第二百七十三話 中級ダンジョン テスト明け
累計PV数476万突破しました!
これも皆さまからのご愛顧の賜物です。
これからもりあダンをよろしくお願いいたします!
「てー事でとりあえず俺らが探索者活動を停止させてもギルドには話行ってるってことになったんで。そこんところ宜しくな」
『『『はーい!』』』
現在秋彦が老夫婦から買い取った家にあるリビング。平屋のこの家のリビングは一番奥にあり、一番大きいテレビもそこにある。買い取った際に新調した薄型にしてPCに接続して大型のディスプレイとしても扱える品だ。つい最近レインボーウィザーズ全員で自分達が出演した番組を一緒に視聴したのもこの部屋である。
秋彦とジュディはそこからPCを通してレインボーウィザーズのメンバーに連絡を取っている。
テレビにカメラとマイクはないのでそこら辺は流石にPC側から接続しているものだが十分使い勝手がいい。
その分相応にいい値段がする代物ではある物の、探索者としての活動で得た金を考えれば大したことはない。
机代わりのこたつにキーボードとマウスにマイクが置いてあり、黒いソファーに座って猫背になりながらキーボードを叩きつつ連絡を取っている。
『ていうかわざわざ話しに行ったんだ。律儀だなぁ秋ってば』
「まあ必要なかったかもしれないといやそうなんだが、一応ギルドにもいきましたよって話ね」
『……話のネタにはなるから別にいい』
『だねー、やっぱりなんだかんだ人から最近の活動は聞かれるし、活動報告って必要だもんね』
楽しそうに話をする優太と茜。暢気なものだと思うが、この暢気でいられる状況が束の間の物だからこそ、秋彦もジュディも思わず笑みがこぼれてしまう。
「じゃあ今日の活動内容は以上だ。今後はテスト勉強に注力する事。探索者でもない一般人相手に後れ取ったとあったら今後の探索者活動にも悪影響になりかねないからな」
………………………………
そうしてレインボーウィザーズ達を始めとした学生探索者達がテスト勉強に対して最後の追い込みを強いられる中、来たる12月某日、その日はついに訪れた。
そう、それはつまり、中級ダンジョンの開放である。
今までの魔法素材や魔物素材等を越えた物、ダンジョンの宝箱から出るであろうお宝等、ダンジョンの中にあるであろう物を考えると期待に胸が膨らむと言う物である。
しかし学生探索者は運悪く期末テスト期間に引っかかってしまっていた。だがそんな中でもテストをすっぽかしてダンジョンに入っていこうとする学生探索者は意外にも少数派だった。
勿論当日はテレビでも大々的に放送されて、ダンジョンから戻ってくる探索者達を報道陣が囲んだりと、かなりのお祭り騒ぎとなっていたにも拘わらずである。
その理由は学校の意向を無視する事で学校との衝突を嫌ったともいえるし、先に他の探索者が持ち帰った情報を元に傾向と対策を立てる為ともいえるし、何より今までの慣習的に学校やテストと言った、ある意味自分達の日常にあった平和の一幕にあった存在を無視できなかったと言うべきだろう。
今テスト期間なんていう物が設けられているのはそれだけ今の日本に平穏が戻った証なのだ。
それをわざわざ投げ捨てることは自ら平穏を投げ捨て、血みどろの闘争を自らが渇望しているような物だ。
日常があってこそのダンジョンと言う非日常であったものに飛び込めると言う物だ。そこをはき違えてはいけない。どうやら学生探索者達はそこら辺の分別をしっかり付けられていたようだ。ギルドによる厳しい審査の甲斐があったと言う事だ。
とは言え一定数学生は自らテストと言う日常を投げ捨て中級ダンジョンに入り込んだ連中もおり、そのあたりを今後どうするかは今後の課題と言えるだろう。
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「……やめ! 筆記用具を置け! 答案を後ろから前に送って回収!」
緊張感漂う教室に弛緩した空気が漂う。テストに挑む生徒達は悲壮、あるいは安堵のため息をついて先生の指示に従う。
今日はテスト週間最終日、最後のテストである。つまり今のテストを以ってテスト週間におけるすべての日程は終わり、学生にとって緊張の、あるいは恐怖の日々は終わりを迎えた訳だ。
尤も、採点後を考えると恐怖の日々はまだ終わっていないともいえるのだが、ひとまず緊張からは解放されたと言えるだろう。
「あー、やっと終わった。長いような短いような、だな」
「だねー、でもこれで俺らは大手を振ってダンジョンに行けるってもんさ」
「ホント、これこそ自分達が求めてきた日常とはいえ、かなり歯がゆいものがあったよね」
解放感に思わず声を上げるとモンスターキラーズの笑屋と真崎が声を掛けてきた。
「でも、やっぱりあの馬鹿共我慢できなかったな……」
そういって笑屋は白けた様な目線をとある場所にある机と椅子に向ける。
向けた先にある机と椅子には人はいなかった。つまりテストをすっぽかした馬鹿共がこのクラスにいたのである。
その探索者チームは当然クルーエルミソロジーの三人である。テスト期間中の探索活動を禁止されたことに不満の声を上げた三人である。
「だねぇ、これって巡り巡って俺らが迷惑することになるんだけどね!」
「ていうか自分達の首も一緒に絞めてることがわかんねーのかね!」
真崎はともかく笑屋まであからさまに怒気を孕んだ声を出している。どうやらかなりクルーエルミソロジーの三人に対して怒り心頭なようだ。
「本当にさっさと痛い目見りゃいいのに!」
「いっそさっさとし」
「そこまでだ、それ以上はダメだぞ真崎」
不穏なことを言いだそうとした真崎を思わず制止する。いくら馬鹿なことをやっている連中とは言え、言っていい事と悪いことがある。
「しばらくはテスト明けってことで授業もないんだし、その間に広げられた差を追いつかせようぜ、今はそっちの方が建設的だ。あいつらの処分は学校が下すだろ」
「そ……うだね……ごめん」
「いいんだよ、気持ちは分かるしな」
うつむく真崎の頭を思わずポンポンと優しく叩く。
「つっても折角特攻してくれた人たちがいるんだ。まずは情報収集から始めようか」
「そうだね、アッキーも一緒にどう?」
「奇遇だな、俺らもそのつもり」
「オッケー、久しぶりに三チーム合同?」
「ビューティフルドリーマーも動向気にしてるだろうし、そっちも誘うか」
「オッケー! 久しぶりの勢ぞろいだなぁ!」
気分一新、切り替えて明るく振舞う笑屋。こういう所は流石のムードメーカーである。こうして午後は中級ダンジョンの難易度及び情報収集となるのであった。
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次の投稿は3月12日午前0時予定です。
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