幕間二 舞薗茜 政治事情
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幕間二回目です。最低限ここら辺の事は書いた方がいいと思いつつ、本編で触れるのは難しい箇所を書いてみました。
次からはまた秋彦達の視点で本編をお送りします。
「……以上が私の見解。そしてこれからとるべき対応」
「そうか……」
武家屋敷を彷彿とさせる日本式の家屋。その屋敷で机をはさんで対峙する書生を思わせる和服を着た初老の男性、そして着物姿のジュディのチームメイト。舞薗茜だ。
「茜、お前が見せた力、私が見た魔物、そしてこの動画。そのすべてがお前の報告した内容と合っていると思う。しかし……これは早急に法整備を行わなければならんな。ダンジョン法……いや、迷宮探索法とでもいうべきか」
初老の男性は舞薗 巌、舞薗茜の父親であり、国会議員であり、有力な政治家だ。
「今のこの国の自衛隊や警察では、ダンジョンをどうにかすることはできない。入り口を塞いでも塞いだものを破ってでも、魔物はあふれ出ると思われる」
「ああ、そうだな。実はダンジョンに対して一つの実験が行われたのだ」
実験内容はダンジョンに対し、ロケット弾や戦車砲を打ち込み、ダンジョンの破壊を試したのだ。結果は、赤く薄い膜のようなものが現れ、それらを防ぎ切ったようだ。これは今はまだ政府の関係者や一部の政治家しか知られていない。この動画は、ダンジョンの破壊はほぼ不可能であると思われる根拠になる。
外国では核爆弾をもって都市ごと木っ端みじんにしようという話も上がっているそうだが、正直失敗に終わるとしか思えないそうだ。
「破壊することは事実上不可能。だが、放置はできん。またぞろ氾濫など起こったらたまったものではない。今回の事で氾濫してもごく一部の対処できる者たちが、魔法やらで吹き飛ばして終わりという訳では無いことがわかってしまった。あの、ええっと、キメラゴブリン……だったか?」
「フィールドキメラゴブリン。私たちはあのフィールドキメラゴブリンと相対して思い知った。あんなものが生まれる可能性のある氾濫は早々めったに起こっていい事ではない」
「うむ。そのとおりだ」
「銃刀法の改正は絶対。鳥獣保護法の見直し、あの魔物をどう扱うか。狩猟法も見ておく必要があるかも」
「うむ。元の法は変えないとしても、迷宮探索法を新たに制定し、その中で探索者と認められた者に関してはこれらの法の適用外とすべきだろうな」
「将来的にはダンジョンで見つかったものを売買することも考えられる。税率や、商業に関する規定も迷宮探索法の中に折り込む?」
ふむ……と巌は難しい顔をして首をひねる。今の所入門ダンジョンで出てくるのはマジックポーションや武器そして謎の金のコインといったものだ。
だが、マジックポーションも、すでに政府の研究機関に提出、解析したところあり得ない成分でありえない効果が生み出されており、研究者、研究機関は大混乱。
更に謎の金のコインもよくよく調べてみると、黄金の様で黄金ではない、未知の鉱物である事がわかった。これは簡単に調べただけでも、今現在最高の銀の電気の伝導性を超え、これだけでも利用価値がある上に、研究によっては新たな発見もあると考えられる。
おまけにフィールドキメラゴブリンの死体を持ち帰り、検視した結果。信じられないことに作り物ではなく、一つの生命体であることを認めざるを得ず、さらなる研究が進んでいる。
例えば血だ。この魔物を仕留めたメンバーのうちの一人、直接的に殴りあった青年が、偽装の為の衣装に大量の生き血を被った。
その結果、ただの布の衣装であった物は、布の服のように軽く、鉄の鎧の様に固く、敵の攻撃をはじく摩訶不思議な防具へと変貌したという。
そして後から、魔物の血を布に付けても、防具にはならなかったという。
そのメカニズムを解明すべく、その青年の衣装の切れ端は重要なサンプルとして、研究所に収められているという。
このように今日に至るまでにダンジョンで生まれた物だけであっても、既存の常識を根底から崩し、様々な可能性を感じさせるものを残した。
だが、そのせいで研究機関は日々デスマーチ状態だという。が、いずれにせよ、ダンジョンから生まれる物だけで、産業が生まれるのはもはや避けられないだろう。それを踏まえると……
「そうせざるをえまい。今、ほんの少しのダンジョン産の代物でさえ、研究者を騒がせるには十分だ。もし、さらなる産業の芽や、新しいエネルギー資源が見つかれば」
「この国は更に栄える。諸外国に煮え湯を飲まされることもなくなるかも」
「そうだ。いいか茜、この世界は間違いなく変化の真っただ中にある。お前は幸運なことにこの変化の最先端にいる。これはこの国が再び強国として諸外国に存在感を示せるか否かの瀬戸際だ」
「はい」
「一人の親として、このようなことを願うのはおかしな話だ。浅ましい事なのだろう。だが、それでも言うぞ。お前にはしばらく探索者を続け、ダンジョンが生み出す様々なものの調査を命じる。危険なのは重々承知だが、必要なことだ。恨むなら恨め」
「恨まない。私自身も興味がある。それに、いずれ政治家になる身。ダンジョン経験者の目線からダンジョンの法改正を公約に掲げ、後に行えれば、探索者の支援者の獲得にもつながる」
「……それでこそ我が娘だ」
娘と父は机越しに固く手を握る。
その目に宿るのは名誉か、打算か。あるいは使命か、欲望か。
皆様からのご愛顧、誠に痛み入ります。
これからも頑張っていきますので、ぜひ評価感想の方を頂戴したく思います。そうしたら私はもっと頑張って作品を展開できますので。これからもどうぞ、よろしくお願いいたします!




