第三百五話 昨今の土地管理事情
累計PV数609万突破いたしました!
これも皆さまからのご愛顧の賜物です。
これからもりあダンをよろしくお願いいたします!
「はぁー……なんかちょっとしか話していないのにすごく時間かかった様な気がする……」
「だが取り敢えず向こうの魂胆が見えたのはまあ良かったよ」
ノアズ・アークカンパニーを出ての帰り道、盛大なため息と共に吐き出された優太の本音を秋彦は苦笑いで受け止める。
「にしてもまさか譲り受けた家をリフォーム……てか殆ど立て直しの領域で魔改造することになろうとはな」
「でもここの所本当に物騒だったから正直ありがたかったまであるよ」
「……いざという時の避難所は大事」
やはりレインボーウィザーズも、最近の探索者の動向から治安の低下を危惧していたらしい。いざという時に逃げ場があるのはやはり心持に関わってくるだろう。そういう意味でも必要な備えなのだろう。
……本来自治体がやるべきことである様な気もしないでもないが。
「地下シェルターとかも要るだろうな、実家みたいに……」
「敷地自体も買い増しになるかもしれないわね、あの辺り活気があるけど地価の関係で周辺土地余ってるらしいし」
「え? でもあの辺りってまだ住んでる人いるはずだろ?」
「それはそうなんだけどね、離れられるなら離れたいのが本音だと思うのよね、うちの敷地内にダンジョンあるから、例え私達が管理してるって言っても不安は不安よ。まして特殊なダンジョンだもの。それに最近は特に……ね?」
「あ、あー。そういえば今ダンジョンの杜撰な管理が問題になってたりもしたっけ……」
言われて秋彦も確かにそうかもしれないと思い直した。
昨今の迷宮に関する法において、自分の管理する敷地内にダンジョンが現れたら土地の所有者が責任を持って管理することになっている。
探索者に適宜依頼して魔物が氾濫を起こさない様に駆除を依頼するか、自分がダンジョンに入って中の魔物を倒すかのどちらかになるのだが、自らが探索者であれば時々見回りをして駆除をして、素材や宝箱から手に入るお宝を手に入れて生計を立てることもできるだろう。だが土地の所有者が探索者でないと、そういうわけにも行かず、うまくダンジョンを経営運営していかないといけなくなる。
なにせ駆除の依頼もタダではない。駆除の成功報酬を支払わなくてはいけないからだ。普通に仕事をしていては探索者達が満足できる額など払えるわけもない。
なのでたいてい討伐した魔物の素材、奥に眠る宝箱の中身を持ち出し自由にしたりして帳尻を合わせている。
だが、そのダンジョンで出てくる魔物が他所でも出てくる魔物だったり、蛇や虫といった素材としては有用でも気味が悪いなどの理由で人気がない魔物だったり、あるいは同レベル帯にしては苦戦する割に見返りとなる素材の報酬があまり良くないような敵しか出てこない場合もある。
すると途端に人が寄り付かないダンジョンになる訳だ。探索者の人口は増えていっているもののむしろそう言ったダンジョンには顕著に人の出入りが少なくなっていっているのだ。
そしてこう言ったいわゆる【ハズレダンジョン】に人を呼び込むことができず、このままでは氾濫が起こり、莫大な被害損額を支払わなくてはならなくなることを恐れて、最近ダンジョンが出来てしまった土地の所有者が所有している土地を捨てて逃げ出してしまう事が増えている。
死亡事故などに繋がる様な事故にはまだいずれも発展していないが、割りを食うのは地域専属探索者達だ。嘆かわしい事に氾濫ギリギリになってことが発覚することが多く、慌てて自治体からの要請を受けて駆除に向かうことも最近では珍しくもなくなってしまっている。しかも土地の所有者が逃げ出してしまっていることで本来貰えるはずの駆除料金を丸損するケースもあるらしい。タダでさえ割に合わない料金で地元のよしみで受けている様なところがあるのにだ。対策の為の法を練っている最中なのだとか。
そういうことが相次いだことで、探索者が管理していてもダンジョンのすぐ近くにある住居というの一般人にはやはり敬遠されがちな物になってしまっているのだ。
秋彦の家のダンジョンもそれは例外ではなく、あまり近所の人と顔を合わせなくなっているのは近所の人が秋彦の家にあるダンジョンを恐れて近づかないからなのだろう。もちろん面と向かって言う人はいないが。
だから立ち退く金が、割に合う金が貰えるならすぐにでも出ていきたいのではないだろうか。やはりそう思えてならないのだ。
これ以上家が大きくなればますます成り上がり者としてやっかまれる可能性はあるが、こちらも自分達の大切な人のために行うことでもある。
敵はますます増えるだろうが、今は利用させてもらうとしよう。
「明後日話あいだっけ。まあ業者は……探索者の為の建設会社って言ったら大方予想ついてるけど。一体いくら掛かるんだろうなぁ。おー怖え」
そういえばライゾンも肝心の家のリフォームの大体の値段については特に触れてこなかったことを思い出す。やはり安い買い物ではないことは容易に想像がつくし、秋彦も相当なほどに稼いでいてもまだまだ庶民感覚が抜け切らない所があるので不安にはなる。
「散々稼いでいる癖に何言ってんのさ今更。たまにはパーっと使うと思って諦めなって!」
「……溜め込んで腐らせるよりまし」
「お前ら他人事だと思ってこのやろう」
桃子と茜に不安を一蹴されてしまい、恨み節の様にツッコミを入れてしまった。
皆様からのご愛顧、誠に痛み入ります
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次回の更新は1/6(木)とさせていただきます。宜しくお願い致します。




