第三百十一話 クリスマスの飾り付け
累計PV数629万突破いたしました!
これも皆さまからのご愛顧の賜物です。
これからもりあダンをよろしくお願いいたします!
「さてと、挨拶も終わった事だし、電飾の飾り付けやるか〜」
「わーい! 待ってましたー!」
家に帰って秋彦があたらめて宣言するとジュディが嬉しそうに飛び跳ねた。
昨日は落伍者とも違う、それらとは一線を隠す実力を持っていながらダンジョンを相手にしようとせず、わざわざ他者や弱者を食い物にする悪徳に生きる物達である、一般的には落伍者の上位的存在と言われている悪徳者からの襲撃を受けた事で折角の飾り付けが途中で止まってしまっていたのである。
飾り付けを楽しみにしていたジュディも流石にその日はこれ以上飾り付けをする気にはなれず、捕まった辻斬りに対して苛立ちを募らせていた。
明日は試験の結果が返ってきて、秋彦達学生は、一足早い冬休み期間へと突入だ。尤も、補習を受ける人々はその限りではないが。
今までの学力では秋彦は危ない線にいたところだが、今となっては無関係の位置だ。
だがまあ明日午前中に時間がとられることもあって、せめて今日中には飾り付けを終わらせてジュディの機嫌を取りたいところである。
改めて秋彦が昨日買ってきた電飾を広げてみる。
全長何メートルだろうか? 改めて見てみると本当に大量に電飾を買ったものだ。クリスマスツリー用、庭用。2階の窓用。また、今回はいつもはしないような色々と凝った飾り付けも大量に買い出しておいた。今日1日でクリスマスを楽しむ家に変え切る予定である。
「うへぇ……これ全部飾るのか……大変そうだな」
「平気平気! 探索者の体力と器用さなら1日の範囲内よ。さあ! やるわよ〜!」
「あいよー! ほれ龍ちゃん達も手伝うんだぞー!」
「わーい! お飾りだー!」
「今日は張り切ってお手伝い致しますね!」
いつもは早々とどこかのダンジョンに行く秋彦の従魔、ホワイトドラゴンの龍之介とジュディの従魔、ホーリーランサーホースからナイトユニコーンへと進化したエリザベスもいる。
最近は人の姿になれるようになり、人の姿の方が秋彦達の住む家の恩恵を得られることもあって、家でも人の姿をしていることの多い2匹である。増して今日は人間の姿の方が飾り付けには都合がいい。
こうして二人と2匹による家の大々的な飾り付け大会が始まった。
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秋彦と龍之介が最初に取り掛かるのは家の外、庭の電飾だ。
庭をぐるっと内側に一周する様に電飾を巻き付けていく。要所要所で針金などの留め具で止めたりすれば庭の内側だけの電飾でも割とそれっぽくなる様だ。
なお、庭の外塀を越えての電飾は夜にあまり明々と辺りを照らしすぎて、周りの迷惑になるのでやめておく事にした。
あんまり派手にしすぎても見物にくる人々が増えるのもそれはそれでどうなんだという話でもある。ジュディもすでに納得済みである。
なのであまり高い位置への電飾もなしで塀を越えない高さに光る飾り付けを施す方向になっている。
この時期よくみるハシゴに小さなサンタさん型のライトがついた電飾も雨戸の天井から垂れ下げる形にする。
地面に直接置く電飾も青と白で色合いを統一させながらもサンタやトナカイ、プレゼントに雪だるまの形をした電飾など諸々合わせてかなり庭が賑やかになっている。
普段も庭園的に緑があってそれ程広い感じはしないが、今はさらに物の密度が増えている感じがする。なんというか一気にもうすぐクリスマスだという感じがしてきた。
「おお〜、なんかすっごいそれっぽい感じになってんな〜」
「龍ちゃんもすっごい頑張った! 早く夜になって電気着けたいね!」
「ああ、そうだな!」
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一方ジュディとエリザベスが担当するのは内装部分である。クリスマス飾りは電飾が目につくだろうがそれだけではない。
今回はそれを腕によりをかけて見せるとジュディは決めていた。それに、今回のクリスマスの飾り付けは自分の常識が通用するところにないところにもやりがいを感じていた。
「日本的な家にクリスマス飾り。凄く私の腕が試されている様な気がするわ」
「お、お母様、ど、どこから手をつけましょうか?」
「天井、壁、窓ガラス、飾るオーナメントも大量にあるわ! まずは時間のかかる窓ガラスから始めましょ!」
鼻歌混じりに作業を開始するジュディ。普段大人びて見えるが、この時は年相応の少女の笑顔だ。
窓ガラスに絵柄の穴を開けた紙をセットし、紙の穴を開けた部分にムラがないようにスノースプレーを吹き付けていく。こうすることで壁紙を窓ガラスから取ったときに穴の部分にだけスノースプレーが残り、窓ガラスに、雪で書かれたような白い絵が浮かび上がる。
クリスマスツリー柄、サンタさんやトナカイの柄、窓ガラスの一つ一つに丁寧に絵を書いていく。こういう特別な時は、細部にもこだわりを持ってこそ。ジュディはそう思っている。
次に取り掛かるのは天井だ。糸とセロハンテープを駆使してスノーフレーク、星、ハート、ボールといったさまざまな形のオーナメントを、密集しすぎて息苦しくならないように適度に間をおきながら、吊るしていく。
壁にはクリスマスによく似合う赤と緑を基調としたタペストリーに、あかくておおきなくつしたもつけて飾り、ポスターも壁に飾る。
そして最後のとっておきのクリスマスツリーである。この辺りで秋彦と龍之介が外の電飾を終えて家に入ってきた。
「ただいま……って、おお、すごい豪勢に飾り付けしたなこりゃ。て事はもう家の中終わり?」
「クリスマスツリーがまだよ。これは全員でやりましょ! ツリーの飾りをエリーと二人だけでやるのは寂しいわ」
「はーい! 頑張るー!」
「最後の仕上げ、頑張ります!」
全員揃ってのクリスマスツリーの飾り付けを始める。
赤白緑、金と銀のクリスマスボールを二つづつ。サンタさんの人形に赤い靴下。リボンのついたベル。その他様々な飾り付けをし、クリスマスモールにクリスマスツリー用に用意した電飾。こちらは外のものと違い、色合いはカラフルな物にした。そして最後にクリスマスツリーのてっぺんに龍之介が秋彦に肩車されながら星のオーナメントをつければ……完成だ!
「よーし! 完成よー!」
「わーい、完成だ完成だー!」
「わー! とっても綺麗ですわー!」
「おほー、こりゃ流石に豪華っていうか達成感あるなー……」
出来上がったツリーはジュディとしてもかなり良くできたのではないだろうかと自画自賛したくなる出来だった。
だがそれ以上にすごかったのはこの二人と2匹、全員でクリスマスを飾り、彩るというこの一体感と達成感だろう。今までにない高揚感を覚えた。
考えてみればジュディは今までクリスマスの飾り付けは基本使用人が率先してやっており、自分も雰囲気を楽しむ程度に手伝いはしていたが、メインで動いたことはなかった様に思える。
そう思うと二重の意味で満足感がある。
「いやしかし、遅くなっちまったが1日で行けたなー」
「ええ、疲れたけど心地良いわ……」
「うん! でも龍ちゃんお腹すいちゃった!」
「ごめんなさいお母様、私もです……」
「よし、じゃあ寒い事だし、鍋にでもするか」
「鍋、ね。ええ、いいわねお鍋。じゃあ準備しちゃいましょうか」
このクリスマス全開の雰囲気の中食事に鍋をチョイスされ、思わず苦笑してしまうが、まあそれも日本のクリスマスなのだろう、そう思い、ジュディは食事の支度を開始する。
故郷とは違う異国における故郷における一大イベントはもうすぐそこである。
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これからも評価、ブックマーク、感想など、皆様の応援を糧に頑張って書いていきます。
次回の更新は1/27(木)とさせていただきます。宜しくお願い致します。




