第二百七十話 迫るその時 関東ギルド南埼玉支点
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これも皆さまからのご愛顧の賜物です。
これからもりあダンをよろしくお願いいたします!
次の日、授業が終わった秋彦は一人電車に揺られていた。
最近の移動はもっぱらテレポテーションに任せっきりだったがたまにはかつてのように電車に揺られるのも悪くない。スマホで最近めっきりしなくなったソシャゲの周回もはかどるし。
「まあ、これはこれで得難い時間だよな」
そう思いとりあえず電車に揺られる。
向かう先は自宅の最寄り駅である駅から二駅先の駅。東京の玄関口。ここを超えたら東京に入る秋彦が普段乗る電車における埼玉最後の駅だ。
自宅の最寄り駅なら大して遠くもない距離だが、秋彦の通う学校からは乗り換えが発生するのでそこそこ時間がかかる。
テレポテーションを使えばあっという間の距離をあえて電車に揺られているのは、正直あまり喜び勇んでいきたくないと言う気持ちが強いからだ。
何せこれから行くのは【関東ギルド埼玉南部支店】だからだ。最近関東ギルドの埼玉における支店の一つとして設立され、ついこの間ようやく完成し稼働が始まったばかりのギルドである。
秋彦にとってはテレポテーションのおかげで距離はさほど問題にはならない。だが雨宮から「これからは積極的にこっちのギルドを利用してほしい!」と言われた以上断る理由はない。
正直に言えば通い慣れてギルドの受付とも顔見知りである【関東ギルド新宿本店】に通いたいのは確かだったのだが。
「まあ埼玉に支店があるならそっちに通うのが道理なのかもしれないけどな」
ぽつりとつぶやく秋彦。
そんなことを考えていたらそろそろ降りる頃合いである。スマホをポケットにしまい、マハに挟んでいたバッグを立ち上がって持ち、そそくさとドアの前に向かう。
電車から降りて欠伸と伸びを一回づつ。ノンストップで目的地にたどり着ける秋彦において久々の暇な時間帯だった。ついつい欠伸が出てしまうと言う物である。
「この駅も家から自転車で来れる範囲だけどあんまりこようとは思わないんだよな。最後に来たのって一か月前にジュディに頼まれてオタク向けのショップで特典付きの漫画買いに来た時以来だっけ」
秋彦は久しぶりに来た駅周辺の事を思い出す。この駅周辺はゲーセンがあったりオタク向けの漫画やアニメ、同人誌を売っている店にトレーディングカードゲームの店なんかもあったりして割とオタクコンテンツに事欠かなかったりする。
また、駅周辺には食事処も多く、割と時間を潰せる印象がある。また、駅前にあるデパートは母に幼いころに何度か連れて行ってもらったことがありきらびやかな印象もある町だ。
今回秋彦が行くのはそんな街の駅前近くにある大きな建物だ。駅から歩いて数分もない場所。改札を出て右にある東口を更に右に曲がればもう見える。献血ルームを横切ってまっすぐ進んだ先にある大きな建物。そこに秋彦が訪れに来た場所がある。
建物の中に入ってエレベーターに乗り込み、案内に従って階を選び、少し待てば見えてくる。
そこはある意味見慣れ、ある意味で見慣れない探索者ギルドがあった。
そこにある探索者ギルドは新宿本店のギルドとは違い、どちらかと言うと中世ヨーロッパ的な冒険者の宿を彷彿とさせる木製の建物だった。勿論この階層があると言うだけの本来の建物自体は鉄骨に鉄筋、それとコンクリートでできた近代的な建物だ。
だがこういう探索者というイメージを最大限に含んだ、いわゆる遊びの様な状態を残しつつも整理券販売機と言った現代特有の機械を織り交ぜた実作業における機能美も併せ持つ面白い空間だ。
これは面白い。そう思っていそいそとギルドに足を踏み入れた。
「おおおおお!!! 来た来た! 南雲秋彦さんだ!!」
「今日来るって話は本当だったのね!!」
「生秋彦さん! 初めて見た! うおおおおおおお!!!」
ギルド内改めてごった返しである。正直頭が痛い。
いや、分かっていた。分かってここに来たのだ。分かっていて尚ここに用を済ませに来たのだ。
今や秋彦達は現代の英雄と言って差し支えない知名度と実力を兼ね備え、その姿は探索者達にとってのカリスマに他ならない。
そんな秋彦が探索者ギルドに入って注目されない訳が無いのである。しかし分かっていてもこの熱気。凄まじいものがあった。恐るべきはファンの持つ熱気と言ったところだろうか。
「ジュディさん! 南雲さん来ましたよ!!」
「ええ、分かっているわ。秋彦! こっちよ!」
どうやらすでにいたらしくジュディがギルドの用意した机から声を掛けてきた。秋彦はこれ幸いにとかけられた声に従ってそのままジュディと同じ席に着く。
「あれ、何だよもういたのか? 随分早いな?」
「テレポテーションの魔法石があるんだから当然。寧ろ秋彦ちょっと遅いわよ?」
「あ、あー、うん。悪かった」
少しバツの悪そうに頭を掻く秋彦。ジュディはそんな様子を見て優しく微笑む。
「まあそれはいいのよ。さて、そろそろあなたもみんなのお話に付き合ってあげてね?」
「ああ、やっぱりそうなる?」
そういって周りを見渡す秋彦。
周りには秋彦から話を聞きたくてうずうずしているレインボーウィザーズのファンが大勢いるのだ。そりゃ話の一つもせがまれると言う物である。
「後、さっき見たけどテレビ局の人もいるから、インタビューには応じてあげてね?」
「うへぇ……正直嫌だけど頑張る」
こうして秋彦は整理券に書かれた番号を読み上げられるまで、ひたすら話をせがまれ、それに応じ続けることになった。
すっかり対応になれたこともあって、さほど労せず人々を捌いていく。順応とは怖い物である。かつての自分なら一人相手に話をするにも苦労したと言うのに。これもある意味成長なのだろうか?
秋彦は自分の中にある変化を感じずにはいられなかった。
皆様からのご愛顧、誠に痛み入ります。
これからも評価、ブックマーク、感想など、皆様の応援を糧に頑張って書いていきます。
次の投稿は3月3日午前0時予定です。
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