第二百九十九話 中級ダンジョン 一階層目ボス 戦後処理 結界術
累計PV数584万突破、評価者数840人突破、総合評価16800pt突破いたしました!
これも皆さまからのご愛顧の賜物です。
いつもいつもお待たせしていると言うのに感謝しかありません。
これからもりあダンをよろしくお願いいたします!
宝箱の中身チェックは続く。次に宝箱から出てきた物は……
本だ。それもただの本ではない。秋彦は手に取った瞬間に即座に理解した。
「あ、これレシピ本だ!」
「え、本当に?! 中級ダンジョンで出て来るレシピ本!?」
「……どのスキルに該当するレシピ本?」
「これは……【これから始める結界術】だと……?」
宝箱に入っていたレシピにはタイトルにそう書かれていた。試しに本の中を見てみる。
中に書いてある内容を要約すると、この本に書かれている魔法陣や触媒としての素材アイテムを使用し、詠唱を行う事によって【結界】という自分や味方、そして敵に対して様々な影響を及ぼす空間を生み出す術と紹介されている。
影響が強大である程永続時間は短く、逆に影響が微弱な物は持続性に優れている特性がある様だ。
「俺らが知ってる環境結界とはまた別物って事なのかな?」
「……さっき見たページに環境結界について書かれた項目があった」
茜はすぐに流し読みしていた秋彦だったが茜は秋彦からレシピ本を取り上げ環境結界について言及のある項目を見せる。
曰く、環境結界とは環境を構築するという意味で最も原始的な結界であり、名を変え定義を変え、今も尚変化と進化を続ける最古にして最新の結界術であるとの事。
何もない荒野とて家がいくつかあれば村になり、街になるし、木が何本も生えていれば林になり、森になるように、そこにある物が環境を変化させそれにより生まれる機能であり力こそが環境結界の源流とされる。
また、その原始的さ故に今も尚、人間社会に自然とある物であり、世界に魔法力が再顕現した事でその力が極端に増幅されたもの、それが環境結界であるらしい。
故に結界術としてみたところ効果自体は地方都市奪還作戦の際に遭遇したような異常な環境が異常な力を生んだようなケースを除き、効果自体はあまり強力ではない物の、環境と言うだけあって非常に持続力に長けた結界であるとされている。
またこの環境結界を技術として昇華させた北海道ギルドのギルドマスター枝野公人についてはっきり言及されていたのには驚いた。
「……いずれにしろ、これは後衛向けの能力。先に私と優が覚える。こんな便利な物覚えない訳がない」
「あ、ああそう。わかった。まあそれならそれでいいけど。ちゃんと後で俺にも回してくれよ?」
「……勿論、独り占めはしない」
「私も興味あるわ、ある程度のレベルに行ったら私にも貸してね?」
「……大丈夫、分かっている」
秋彦から取り上げたレシピ本を満足げに自分のマジックバッグに仕舞う。そして宝箱チェックに戻る。
次に出てきたのは袋だ。中には砂らしきものが入っているらしく、袋に触れると砂と砂がこすり合わさる様な、さらさらという音がする。
袋の中を見て見ると予想通り砂らしきものが入っている。中身を見て見ると、砂らしきものはオレンジ色をしており、砂と言うよりも粉のような印象を受けた。
これが何なのか見当もつかなかったこともあってさっさとペネトレイト込みでアナライズをした結果、次のように出た。
【魔力の粉(火)】
魔力を粉としたもの。体に振りかければ炎魔法の能力が一時的に上昇し、環境結界構築のための触媒にもなる。炎属性付与の為の素材として非常に優秀。
驚きはする物の比較的冷静さを保ちつつ話をする。
「……本当かな?」
「俺のアナライズで出た事だぜ? 間違いないさ」
「……しかしこれは、想像よりも凄い物が出た気がする」
「奇遇だな。それは俺も間違いなくそう思っていたぜ」
結界術、そんなものが世に放たれれば世界はますますそれらを競い合うように、また奪い合うように手に入れようとするのは容易に想像がつくと言う物だ。
なにせ枝野が世にその存在を顕現させてから今まで、その存在を考慮せずにいる場所などほとんどないと言っていいだろう程だからだ。
今現在枝野が考案し、その存在を確かにしてから都市部の復興に必ず環境結界の概念が入り込み、魔物の出現や出現する魔物の種類の限定化等、都市に限らず防衛の観点において考慮せずにはいられないような概念となって世に存在を示している。
元々風水といった物を配置する際の物の良し悪しに対する概念等が強く信仰されていた風土である日本においては、環境結界という概念の顕現によってより強く存在を台頭してきた物と結び付けて、風水関連のオカルト知識概念によって環境結界がより深く考察され、魔物等の脅威から都市などを防衛する上で非常に重要視する姿勢が多く見受けられていた。
そのような中で、このような代物が世に現れたら更に世の中はこれをより重要視し世の中に更に必要とされる代物であるのはほぼ間違いない。
秋彦達はまたもやとんでもない代物をいきなり引き当ててしまった事は最早間違いないと言えるだろう。
「う、うおおお……これはまたとんでもない物を手に入れちまったもんだなぁ……」
「……環境結界だけじゃない、あらゆる防衛の要になる可能性となる代物の触媒……これは見た目や存在以上に凄まじい代物。その存在がちゃんとした認識をもって世に放たれたらいったいどれほどの価値と効果を持つ物であるか、もはや想像がつかないレベル」
「え、えええ……これは、ちょっと……どうしたらいいのかしら……?」
流石にジュディと茜もこれには声が震えている。流石に頭がそれぞれそれぞれの様相で混乱しているらしい。
「と、取り合えず、これはあくまで結界術とやらを習得しないと本来の用途や能力は引き出せねーとみていい。ならまずはギルドマスターと相談だな、久夛良木さん」
「そ、そうね。それが一番だと思うわ。場合によってはこれから始める結界術の売買も視野に入れる必要があるかもしれないけど……」
「……売買は私たちが実際に習得してから」
「お、おおう。まあそれでいいけどさ」
とりあえずこれから始める結界術を始めとした結界術関連は建設関係や市の都市企画部なんかにも売れるかもしれない。だがまだそれは今ではない。
中級ダンジョン第1階層のボスレベルで出て来るものと言う事を考えれば遅かれ早かれ世に出て来るのは確かだろう。ならばそれをやるのは自分達でなくてもいいかもしれない。どのみちこれを最初に引き当ててギルドに報告したと言う名誉は後進に譲るとしよう。
自分達はこれをしばらく塩漬けにする。
「皆―! 解体と料理出来たよー!」
「おーう! ……とりあえず小難しい話はもう後でいいか」
「そうね、なんか私もお腹すいてきちゃった」
「……いい匂い」
そう決めたタイミングで優太が声を掛けてきた。
皆様からのご愛顧、誠に痛み入ります
これからも評価、ブックマーク、感想など、皆様の応援を糧に頑張って書いていきます。
次の更新も未定となりますが何卒ご理解とご協力をお願い致します。




