第二百七十二話 迫るその時 報告
累計PV数474万突破しました!
これも皆さまからのご愛顧の賜物です。
これからもりあダンをよろしくお願いいたします!
「という訳で、申し訳ないのですけれども宜しくお願い致します」
「はっはっは、何かと思えばそんなことか。そんなのわざわざ許可を取ることじゃねーのに、律儀だなぁ」
「自惚れかもしれませんけど、自分達の知名度考えたら一言断り位いるかなーと思いまして」
「この時期に学生探索者が一斉に活動を停止させるのは前回の中間テストで分かっていることだからな。あの時は流石に何事かと思ったけど、よく考えてみれば当たり前だったしな!」
「そ、そうですか……」
豪快に笑い飛ばしながら秋彦達の一定時間の活動停止の連絡を聞く埼玉南部ギルドマスター。色黒の肌と見事に光る肌の色と同じく黒い頭が特徴の筋肉質の中年男性だ。
彼の名は久夛良木 凱羅。最近日本探索者ギルド連盟によって選出されたギルドマスター達の一人である。いわゆる【第二陣ギルドマスター】である。【第一陣ギルドマスター】と言える雨宮達とは違い人事マネジメントや経営マネジメントに優れ、探索者経験がある程度ある人々の中から希望者にその役職を与えられる、苦労も多いが大変名誉な役職である。
第一陣ギルドマスターがカリスマ性に優れ、論理的な管理が苦手な人々が多い中で、彼ら第二陣ギルドマスターはマネジメント能力に長けた人材が多いと言える。
「まあ確かに、中級ダンジョン解禁と言う絶好のタイミングに君たちがいないのは残念だし痛手ではあるがな? だがしかしそれ以上に君たち学生の本分は学業なんだからそれに専念するのは当然。寧ろ俺が預かる埼玉南部ギルドにおいてはテスト一週間前からテスト期間中は学生探索者の活動は停止にしたっていい位なんだしな」
「そうでしたのね。それなら……いわゆる渡りに船、という訳ですわね」
とりあえずテスト一週間前とテスト期間中に探索者活動を停止させても問題ないらしい。と言うか中間テストでも多くの学生探索者が探索者活動を停止していたようだ。
「大体そうでないとうちのせがれもテストなんてほっぽってダンジョン行きそうだしな……あの大馬鹿は探索者になったおかげで頭悪くないのに、好奇心ばっかり先走りやがって……」
途中から久夛良木はうつむいてぶつぶつと愚痴を言い始めてしまった。
……どうやら変な地雷を踏んでしまったらしい。久夛良木さんからどす黒いオーラが幻視できる。
どうにもこうにも、いくらマネジメントに優れた人材としてギルドマスターを任された人材であっても、教育、増して自分の子供に関してはなかなか難しく、頭の痛い問題である様だ。
「えっと、久夛良木さん?」
「え、あ、ああすまない。うちのせがれの事を考えてしまっていたんだ」
「やっぱり息子さんも探索者としてダンジョンの方が好きそうなんですの?」
「ええ、困ったもんでなぁ。うちのせがれは当時タイミング的にも実力的にも地方都市奪還作戦には参加できなかったんだが、そのせいか余計に拗らせちまっていて……」
頭を抱えてため息をつく久夛良木。どうやら久夛良木の息子さんは地方都市奪還作戦に参加できなかったことを「英雄になり損ねた」と思ってしまったらしく、強さと名声に対して渇望を抱くようになってしまったらしい。
経験した身としては、正直参加せずに済んでよかったとも、あんなのは幸運にも勝てただけだともいえるのだが、参加したくても参加条件を満たせず参加できなかった探索者達からしたらそうではないらしい。
「あらあら、たった一度の好機を逃したっていうのは尾を引く問題になりそうですからね……経験した身からすれば、あんなギリギリの戦闘に無理に参加する物ではないと思うのですけれど」
「本当にそうなんだよ……あの時の地方都市奪還作戦に参加した探索者を見ると、せめてあと一か月でも鍛錬期間を設けるなりする必要自体があったようにも見えるし、結果論ではあるんだが、作戦自体が少々早計だったようにも見えるんだが、あの奇跡の大逆転勝利的な物は、若い者にはそそる物があったらしくてなぁ……」
そういうと先ほどより盛大にため息をつく。
確かにあの決着あの幕引きはドラマチックであったとはいえるだろう。事実秋彦をCMに引っ張り出そうとする企業や団体は大体秋彦の天魔返をCMに取り入れている。
それは単純に暗雲漂う未来を視覚的にもわかりやすく切り開く様な姿が宣伝する側にとって大きなPR的な意識になったのだろうし、あの一撃にてグレイトアンデッドドラゴンとの戦闘に決着させた一撃と言う事で印象的にもなったのだろう。
だが地方都市奪還作戦に参加出来なかった探索者にとってはあの一撃は「英雄たる象徴」と言っても過言ではない。
あの時の天魔返は、追い詰められた最高戦力である探索者が未知の能力に覚醒、そして神々しい一撃を以ってとどめを刺す。
そんなワンシーン、ゲームならCGでの演出が入っているところだろうし漫画なら見開きページで派手に描かれているような一面である。
参加出来なかった人たちからすれば「なぜあの場に、たとえ吹き飛ばされていただけのモブとしてでも自分達がいなかったのか」と歯噛みする様な一面だったのだろう。
地方都市奪還作戦に参加出来そうで出来なかった探索者が悔しがり、力に対してこじらせる原因の一端ともいえるだろう。
「ともかくレインボーウィザーズがその期間中休むってんなら俺もせがれを止めやすいからありがたい。まあしばらくは探索者稼業は一旦忘れてテスト勉強に集中してくれ!」
皆様からのご愛顧、誠に痛み入ります。
これからも評価、ブックマーク、感想など、皆様の応援を糧に頑張って書いていきます。
次の投稿は3月9日午前0時予定です。
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