第三百九話 不意打ち
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これも皆さまからのご愛顧の賜物です。
これからもりあダンをよろしくお願いいたします!
「うおお……もう冬だけあって日が落ちるのも早い早い。さっさと帰らないと暗くなっちまうね」
ジュディと別れて少し。無事に予約表を書けたので帰路に着く。さっさと帰ると言った手前テレポテーションで帰っても良かったが、今日はなんとなく歩いて帰りたい気分になった。
本格化しつつある冬の肌寒さは、親友である優太と初めてダンジョンに潜ったあのときをおもいださせるので、秋彦は好きだった。
思えば色々あったものだ。
あの当時は腕っ節なんて碌でもない輩を懲らしめ自分の親友を守るだけのものだった。だが迷宮に初めて入り、魔法を手にし、レベルという概念に触れて、秋彦も優太も強く成長していった。今となっては優太は守る存在じゃなく共に肩を並べて戦う存在だ、もういじめられっ子だったあの頃の面影はない。
そして日本にダンジョンから魔物が溢れ出し、日本が、世界が魔物だらけになったあの事件でジュディ達と知り合った。
回想が回想を呼び起こし、いろいろな思い出を思い出してしまっていた。薄暗い中、のしのし上機嫌で歩く大男。ちょっと不審に見えなくもない。
しかし、そんな秋彦の幸せな時間は、唐突に終わった。
回想に浸る秋彦の脳に大音量で警報が鳴る。危機感知スキルが反応した。
秋彦はその感知の発した警報に従い、現在の装備で行える最大限の速度を持って死角からの攻撃を回避した。
回避したといえどかなり際どかった。もし後一瞬回避行動が遅れたら首から上下が生き別れになっていただろう。
「何?!」
「げ、嘘だろ!?」
薄暗がりに驚きの声をあげて振り返る秋彦と刀を振った体制で固まるもう一人。
商店街から離れているとはいえ秋彦自身の危機感知に引っかかるレベルの攻撃が繰り出されたことに驚いた秋彦と、自分の攻撃を見てもいないような位置から反応されて回避された事に対する驚愕の声だった。
そして両者は思わず上げた声をはっきり聞き、秋彦が振り返ったことで薄暗くて見えにくかったが目もあった。
かなり痩せぎすな男だ、髪はボサボサで、目が暗い事もあって一目見て不健康体であることが窺える。その様にどことなく探索者の知り合いである絶対零度の吹雪を思い出したがすぐに思い直した。
こっちは不健康さの度合いが違うし、吹雪は濃い目の隈で済んでいた目元が窪んでいる。これほど骨と皮だけという表現が似合う男もおるまい。
「てめ、何しやがる!」
そう言いながら秋彦は急遽ドレスアップリングで探索者用の装備に着替える。
本来街中での探索者装備状態での行動は禁止されているが、他の探索者や探索者が使うような装備で攻撃を受けた際の武装は許可されているので、問題はない。
実際、秋彦が避けたことで電柱と塀が水平に切れてしまっている。探索者の仕業で間違いない証拠がある以上加減はできない。
「ち、っくしょ、バケモンが!」
だが相手も完全武装の秋彦とやり合おうとするほどの蛮勇は持ち合わせていないらしい。首を狙っての一太刀が失敗した相手はマントで体を覆う。すると相手の体が半透明になっていく。そしてその姿を視認しにくくなった状態で秋彦に背を向け逃げようとした。
「そんなものが!? だが逃がさねぇ!!」
秋彦は逃げる相手に槍を構え、体に雷を纏う。久しぶりの出番だ。慣らし運転にはちょうどいいと思っておこう。
槍を構え、突きの姿勢を取る。体に纏った雷が己と一つになるようなイメージを持つ。槍の力を自分の技で引き出していく。別にこんなに丹念に集中しないと出せない訳ではないが、うまくやらねば相手を殺してしまうかもしれない。
「力は加減してやるよ」
そしてその言葉を最後に、逃げようとした男の背に強力な電撃が突き刺さる!
電撃と槍による突きのダメージが入り、悶絶する男。もんどり打って倒れてやっと声が出たらしく、苦痛に叫んだ。
「いでええええええ!! て、テメェ!! そこまでやるかよ!!?」
「黙れバカ、探索者相手に手加減してらんねーんだよ、オラ立て!」
「げほっ! ちょ、やめ、苦し……!」
立てと言っても秋彦はそのまま胸ぐらを掴み上げる。正直ここで警察を待っていても良いのだがジュディを待たせるのは確実なのでより手っ取り早い方法を取ることにした。
………………………………
「すみません、それじゃあお願い致します」
「いえ、こちらこそ。こういう探索者の犯罪者は我々だけでは逮捕が難しいので、ご協力感謝致します! こちらの逮捕ご協力に際しまして後程ギルドから報奨金が出ると思われます」
「了解致しました。では失礼致します」
その後秋彦は、すぐに警察署へテレポテーションし、警察へ男を突き出した。
どうやらこの男。かなり名の通った殺人鬼だったらしく警察からは随分感謝されてしまった。
通称【辻斬り】と呼ばれ、【妖刀紅蠍】という刀を使って探索者やその関連者に対して暗殺まがいのことを繰り返していたようだ。
今回は身の程知らずにも現代日本でもトップクラスの探索者に対して戦いを挑んだことで御用になったと警察は喜んでいたが、実際今日は徹夜をしていた上に散々ジュディとのお買い物デートで体力を削られ、コンディションはかなり悪い状態だったし、薄暗がりで相手の顔は見えにくかった。これが秋彦のように危険感知と直感のスキルレベルをかなり上げていなかったら回避は難しかったかもしれない。
これらを踏まえると、もしかしたら最初からずっと付け狙われていたのだろうかとさえ思える。
「……こりゃいよいよ他人事じゃないな闇ギルド」
浮かない表情になる。とりあえずこのことは全員に周知しなければならない。歩く気も失せたのでテレポテーションで帰路に着くことにした。
皆様からのご愛顧、誠に痛み入ります
これからも評価、ブックマーク、感想など、皆様の応援を糧に頑張って書いていきます。
次回の更新は1/20(木)とさせていただきます。宜しくお願い致します。




