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りあダン! 現実世界にダンジョンが?!  作者: 大道寺 禅
ダンジョンに適応する日本
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第三百二話 ノアズ・アークの方針転換

累計PV数599万突破いたしました!

これも皆さまからのご愛顧の賜物です。

いつもいつもお待たせしていると言うのに感謝しかありません。

これからもりあダンをよろしくお願いいたします!

 9月1日、地方都市奪還作戦、今で言う第一次人魔大戦と呼ばれる天下分け目の大勝負を無事人間側の勝利で終わらせ、勝利の余韻も冷めやらない時期に、株式会社ノアズ・アークカンパニーはひっそりと銀座にやって来ていた。

 日本の国土から魔物が1匹もいなくなった事で、復興を本格化出来る。この国が再び人間の手に戻ってきたことに気を取られていた。それでなくても一外国企業が新たに銀座に支部を置いたと言うだけの事。確かに9月と言う日本の年度替りという訳でもない時期外れの事ではあろうが、誰もが気にも留めない事ではあった。

 会社自体も、元はヨーロッパを中心に50年前から細々と製造業に勤しんで来ていた会社だったらしいが、ダンジョンが世に現れたタイミングで経営方針を転換し、ダンジョンで手に入る素材を買い取り、加工をし、多方面に輸出等取引を行う。

まあよくあるダンジョン関連会社だ。別におかしな話でもない。方針転換してから売り上げや規模が急拡大したのもダンジョン関連会社なら珍しい事でもない。

 だが秋彦達レインボーウィザーズはこの話に飛び上がった。

 ノアズ・アーク。世界にダンジョンを生み出し、世を混沌の渦に突き落とした人類救済を掲げる謎の組織。はっきり言って嫌でも想起させられる。

 実際まさかと思い、ノアズ・アークカンパニーに魔物素材を売り、企業の様子を探るべく赴いたら、今日この日と同じくライゾンに出迎えられたのだ。

 出迎えに来た。ライゾンをみて秋彦達は確信した、要はノアズ・アークによる市場介入だと。

 そもそもダンジョンが世に出てから数ヶ月。当時物流が瀕死で物価急上昇中。その当時なら魔物食材は非常に高値で売り買いされたのは当たり前だ。

 だが今になっても値が下がらないのは少し不自然だ。

確かに市場に食材が戻り、わざわざ魔物食材を食べなくても生きるには事欠かなくなったとは言え、食べるだけでも強くなり、肉体的にも強く美しくなる魔物食材は需要の塊だ。

 探索者も国内で数を増やしている以上、需要があり、多くの後続生産者がいるのなら、自然と供給が追いつき、スーパーやコンビニでもよく見かけ、価格は下がるのが普通だ。

 にも関わらず魔物食材は今でもスーパーなどで見るのは珍しく、値も一般人には手が出しにくいところに未だにある。

 なんと言うことはない。ノアズ・アークが魔物の素材や食材を大量に買い占め、海外にも出すことで日本でも魔物の素材等が値下がりしないよう市場に介入し、操作していたのだ。

 彼等の人類を鍛錬すると言う意図の元、探索者は稼げる職であると言うイメージを壊さないようにするためか、あるいはまた違う意図があるのかは知らないが、いずれにせよノアズ・アークはここまでしてでも探索者人口をさらに増やしていく腹積もりらしい。

 そして、その意図を知り、今後もダンジョンについて聞きたい事があるならば来る様に言われていた秋彦達は、改めて聞かねばならない事を聞きに来たのである。


「さてさて、今日は何を聞きにきたのかな? 中級ダンジョンには潜ってくれたのだろう?」

「そうそう、その事で色々とな。まず随分思い切った方向転換して来たな、機械素材に銃まで出てくるとは思わなかったぜ」

「はっはっは、やはりその事かね。いや何、人間達が魔法から手を引いてちまちま作り上げていた物も捨てた物ではないと我ら一同再確認したのだよ。あの黒部君の弟子達が作ったあの機械。ちゃんと魔法力や魔力を検出して可視化していたのだもの。あれは驚いたよ!」


 科学とは、あらゆる現象、事象にルールを見出し、再現して利用する事だ。そしてそれは、魔法と言う未知にして異質、奇跡のような物であっても再現性があるなら、それらを研究する人間にとっては例外ではないらしい。

 第一にライゾン達は魔法、魔術こそ至高の力であり、科学なんて物は人間がその至高の力を、捨て去り忘れ去った事で生まれた代替的な下位互換の物だとして重要視してこなかった。世に魔法の力が出ればそれらは廃れ無くなるだろうと思っていた。

 だが実際はどうかというと、灯りは光魔法があっても未だに電気だし、湯を沸かすのは炎魔法ではなく電気ケトルかやかんをコンロに火を付ける。武器だって魔法力の籠る剣や投擲武器ではなく、効かないと分かってなお武器として銃が手放せない状態であったのだ。

 だが今まではそんな状況を自分達が築き上げて来た物に対する信頼という物にしがみ付く様として、適応力が無いと呆れていた。どうせああいうのは時代に取り残されていくだけだと思っていた。

 だが、緒方を始めとした黒部の弟子達がわずか数ヶ月で生み出した魔法力を検出、測定する測定器。あれがライゾン達の考えを大きく変えたのだ。魔術的アプローチ以外で魔力に対して計測や測定といった観測、つまり干渉を行う事など出来る訳が無いとタカを括っていたのだ。

 だがそれをやり遂げられた。あの計測機によって。

 となるとそれまでの科学に対する評価持論を改める必要が出てくるだろう。取るに足らないものと切って捨てるには些か早計だったらしい。ならばこちらからも今後魔法魔術を機械的に研究するに当たって必要になるかも知れない魔術を組み込んだ機械の素材を与え、それをその後どの様に使うのかは自由にさせ、魔法に対しこちらとは別方向のアプローチをさせてみようと言う結論に至ったのだ。


「まあそう言うわけであれら機械素材に関しては実はそれほどレシピ本は無いんだ。精々魔法力の籠った布などの防具型の装備品を始めとした駆け出しの探索者が使う程度の装備の量産に役立つ代物くらいかな」

「そっちも気になったのよね。量産を貴方達の方からさせていいのかしら? いくらそれほど強く無いと言っても魔法力の籠った装備なのよ?」

「ああ、それはこのレベルに至っている国ならばむしろ解禁しなければダメだという結論が出たからね」

「え?」

「こちらとしては職人というものはもっと凄いものを作れる様になればなるほどそちらに傾注すると思っていたのだよ。だが実際は違った。あの布装備メーカーのトップとも言えるカッソロの主力商品、何だと思う?」

「え? な、なんだろう? あたし達の衣装みたいな一点もの?」

「……戦闘力の向上が高い物?」

「やっぱり? 普通そう思うよね?」


 首を傾げた茜と桃子に嬉しそうに同意を求めるライゾン。


「違うわ。答えは入門ダンジョン向けの戦闘力の上がりは悪いけど安上がりなものよ」

「え、マジで?」

「ハァ〜……残念な事にそうなんだよねぇ」

「うっそ本当に?!」


 経営者として交流があるのかあるいは経営者目線なら簡単なのか即答したジュディの意外な正解に驚く優太。そして残念そうに頷くライゾン。


「な、なんで……?」

「決まってるじゃない、利益率が良いからよ。材料は安上がりだし、ある程度のレベルまでいった職人さんなら作業としても片手間で良いし、その割に高く売れるしで良い事づくめなのよね」

「そ、そうなのか……確かにいまだに上がり幅のよくない骨のアクセサリー納品するように母さんに頼まれるしなぁ」


 ジュディからの説明を受けて自分のやっている所との意外な共通点に気付く。


「さらに言うと新規の探索者の人口が増えていることもあって需要も相当あるのよ。その相乗効果で主力と言ったらもっぱら」

「そうなんだよなぁ……確かに良い稼ぎにはなるんだけどさぁ、こっちとしてはそんな低レベルなものでお金稼いで喜んで欲しく無いんだよ。職人なら、あげた腕でもっと凄いものを作って欲しいんだよ!」

「でもそれにしたって稼がない事には始まらないのよね、高級な素材をふんだんに使った一点物の装備って意外と利益率良く無いのよね。職人の腕を見せるには良いんだけど」

「ぐふ!」


 自分の力強い主張をジュディに無慈悲に返され崩れ落ちるライゾン。現実の前には理想はあまりにも無力であったのだ。


「だから! 今後は安くて利益の出るものは量産化出来るように機械化して、職人達には給料の心配をせず思う存分にハイレベルな装備や道具を作ってもらおうと言う話な訳なのだよ! 魔法石の量産化だってその一環なんだよ? 何が悲しくて私のお気に入りの英雄の卵を魔法石の生産なんかでダンジョンから遠ざけなきゃならないんだまったく!」

「ああ、魔法石の量産ってやっぱりそう言うところから来ているのか」

「そうだよ、無属性は確かにレアな属性だがまさかここまで頼りっぱなしになるとは」

「それは無属性が汎用性高いくせに習得率が低いのが悪い、俺のせいでは無い」

「それはそうだね。でもこればかりは資質だからね」


 溜息をつき、思い出したかの様に再び秋彦に向き直る。


「そうそうちょうど思い出した事があったんだ。せっかくこの場にいるんだし少し別の話をさせてもらおうか」


皆様からのご愛顧、誠に痛み入ります

これからも評価、ブックマーク、感想など、皆様の応援を糧に頑張って書いていきます。

次の更新も未定となりますが何卒ご理解とご協力をお願い致します。

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