第二百六十八話 迫るその時 落伍者の暗躍
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これからもりあダンをよろしくお願いいたします!
「まあ、サレンダーの事は置いておいて」
「置いておかないで? 本当にサレンダーの魔法石欲しいわ!」
「だから、企業同士の交渉でこれを使うのはダメでしょって。いくら無茶苦茶な条件提示されたからって企業のトップ同士で使うのは……」
夜も始まったばかりだと言うのにジュディは秋彦にガンガンサレンダーの魔法石をねだっていた。正直こうなった時のジュディはかなりぐいぐい押しが強く、いつも通り秋彦が折れて終わってしまう形になってしまう形だ。
だがここで、お茶会のBGM代わりに付けていたテレビから飛んできたニュースがその場の空気を一気に変えた。
「では次のニュースです。今日午後5時頃。東京都○○区××銀行に押し入った複数名の強盗がダンジョンポリスの手によって捕縛、逮捕に至りました。強盗は正面から銀行に押し入り、ドレスアップリングにてその場で武装をし金を出せと脅し、3千万を奪い取り逃走。ダンジョンポリスが追跡を開始し、数時間後、逮捕に至りました」
ニュースキャスターがニュースを読み上げている間テレビは監視カメラに映った強盗の様子やダンジョンポリスが車を使う強盗にローラースケートで追いつき車を持ち上げて拘束。逮捕した様子が映し出されていた。
尚、テレビに映っていたダンジョンポリスには秋彦もジュディも覚えがあった。オールバックの髪形につり目、そしてあの好戦的な笑み。間違いない。
「あ、矢場さんじゃん」
「あらホント。凄いわねー、流石矢場さん達。最初の氾濫騒ぎを食い止めた時からの仲の人がこんな形で活躍しているっていうのを見るのは嬉しい物ね」
「全くだ。元気そうだな」
そう、このテレビ放送で強盗を逮捕したのは矢場達のチームだ。確か矢場チームはかつて万鬼抹消としていたが、今は確か【インクレディブル・ロウ】としていたはずだ。ダンジョンポリスと言う落伍者達を専門にする警察のような立ち位置の彼らであったが、警察との連携を密にとる当たり本当に警察と探索者の中間的な立場にいることが出来るようになったのかもしれない。
「今回の強盗はいずれもネット上で落伍者と呼ばれる、探索者としてレベルも低いながら一般人よりは圧倒的に強い人であることが判明しています」
その言葉を聞いて秋彦もジュディも思わずため息が出てしまう。
「秋彦……こんなことあんまり言いたくはないけど……」
「ああ、分かってる。俺も同じことを言おうとしてたところだ」
「「ここ最近落伍者が起こす事件が多すぎる」」
思わず言いたいことがハモる二人。だがそうなってしまうのも仕方ないだろう。
ここ最近妙にテレビやニュースで探索者にとっては不穏なニュースをよく見るようになった。
ついこの間まで落伍者だったものがゴールドランク探索者や政府関係者相手に暗殺者まがいの行為にて殺害、もしくは殺害未遂をした。
探索者等の家に忍び込み、探索者の保有する道具や余らせていた武具防具などを盗み出す。
この様に探索者の中では弱者であるはずの落伍者が強者であるゴールドランク探索者相手に凶行を繰り返し、尚且つその凶行を成す術もなく指を咥えて見続けるしかないと言う状況が続いている。
被害を受けているゴールドランク探索者相手に落伍者がまんまとミッションをコンプリートしており、それに対してダンジョンポリスが後手に回りながらも下手人の落伍者を捕縛、逮捕と言う流れの事件は最近ではテレビでは日常茶飯事と化している。
「嫌よねぇ。やめてほしいわ、ゴールドランク探索者相手におかしな真似をし続けるんだもの。私達だって例外じゃないじゃない!」
「何よりそのせいでゴールドランク探索者の人たちが疑心暗鬼になって探索者を引退し始めている人たちが多いのが困る。看板を俺らみたいな名前も顔も売れているのに押し付けていかないでくれよと思うわ」
「それは本当にそう思うわ……」
秋彦とジュディが盛大にため息をつく。
秋彦の言った通り、落伍者が謎の大躍進を以ってゴールドランク探索者に牙を剥き始めたことによって、ゴールドランク探索者達が最近引退に走り始めているのだ。
勿論理由はそれだけではないだろう。
例えば想定外の個人的な理由で急遽探索者を辞めねばならなくなった。次のキャリアアップが見えたので探索者を円満に。考えたくはないが地方都市奪還作戦、もしくはその後に腕一本など体を欠損してしまうなどで引退してしまうなどで。
だが、ゴールドランク探索者がある種ギルドから地方都市奪還作戦に参加して勝利を収めた人々へ贈られた称号のような物である以上、それを捨てて一般人へ戻るなんてリスクはあれどリターンはないはずだ。
たとえ引退したってその称号を掲げて指導を行ったり、経験を語ったりすればそれだけでも探索者としての活動として貢献できるだろう。
ゴールドランク探索者には支給される年金もあるし、手放すことが愚の骨頂である。
ゴールドランク探索者の地位を手放す事は利益はないのに不利益だらけ。それでもゴールドランク探索者が引退を決意し始めている人が多いのは恐らくそれだけではない何かがあるのだろう。
「本当に昨今一体何が起こってるのでしょうね……?」
「かつて探索者達においてトップクラスだった浪速商人連合はすっかり地域専属探索者になっちまったし、絶対零度は頭の吹雪さんが行方不明だっけ。ホント、何が起こってるんだろうな」
重苦しい空気が漂い始める。
浪速商人連合は元は浪速区の商店街の人々が探索者として活動をしたことでその名前を冠することになった事から地域専属探索者になった事は頷けるのだが、北海道ギルドの最高戦力である吹雪氷河が先日から行方不明になっているらしい。ここ最近の動きと絡まり何やら良からぬことに巻き込まれているのは容易に想像がつく。
それらを思い出した秋彦がぽつりとつぶやく。
「本当に、おっかねーことになったもんだぜ……」
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次の投稿は2月25日午前0時予定です。
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