幕間一 ジュディ 外国の様子
一章が終了したので、試しに幕間を書いてみました。もう一回掲載したら本編に戻ります。
『もしもし、ジュディよ』
『お嬢様! ご無事だったのですね?!』
『久しぶりねセリーヌ。そちらの状況が知りたいのだけどいいかしら?』
『あ、はい……あ、すみませんお嬢様。旦那様が代ってほしいと』
『お父様が? わかったわ。代って』
『はい……』
『……おお、ジュディか! 無事だったのだな? 日本も大変だったようだね』
『わたくしはむしろこの異変を収める側でしたので。体は何の問題もありませんわ』
『ああ、それは動画を見たよ。見間違いかとも思ったが、学友の姿もあったし、その言葉で確証を得られた。いずれにせよ無事で何よりだ』
『わたくしも、お父様が無事で本当に良かったですわ。そちらは一体どうなっていますの? お父様会社の方はよろしいのですか?』
ジュディは、イギリスの両親へ連絡を取った。
交換留学生のジュディは寮で生活をしていたのだが、先日の魔物の氾濫の一件に片が付いたこともあり、ふと、祖国の状態を知りたくなったのだ。
実家へ連絡したので、メイドのセリーヌが出たのは想定通りだったが、母親に代ると思ったら父親が代った。イギリスは正午だから仕事場にいると思ったのだが。
『ああ、それなんだが、こちらでも魔物が溢れかえってな……わが社の従業員も多くに被害が出たのだ。そしてそれは今でも続いている。護衛にダンジョンへ行かせて強化をし、ようやく我々の身の安全を図れてはいるが、従業員たちはそうもいかず、はっきり言って仕事どころではないのだ。休業中というやつさ』
ジュディの父、クリストファー=マクベス。イギリスでは知らぬものなしの大企業、マクベスコーポレーションの社長。様々な企業を傘下に持つ大会社のトップである。
その大会社社長曰く、銃の所持を認められている国は、始めは一般人でもなんとか対処で来ていたらしい。やはり銃とは強力な武器であり、銃を持つ人が10,20と集まれば多少の群れなら何とか出来たようだ。しかし問題となったのは共食い強化による雑魚魔物の超強化。最近はこれを【ボスチェンジ】と呼んでいる現象なのだが、これが厄介だった。
ボスチェンジした魔物は、下手な銃器では歯が立たない脅威の怪物。これによって雑魚魔物を倒してきていた一般人が虐殺され、最終的には軍が戦車を引っ張り出して、ようやく戦車三台の犠牲を払っての収束となった。
それ以来、魔物を下手に大量に倒すと魔物がボスチェンジしてしまうといわれ、一般人は手を出さず、軍が主要都市に常駐し、氾濫を起こしたらこれを軍が鎮圧するという方針を取っているらしい。
そしてそれは、銃社会なら大抵同じらしい。銃によって下手に戦えてしまった弊害ともいえるだろう。そして銃が通用しなくなった途端無力になったこともまた弊害だ。
『でもそれは根本的な解決には……』
『ならないかね?』
『おそらく……それに入門よりも強い初級から魔物が溢れ出したら……』
『……今のままでは対処ができなくなりそうだね。知り合いの有識者に進言してみよう。前代未聞の事態だ。呼ばれる可能性の高い人に伝手がある』
『お願いします。このままでは取り返しがつかなくなってしまうかもしれません。やはりダンジョンで鍛えることは必須だと思うのです』
『分かった。やはり現場の声というのは参考になる』
そういってふっと笑うクリストファー。ジュディもくすりと笑う。
『しかし……離職者も増えることも考えると……グループ全体の被害も尋常でないことになりそうね……』
『ああ……正直これからどうなってしまうのか、頭が痛いよ……とはいえこれは世界的に言えることだ。ここでいかに踏ん張れるかが、あるいはここでいかに利益を出すことができるかに今後がかかってくる』
『ええ。世界はあの日を境に大幅な変革を求められることになるはずです。私はダンジョンを探索する者、探索者としてダンジョンについてさらに情報を集め、強くなることで帰ったときに会社に貢献できるようにしますわ』
『一人娘であるお前に危険なことをさせたくはないが……今はそのようなことを言っている場合ではないか。ただ一つ約束してくれ』
『絶対に死なない事……ですか?』
『うむ、それだけは約束して』
『了解しましたわ。では、近いうちにまた連絡いたしますね』
電話を切るとジュディは大きくため息をついて部屋のベッドに飛び込んだ。
これから自分は更に魔物と戦い、ノウハウやスキルを身に着けていくことになるだろう。興味本位で飛び込んだ世界とはいえ、人間は魔物に屈しない。それを体現するためにも引く訳にはいかない。いつかは引退するかもしれない。ひょっとしたらその前に死ぬかもしれない。でも……
『私は負けない……!』
そのためにも、是非ともダンジョンに潜る仲間として欲しい。否、必須の人がいる。
東京の氾濫に対処する為に集まったときに衝突したあの自分よりも大きいあの男性。南雲秋彦。
彼は普通の魔法使いとは違う魔法。強化魔法を使用して戦う事ができる。サポートもできるが、自己完結もしている探索者だ。隣にいた小さい親友君もすごいとは思うが、あのピンチであの化け物相手に拳で殴りに行けるほどの胆力は素晴らしいし、何より……
『かっこよかった……』
彼は絶対に自分のチームメンバーにする。なんだったら、自分が彼のチームについていく形でもいい。彼がいればダンジョン攻略はぐっと楽に、早く行える。そんな確信と、ほのかに宿る恋心を胸に秘めて。
皆様からのご愛顧、誠に痛み入ります。
これからも頑張っていきますので、ぜひ評価感想の方を頂戴したく思います。そうしたら私はもっと頑張って作品を展開できますので。これからもどうぞ、よろしくお願いいたします!




