第二百八十話 中級ダンジョン 完成
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これも皆さまからのご愛顧の賜物です。
これからもりあダンをよろしくお願いいたします!
四つ目の怨呪骨の加工を終え、大きくため息をつく。
作業工程としては先ほどまでの工程を計四回繰り返した感じではある物の、これが一番面倒であることを考えると、つく息も大きくなると言う物だ。
後の作業なんて少ししかないことを考えれば、事実上ほぼ終わったような物である。
「さてっと、これでとりあえず材料加工の峠は越えたな」
「お、終わったのか!」
「まああと一息って所だ。四つとも上手く怨呪骨を曲げたら円形の四分の一くらいの形になったじゃん? あとはこれを恨みの糸で縫い合わせて俺の魔法力でととのえたら完成って所だ」
「おお、結構後半まで来てたんだな!」
行程が後半まですでに行っていたことに笑屋が驚く。
「まー、楽な工程ではないけどね。ま、レベル20にもなりゃこんなもんさ」
どことなく自慢気に答える秋彦。
「これは勿論チームの盾役であるジュディに装備してもらうからな。拒否権はないと思ってくれ。俺はチームでは補助と遊撃の役回りだからな。チームの盾役として状態異常の対策もしっかりしてもらいたい」
「勿論拒む理由なんてないわ。チームの盾役として状態異常を受ける機会も多いはずだもの。しっかり庇っていくわよ!」
鼻息荒く意気込みを語るジュディ、新たに手に入る凄まじい装飾品にテンションが上がり切っているらしい。
そうこう言っていると悲しみの水泡がビーカーから無くなり加工された怨呪骨が4つ残るだけとなった。
ビーカーの中にある怨呪骨は全て薄く発光しており、それぞれ赤、青、黄、緑の四色に光っている。それがまるで脈を打つかのように点滅しているのだ。綺麗なようだが見ていてどこか不安にさせるかのような雰囲気を醸し出している。
「よし、じゃあ最終工程だな……」
そういって秋彦は針を取り出した。ぱっと見は裁縫針のようなのだが普通の裁縫針と違いかなり太い、もはや釘の打ち付ける部分に紐を通す穴が開いただけのようにさえ見える。ようである。
そんな太い針に針の大きさと相対的に細すぎるようにも見える恨みの糸を取りつける。
そしてそのまま秋彦は骨に対して針を差し込み、まるで布地を縫い付けるかのようにブスブスと針で穴をあけ、糸を通していく。
「ええ……骨ってあんなに柔らかい物なの……?」
「呪骨って結構硬いわよね……その上位素材である怨呪骨はもっと硬いはずなのに……」
事も無げに怨呪骨と怨呪骨を縫い合わせていく様子にビューティフルドリーマーの面々は戦慄さえ覚えている。レインボーウィザーズとモンスターキラーズにとっても衝撃的な内容ではあるが、もうこの程度でいちいち驚かない。そうでないときりがないし。
なので優太と桃子はとりあえず気になった所に突っ込みを入れておく事にした。
「ねぇ秋彦、開けた穴に対して糸細すぎない?」
「後できっちりきつく縛るにしてもちょっとこれってどうなの?」
秋彦が針であけた穴は明らかに恨みの糸の細さにあっていない。この大きさでは恨みの糸を何重にも束ねなければ穴の大きさに釣り合わないはずなのだが。
「ああ? いいんだよそれは。これも計算の内さね」
「え?」
「いいからいいから、まあ見とけって」
二人の質問に逆に疑問が湧きそうな答えを返し、ササッとまずは焼死体の怨呪骨と凍死体の怨呪骨を縫い合わせる。骨同士を縫い合わせ、糸を結んで余計な部分を歯で噛み千切る。そして一言。
「恨みの糸は呪いの糸。うけた呪いを吸い取り恨みは力を増す。さあ、怨呪骨の呪いを吸い、強くなれ!」
言葉に反応したのかは不明だが、縫い合わせた糸がその言葉の後にまるで風船に空気を入れたかのようにむくむくと膨張を始め、細い一本の糸だった恨みの糸が靴ひものような大きさになっていく。
それは秋彦が開けた穴にちょうどいい位の大きさで収まり、細い糸だった時からすでにぴんと張られていた糸は膨張したことによって更に強力に締め付けられ、がっちりと縫い留められていた。
「うわ!! 糸が膨らんだ?!」
「これが恨みの糸の特性だ。これは放出される闇の魔法力を吸って太く硬くなる性質があるのさ」
「そ、そうなんだ……」
興味深げに見つめる優太と桃子。だが、微妙そうな面持ちをして何か言いたげな顔をしている真崎。
秋彦には真崎が言いたそうにしていることをなんとなく察したので、言われる前に先手を取っていってやる事にした。
「真崎よぉ、只太くなるだけならもっといい糸使えばいいじゃんって思ったろ?」
「え、い、いや僕は……」
「取り繕わなくていいから」
「ん……まあ、確かに。そう思った」
その回答に満足げに頷く秋彦。
「だろうな。でもこの糸じゃないとダメな理由がある訳さ」
「ほう、それはどういった理由なんだい?」
「一言で言うと、安全面を考慮した結果なんだわ」
「安全面を考慮した結果?」
秋彦は真崎のオウム返しの言葉に頷いて肯定の意を示す。
「さっきも言った通り恨みの糸は放出される闇の魔法力を吸って太く硬くなる性質がある」
「うん聞いた」
これは先ほどまでのおさらいである。秋彦は続ける。
「そして闇の魔法力って元々闇属性魔法使いでない者が魔道具とかで使用し続けると、たまに心を病んでしまう人がいるっていうのは?」
「僕は闇属性魔法使いだよ、常識さ」
これも闇魔法使いにとっては常識だ。闇属性の魔法力が大量にこもる道具は使用注意の品ばかりだ。うかつに使うと心は闇に飲まれ、凶行を起こすきっかけとなる。
心を蝕む性質が多分にある闇属性の魔法力が籠った道具は第二種危険迷宮収集物として使用が制限されているものが多く、場合によっては所持にも制限がかかる【第一種危険迷宮収集物】にも指定される事からもその危険度がうかがえる。
「じゃあ、今恨みの糸が太く硬くなった事について一言お願いします」
「え……あ!」
真崎、ここでようやく気付く。
放出される闇の魔法力を吸って、太く硬くなる性質がある恨みの糸が太く硬くなった。それはつまり吸い取れる闇属性の魔法力があったと言う事だ。ようやく理解できた。
「つまりこの糸は、過剰に放出される闇属性の魔法力の受け皿にするために採用した物なんだね?」
「ご名答。つけている内に心を蝕まれて妙な行動されない為にも必要なんだよね」
言いながら今度は風化した怨呪骨と感電死体の怨呪骨を先ほどの要領で縫い合わせる。
そして二つ縫い合わせたものを更に縫い合わせる。そうして四分の一の縁が半円形となり、円形となったのだ。つまり……
「よーしよしよし、状態異常防御の装飾品、完成だ!」
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次の投稿は4月2日午前0時予定です。
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