第二百六十一話 北沢さん家の特殊ダンジョン 調査終了!
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これも皆さまからのご愛顧の賜物です。
これからもりあダンをよろしくお願いいたします!
「おいおい……」
思わず頭を掻いてしまう。
折角畑の作物達が大きく育ってってきて、収穫も目の前だと言うのに現れたのは……イノシシ、鹿、サルに蝙蝠。害獣だ。それも畑を荒らす者ばかりである。
どうやらこのダンジョンは畑を守りながら戦う事をコンセプトに作られており、恐らくダンジョン制覇の報酬は畑の作物だろう。と言う事は、畑を荒らす害獣ともう一度交戦し、そこから収穫と言う流れになるのだろう。つまり今ようやく折り返しに入ると言ったところのはず。こんなところでうんざりしている場合じゃない。
気合を入れて敵と向かい合うと早速秋彦ではなく畑に向かってサル共が向かってきた。
「させるか!! うらぁああ!」
距離が多少あることと、まだ畑に入る前だったので秋彦はフォトンを使用する。
フォトンは無属性魔法にしては珍しい範囲攻撃魔法である。扇形の範囲を地面に押しつぶす魔法だ。レベルも上がって威力が上がっている。何より装備に頼らない元の戦闘力がレベルの暴力によって高い秋彦なので魔法を使えば易々と蹴散らせる。だがこの魔法は消費する魔法力が結構多い。先はまだ長いはずなのだ、あまり乱発はしていられない。
しかしそうなるとやはり素手での戦いかフォースによる遠距離攻撃で対処するしかない。
こんな時に雷光突きが使用出来れば訳なく蹴散らせると言うのに、残念ながら装備無しで使用できるほどには習熟していなかった。
「くそ! 手が足りねぇ!」
フォースで的確に敵を射抜き、素手で魔物を殺しながらの必死の応戦だ。敵も数を頼みに畑へ進軍してくる。
敵の強さ自体は、装備を抜いても今の秋彦ならどうと言う事のないレベル。力量感知的に言えば1万は行っていないはずだ。装備を含まないで肉体力が5万、魔法力が2万5千を行く秋彦なら一対多であっても負けることはない。
だが今秋彦の後ろには畑がある。これを守りながらとなると話が変わる。何せ圧倒的に手数が足りていない。
倒しても倒しても湧いてくる敵の軍勢。感知系を最大限にあげていることで一番畑に近い魔物がどこにいるかはわかるがそこに行くのも決して楽じゃない。素での一撃で倒せる害獣の群れ相手に文字通り右往左往させられる秋彦。
そしてとうとう恐れていたことが起こった。
「し、しまった! 畑に!」
畑にとうとう侵入を許してしまった。
害獣共は畑のまだ青々しさが残る作物をもぎ取ろうと手を伸ばしていた。
「止めねぇか!!」
思わずフォースを使って魔物を吹き飛ばした。そして直後におのれのしたことを後悔する。
「あああああああ! は、畑が!」
魔物を吹き飛ばしたことで吹き飛ばされた魔物が畑の作物を巻き込んで飛んで行った、要するに秋彦の攻撃の巻き添えを喰ったのだ。
畑に一度侵入されれば魔法制御があったとしても魔物が吹き飛ぶことで作物を巻き添えにしてしまう。畑に侵入した魔物は事実上、畑自体を人質にしているのだ。
「うおおお……!! やりにくい!!」
苛立ち紛れに叫ぶ秋彦。だが言っている間にもどんどん魔物は進撃してくる。
「だー!! お前らちっとは遠慮しろってんだよ!!」
怒りを露わにして拳を振るって尚敵の進撃は止まらない。雄叫びと共にまだまだ戦闘は続くのであった。
………………………………
結局第二波が収まった後に畑はかなり荒されてしまった。具体的には半分程度か。
初めはサルが真っ先につき、次にイノシシ、次に蝙蝠、鹿と続いて最後に熊まで出た時はそこまでするかと青ざめたものだが何とか撃退できた。
その過程で畑に侵入した害獣共を叩く過程で畑が荒れたのだ。これはもう畑に侵入された時点で負けが決まると言っても過言ではないかもしれない。
「はぁ……はぁ……こ、これが2Wave目とか冗談だろ……?」
歴戦の探索者である秋彦であってもこの戦闘はつらかった、範囲魔法攻撃を消費の大きい物以外持っていないことがこんな形で災いするとは思わなかった。
荒く息をついていると再び夜が来て朝がやってきた。そしてめきめきと不自然なほどに成長が早い野菜たち。やはり3Wave目はあるらしい。
「くっそ、息つく暇もねぇな。次は何だよおい……」
再び敵の攻撃に備えるべく畑の外に向かって拳を向けた。だが、次の敵は真逆の方向から現れた。
秋彦の感知スキルはそれが突然畑の中に現れたように感じとらせた。
「え?! な、なんだ!? ……はぁ!!?」
後ろを振り返って目を疑った。
そこにいたのは顔と手足が付いた巨大な人参だったからだ。カートゥーン調の見た目であって不気味ではないが、この場にそぐわないポップな感じがかえって状況をこんがらがらせた。
そしてよく見ると他にも顔のついたトマトにキュウリ。リンゴみたいなものがわらわら湧いていた。
「馬鹿な! アナライズで見たの時はただの作物だったのに、これ全部野菜の魔物だったのかよ!!」
一体どうやって秋彦のアナライズをかいくぐったのかはわからない。自分のステータスを偽装するスキルでもあるのだろうか?
「やばい、この野菜共かなり強いぞ……」
しかしうろたえている場合ではない。この野菜共、力量感知でざっと見積もって戦闘力が10万はあるのが分かったからだ。ふざけた見た目をしているがその実かなりまずい状況だ。
「何とか生きて帰らねーと……くそ、この馬鹿野菜共……ん?」
だが、思わずついた悪態でふと秋彦は我に返り、目の前の野菜達をまじまじと見つめる。
自分がこのダンジョンで苦しんだのは何故だ? 勿論この装備のせいだ。この装備が固定装備になっているから思うように戦えず苦労した。
ところでこの装備、どういう効果を持っていたっけ?
そこまで考えて秋彦は思わずニヤリと笑った。そうか、つまりそういう事か。思い至った秋彦は今まで全く使わなかった鎌を持って、人参の魔物に切りかかった!
「はぁ!」
すると野菜の魔物は断末魔さえ上げることなく一刀両断された。戦闘力10万越えの魔物が、いともあっさりとである。
両断された魔物は膨らませた風船が破裂したかのような音を出してバラバラに崩れ落ちた。無数の人参となって動かなくなった。
「へぇ……成程ねぇ」
当然だろう。秋彦が今持っている鎌は太古農家の鎌だ。特殊能力として収穫斬りというこの技で植物属性の魔物に攻撃すると威力が5倍になるスキルと稲刈りというこの武器を使用した際に植物属性の魔物に攻撃すると威力が100倍になると言うスキルがある。
元の戦闘力が200の上昇であっても、植物魔物に限っては戦闘力200万を超える超絶倍率に跳ね上がるのだ。戦闘力10万程度相手にならない。
要するにこれは……
「収穫祭ってことだな……?」
秋彦は舌なめずりしそうな様子だ。
今までは装備に能力を制限され続けていたが今は違う。今この時装備が効果を十全に発揮できる環境が整ったのだ。
「今までの鬱憤晴らしも兼ねて、一つ残らず刈り取ってやるよ!」
皆様からのご愛顧、誠に痛み入ります。
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次回からの投稿は今まで通りの3日に一回のペースへ戻ります。
ですので2021年2月4日午前0時予定です。
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