第二百六十九話 迫るその時 新しいギルド
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「そういやジュディ、明日の予定は? そろそろそっちも期末テストだろ?」
「ええ、貴方からもらったトレーニングをこなしたら大人しくテスト勉強をしているわ。貴方は?」
「俺も大丈夫だとは思うんだけどおとなしくテスト勉強だな。テスト勉強なんだけど……その前に一週間の活動停止を報告しに行かにゃならん」
「あー……他の探索者チームなら報告なんてしなくてもいいだろうけど私たちはね……」
「レインボーウィザーズが突如活動らしい活動をしなくなったら普通に騒がれるからな。ギルドに位は話しに行った方がいいだろ」
落伍者の話から話は変わり、話題は今後の予定になる。
とは言っても二人とも期末テストまで残り一週間と言う所まで来ている以上授業が終わったら帰って勉強をしばらく繰り返すことになるだろう。
秋彦とジュディは通っている学校は違うがよくリビングで教科書と菓子を広げて一緒に勉強をしている。その時間が普段より増えるだけだ。
ただ秋彦達はレインボーウィザーズと言う全国屈指の知名度を誇る探索者チームだ。それが突然活動停止と言うのは、たとえ定期テストに備える為と言う学生としては至極真っ当な理由であってもギルドの人々にとってはいささか心臓に悪いものがある。
だからギルドへいき、話を通しておこうという訳だ。だがここでジュディから待ったが入る。
「でもそれなら電話すればいいんじゃないの? わざわざギルドに行く必要ないじゃない」
「まあそりゃそうなんだけどさ、埼玉のギルドに顔出していなかったから様子見して置きたくてな。それに埼玉のギルマスからも顔出すように言われてんだよ」
「ああ、そういえばギルドの支店増えたのよね」
ため息交じりに話す秋彦に納得するジュディ。
地方都市奪還作戦後、探索者人口の拡大とともに既存の関東ギルドや関西ギルドと言った地方ごとにある探索者ギルドだけでは処理が追い付かなくなりつつなっていた。
そこで考えられた案の一つがギルドの規模拡張である。
今までは各地方に一つしかなかった各ギルドを各都道府県にそれぞれ2.3程ギルドの支店を設けたのである。
こうやってあちこちにギルドの支店を作ることで、地方都市奪還作戦前には地域専属探索者と言う存在が生まれなかった原因の一つであるギルドの窓口の少なさを補い、探索者が地方からいなくなる理由の一つを潰したのである。
しかし各地に探索者の支店が生まれると言う事はそれだけ事務方の人間の密度が減ると言う事でもある。
なので今ギルドは魔物の氾濫での被災などで職を失った人々を大量に雇用し、少しでも探索者を支える人手を得ようと躍起になっている。
それは魔物の氾濫によって失った日常を少しでも取り戻すために探索者ギルドがわずかにでも出来る事の一つであり、ギルドによる探索者達のイメージアップ運動でもある。
そこに秋彦達レインボーウィザーズも一枚噛ませようとしているのだ。
現状最高戦力の探索者が出来たばかりのギルドを訪問。職員にとってもそのギルドを拠点にする探索者にとってもこれ以上に嬉しい事はそうそうないはずだ。
「まあそういう訳でよ。ちょっと行ってくるわ。その後は一緒に勉強しようぜ」
「じゃあ私もいくわ。どうせなら一人より二人の方がいいでしょ? 史上最強の探索者夫婦の初顔見せなんだから、ね?」
「お、おおう……わかった」
白人特有の白い肌を紅く染めて小悪魔的な笑みを浮かべるジュディに思わず秋彦もたじろいでしまう。
照れ隠しに飲んだ紅茶は、茶菓子と合わせるために砂糖は入っていないのに不思議と甘く感じてしまう。
「そういえば秋彦。貴方また一人で勝手に依頼を受けたんですって?」
その甘さは凍った空気と共に洗い流されてしまった。
ジュディが言っているのは当然つい先日入った仲町商店街八百屋の北沢倉庫のダンジョンに入ったことを言っているのだろう。
「い、いやあのさ。あれはあくまで地元、と言うか俺の生活の拠点の近くで発生したからとりあえず潜入調査しただけだし? それに特殊ダンジョンだって言っても俺のレベルならまず死にはしないっていう算段の元に入ったわけでサ?」
「でも今すぐに氾濫しないでしょ? ギリギリとは言えまだ氾濫は凍結されているのだから、ちょっと待って全員で行こうっていう発想にはならなかったの?」
「い、いやだってみんなの予定とかすり合わせてたら時間かかるし……」
秋彦の顔や体から嫌な汗がどんどん噴き出していた。
目を細めとろけるような蠱惑的な笑みを浮かべるジュディ。しかしそんなジュディの前身から発せられるのは明かな怒気だ。
「それは尤もなのは分かってるわ。でもせめて一言あってもいいじゃない。私だって今更貴方が特殊ダンジョンってだけで死ぬなんて思ってないわよ。前回あれだけ言われておいて、舌の根の乾かない内に誰にも断り入れずに入った事を言ってるの。わかる?」
「はい……」
すっかり縮こまってしまう。再び耐える時間が来る事を覚悟して縮こまる。
だが、ジュディはあまりここでいうつもりはないらしく、怒気をふっと収めると紅茶に口を付ける。
「まあ確かに本当に私たちの生活圏内で、ダンジョンの全容を早めに理解しておきたかった気持ちもわかるからあまり口を出すのはやめておくけど、本当に止めてよね。そこも含めて埼玉南部ギルドのギルドマスターに報告してきなさいよ?」
「は、はーい……」
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