第三百話 中級ダンジョン 再度報告
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「成程なぁ。またお前らとんでもない情報と物を持ってきてくれたなぁ……」
「あ、あはは……いや本当だよな」
優太の絶品羊肉料理を堪能した後、秋彦達は今日の所は冒険をこの辺にしておき、早々に探索者ギルド埼玉南部支店へ報告をしに行ったのである。
ギルドマスターの久夛良木はこの情報に嬉しさ半分困惑半分といった様子だ。
「南雲君よぉ……この情報また自分の首を絞めるって分かってんのか? ペネトレイトは今のところ君しか使えない魔法なんだぜ?」
「いや、まあわかっちゃいるんですが、報告しない訳にもいかんじゃないですか。後続の生存率にも繋がる事なんですし……」
「成程な、お前さんのその馬鹿正直な所嫌いじゃないぜ」
ため息をつきながらも秋彦の話を聞く久夛良木。確かに後続の生存率にかかわる事であるのは事実だ。無属性魔法ペネトレイトでしかわからない情報が存在すると言う事。そしてそれを知ってそれを把握することが出来れば探索者全体の生存率につながる。
でもそれは無属性魔法ペネトレイトを使用できる秋彦を除けば今の所魔法石による魔法でしかありえない。そしてそれを作成できるのもまた、無属性魔法使いである秋彦が最有力候補に挙げられるのは間違いないのだ。
そして秋彦はそれを理解した上で自分の最大の懸念である所を質問する。
「で……その……俺はこれをいくつ作ればいいんでしょう?」
「うーん……正直今ここで答える事は出来ねぇな」
「え? 何でです?」
てっきり千とか二千とか要求されると思って巨体を精一杯縮こまらせていた秋彦にとってはある意味以外ではある返答ではあった。
正直こんな報告を聞いた後であってはいくらあっても足りないだろうと思っていたからだ。とりあえず的な勢いで千を優に超える量を要求されてもおかしくないだろうと言う事を覚悟してはいたのだ。
「だってお前らは間違いなく全ギルドの中でもトップクラスの能力とカリスマ、そして知名度を誇ってるんだぜ? それをいくら必要だからって足止めさせていいのかっていう話は度々ギルドの中でも取り上げられていてだな。外国の無属性魔法使いを引き抜いて教育した方がまだ建設的じゃないのかっていう話もあったりしてな……」
久夛良木は先ほどよりもさらに深いため息をつきながら話してくれる。
確かに現状日本の探索者と言えばレインボーウィザーズが筆頭に上がる存在だ。絶対零度や浪速商人連合等各地の有力な戦力は数多くあれどレインボーウィザーズの知名度は今や全国区だ。
それをこのような形で足止めをするのは探索者全土の士気や国内の探索者を迎合するこの勢いにまで足止めをかけかねない。この話題はギルド内でも毎回起こりつつもその度になあなあで止まってしまい打開策が無い状態が続いていた。今までは。
久夛良木は少しだけ周りを見回し聞き耳を立てている連中がいないことを確かめ、声を低くしてそっと話を続ける。
「それにこれはまだ確定情報じゃないからオフレコなんだが……例の会社、分かるよな?」
「え? 例の会社っつったら、あの?」
「そう、あの会社だ。あれが最近魔法石のコピー技術とかいうのを提案しだしてるっていう噂があってな……」
「……え?!」
「声がでかい」
「あ、す、すみません……」
思わず大きな声が出る秋彦に静かに、しかし確実に窘める。とりあえずギルドマスターが喋った内容を大声で言う前に止められたのでとりあえずセーフと言った所だ。
「その技術自体は実はすでに確立していて、後は特許関連で発表が遅れていると言う噂も聞く。まあ今後の企業の出方次第という気はするが、意外と近いうちに君を魔法石の為だけに足止めする様な事は今後無くなるかもしれないよ?」
「へ、へぇ……そりゃ個人的には非常にありがたいこってすな」
驚き半分ではある物の秋彦個人の思惑としては皮肉でもなんでもない素直な感想だ。
何せ実は魔法石の生成はなかなか大変なのである。魔筆を生み出し魔石に魔法文字を刻む。たったそれだけの作業と思うかもしれないがそれが中々キツイ。
魔筆は己の魔法力で形成されるものであり、それで魔法文字を刻み続ける。刻めば刻むほど魔法力は大きく失われるし、それでなくても同じ文言をひたすら刻み続けると言うのは精神力を削られる物である。
かつて幾度となく魔法石を作ってきた事のある秋彦からしたらそれは思い知っていることであるし、苦労している故に今回ペネトレイトの報告では魔法石に関して戦々恐々としていたのだ。嬉しくない訳がない。
「まあ、とりあえずこっちでまた改めて議論はする。南雲君は両腕を大事にしながら探索活動を頑張ってくれ」
「わ、分かりました……」
両腕を大事にしろと言うのは要するにいつでも加工作業に入れるようにはして置けと言うお達しなのだろうか。
なんにせよ報告は終わった物の今すぐに大量の魔法石を要求される事は無い事にひとまず安堵した。
………………………………
「しっかし……ライゾンも何考えてんだろうな。今まで手作り手作業の俺ら加工業者的な物を推してたと思ったら急にその真逆にあるような機械工業的な物に手を出してきやがって……」
「ええ、それちょっと気になったかも。それに身内びいきかもしれないけど産業革命って本家本元は私の祖国のはずなのに、なんで日本でやり始めようと思ったのかしら?」
報告を無事終えて、ちょっと気の重さが軽くなった帰り道。いつものようにテレポテーションで帰っても良かったが、今日は少し話もあるので歩いて帰る事にした。
「今後ライゾン達がダンジョン関連をどうするつもりなのかな?」
「……いきなり機械やら魔法石の量産化とか、また世間が荒れそうな内容がダンジョンから出てきた。法の整備もさらに考え直す必要が出て来るかもしれない。そこは気にしておきたい」
出て来るのはやはりダンジョンから出てきたアイテムの話だ。そしてそこから見えてくるライゾン達迷宮の仕掛け人、正確には仕掛けた組織とでもいうべきか。
彼らは中級ダンジョンに入って今まで剣と盾で迷宮に挑む迷宮業界に機械素材という機械の導入を示唆する素材が手に入った。
そして今日は久夛良木から魔法石の量産化の噂を聞いた。間違いなく迷宮業界に工業化を導入する予定なのは間違いないだろう。
今までの方針からかなり転換する動きと言えるだろう。一体彼らがどういうつもりで今回の方針に舵を切ったのか。非常に気になる所である。
「ちょっと話を聞きに行きたい所ね。銃の事もあるし」
ジュディの言葉に全員が頷く。
ダンジョンに現れた新しい武器群である銃についても聞かねばならないだろう。無視するにはあまりにも強い存在だ。
「じゃあ明日あたりにでも行くか。【ノアズアーク・カンパニー】に……」
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