第二百六十六話 迫るその時 中級ダンジョン開放とテスト期間
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これも皆さまからのご愛顧の賜物です。
これからもりあダンをよろしくお願いいたします!
「よーしお前ら席につけ―! HR始めっぞー!」
秋彦達のクラスを受け持つ岩田先生が教室に入ってきた。HRの時間である。
「さて、お前ら、今日も学校終わったし、ダンジョン潜って一稼ぎ、とか思っているんだろうな。今この学校の探索者人口は8割近いからな」
岩田先生、いきなり話をぶち込んでくる。
秋彦と優太のレインボーウィザーズの二人、それにモンスターキラーズの面々が通うこの高校は、探索者達にとっては有名な学校だ。地方都市奪還作戦後からその知名度は急速に広がり、二人の威光を借りながら自分達も探索者として活動して自分も有名、特別になろうと思う者は多い事から、この学校における探索者人口は8割近くという恐るべき数字を叩きだしている。
ちなみに他の高校や大学ではせいぜい1~2割と言ったところである。やはり荒事がメインになる探索者は華々しくも命がけである以上、しり込みする人々も多いのだ。
この数字は秋彦と優太の本人さえあずかり知らない所で発揮されているカリスマあってこその数字と言える。そのような荒事の場にも飛び込んでいこうと言う気にさせるのだから。本人たちは全くそんなつもりはないのだが。
「やっぱり人って慣れるもんなんだよなぁ。シルバーランクの探索者もこのクラスだけでも結構いるしな。そしてそんなお前らだ。勿論分かっているんだろう? あれが近い事も」
岩田先生がにやりと笑う。
そしてこのクラスにいる全員が何のことを言っているのかに確信を持つ。
「来たる12月11日。この日に中級ダンジョンが解禁されるんだってな? もう今ニュースサイトにテレビにとあちこちが報道して大賑わいじゃねーか」
その言葉にクラスも沸き立つ。
そう、12月11日。この日は探索者にとっては重要である中級ダンジョンが初めて日本に現れる日となっている。
今では特殊ダンジョン難と言う物もあって強さも多少上下はする物の、入門、初級と続く正当な次の難易度の出現に探索者業界は大賑わいだった。
今日日初級ダンジョンで手に入れられる物は殆ど埋め尽くされ、何度も何度もダンジョンを攻略し、ボスを倒した際にわずかな確率で出て来るいわゆるレアドロップ品以外に目新しい物が出てこない上に、魔物素材も量はともかく種類としてはあらかた判明しつくした昨今において新しい魔物の素材、新しい宝箱などのドロップアイテムなどへの期待からテレビや新聞などのマスメディアやインターネットではとにかく期待を煽り、ある種の祭りの様な様相になっている。
「だがまあ俺はそんなお前らに非常に残念な宣言をしなければいけないんだ。俺もなー、非常に心苦しいんだけどなー」
そういうと岩田先生はチョークを使って黒板に文字を大きく書いていく。
初めは何だなんだと思ってみていたクラスメイトだったが、だんだん文字が形成されていくにつれて内容が把握できてしまうとだんだん表情が曇る。
そんな様子を岩田先生は見もせずに悠々と文字を書きあげ、そして宣言した。
「12月9日から12月13日はテスト期間だ。そしてそのテスト期間中はあらゆる部活やバイトは禁止となっているが、今回探索者活動もそれらと同系列に扱うことになった!」
黒板に自らが書いた「テスト期間中の探索者活動禁止!!」の文章をバンと叩いて宣言した。
ため息のような空気がその場に流れる。
残念と言えば残念ではあるが、ある意味では皆予想していたことだった。常識的に考えれば部活もバイトも禁止でテストに集中する期間なのに探索者としての活動だけ例外の方がむしろおかしい。
それに命のやり取りを行う様な鉄火場なのだ。喜び勇んでいくようなところでもない以上、ここでがっかりするのもおかしな話と言えるだろう。
「うわああああああ!!!」
「やっぱりーーーー!!!」
「最悪だーーーこのビックウェーブに乗り遅れるなんて!!!」
だが、そんな中阿鼻叫喚といった様相で騒ぐ三人組がいた。
手塚 琢磨を筆頭に横島 慶太と城ケ崎 泡姫の探索者トリオ、【クルーエルミソロジー】だ。彼らはクラス一のお調子者トリオである。
そんなお調子者三人がこの結果に対し文句を付けたのはある意味予想通りと言うべきだった。この三人、モンスターキラーズの笑屋、奏、言葉、岩崎、真崎どころかレインボーウィザーズの秋彦や優太に説教されてもケロッとしているほどである。
「だまらっしゃい!」
だがそんな三人でも先生に一喝されてしまえば馬鹿三人も静かになる。こういう時に岩田先生はしっかり締めてくれるのだ。
「お前ら自分達の本業は学生であることをお忘れかな? 学生の本懐は勉学に励むことですよ。例えお前らが探索者としてレベルが上がり、知力が大幅に上昇して今となってはこの偏差値50程度の高校の授業内容では欠伸が出る程楽であってもだ。それに学校が下した決定さえろくに守れないようではちょっとこの学校における探索者に対しての考えも改めなきゃならなくなっちまうぜ」
「で、でも……」
「大体そんな風に騒いでいるのなんてお前らだけじゃねーか、周り見て見ろって」
さらに何か言いたげな手塚だったが、先生に言われて周りを見る。クラス全員が白い目で三人を見ていた。呆れた様な、醒めた様な冷たい目だ。民意はクラスにあると突きつけられるような光景である。
こうなったらもう押し黙るしかない。自分達は探索者であり、力を持つ人間である以上はその力は常に律し続けなければいけない。自分達の力は自分達が好き放題するためにある訳では無いのだから。
さらに民意までこちらにないのだから、この場は大人しくするほかないだろう。
「お前ら三人はちょっと気が緩んでいるというか、ちょっと慣れ過ぎだぞ。ま、そういう訳で、テスト期間中は探索者活動はせず、おとなしく家で勉強でもしててくれ。じゃあ、今日のHRはここまでだ。寄り道しないでまっすぐ帰って勉強してくれ」
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次の投稿は2月19日午前0時予定です。
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