが魔法を習得していればこの小さな火球に炎属性の魔法力が凝縮されているかはわかるはずだ。
「よーし……いっけぇ!」
優太が合図をすると、火球は投げていないが光の矢のように高速で放たれた。
放たれた火球はボスゴーレムに吸い込まれるかのように向かっていき、着弾する。次の瞬間に部屋は轟音と閃光に包まれた!
「うお!!」
「「きゃあ!」」
次に爆発が作り出す爆風がボスゴーレムどころか自分達にも吹き荒れる。倒れてしまいそうな程の爆風だがそれも無理もないであろう。
何せ今の一撃で元々細かったボスゴーレムの足腰は完全にダメになったらしく、腕だけで体を支えていた。這いずる様に移動するボスゴーレムが爆発の残り火に照らされ、鉱石で構成されていて、決して燃えるはずのないゴーレムが炎を纏っている様にさえ見える。
これはもうミサイルかロケットランチャーかという次元の話の大爆発だ。少なくとも一個人の放つ攻撃の威力というようには思われないだろう。
「どっひぇ〜……親友また魔法力上がった?」
「そうかな? まあだいぶ力は込めたけどね。感知的にも大ダメージになったと思う」
「そうね、このまま押し切って……」
このまま押し切って終わりにする。としたかったがやはりそうもいかないらしい。ここはダンジョン、その階層のボスがいる場所。楽勝な雰囲気が漂い出した時に限ってその足元を掬いにくる。
ずるずるとゆっくり近づいてきていたボスゴーレムが、体勢を崩して腹這いに倒れる。苛立ったかの様に両腕を上げて、地面に叩きつけた!
「危ない!」
叩きつけた両腕からドーム状の衝撃波が巻き起こり部屋全体を吹き飛ばす!
優太の放った炎魔法の残り火は全て吹き飛び、ボスゴーレム自身の下半身部分の残骸さえ粉微塵になっていた。
一撃で跡形もなく終わりそうな破壊力を見せた攻撃。ドーム状に広がる攻撃の跡がその威力の凄まじさを物語っている。
だが一部分だけ攻撃の跡が不自然にへこんでいる場所がある。そしてそこに居たのは、レインボーウィザーズだった。先頭でジュディが盾を構えている。
「……危なかった」
「びびび、びっくりした」
「ジュディ大丈夫か?!」
「ええ、ちょっときつかったけど、なんとかね……こんなに全力で守ったの地方都市奪還作戦以来かも」
咄嗟に敵の攻撃に気付いたジュディが急遽魔防壁を展開しての防御。戦闘力4万の攻撃を、範囲攻撃とは言え真正面から受ける事になってしまった。
だがそれを恐るべき事にジュディは五体満足で見事受け切ってみせた。これが肉体力の低い優太や茜が食らっていてばどうなっていたかわからない所だ。
「あ!」
「どうした?」
「あ、秋彦からもらったアクセサリーが!」
攻撃を受けた事で何処かに影響は無いかと体を見ていたら、秋彦が作成していた南雲秋彦の怨呪骨製お守りが破壊されていた。
「あー、そう言えば装備破壊ってあったか。直接当たった装備じゃなくても壊れるのか……面倒だな」
壊れた自身の作品を見て思わず肩が落ちる。先程アナライズとペネトレイトをしておいたおかげでボスゴーレムには道具や装備を破壊するスキルがあることは知っていたが、直接当たっていなくても効果を発揮するとは思わなかった。
「ご,ごめんなさい、せっかく作ってもらったのに」
「あー,いいよいいよまた作りゃいいんだから。どうせあれは石化状態の相手を即死させる技持ってたって、あれ自体には石化付与能力はないんだから心配ないし」
「で、でも……」
いいと言っているのになお何か言いたげなジュディの肩に手を置く。
「俺がいいって言ってるんだからいいんだって。俺はジュディが生きててくれただけで万々歳さ」
「秋彦……」
優しく声をかける秋彦。戦闘中だというのにどことなく甘い雰囲気になりかかる。思わずため息が出る優太と嬉しそうにニンマリとする茜。
だが、そんな空気は、パキッという、まるで何かがひび割れたかの様な音が消し去ってしまった。
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次回の更新は2/28(月)とさせていただきます。宜しくお願い致します。




