第二百五十七話 南雲さん家のバグダンジョン、潜入完了!
累計PV数437万突破しました!
これも皆さまからのご愛顧の賜物です。
これからもりあダンをよろしくお願いいたします!
「さてっと、これがここの戦闘な訳なんだけど、どう?」
敵を倒してドヤ顔で他の四人を見る秋彦。
この暗闇の中、感知系をほぼカンストさせた秋彦には暗視装置なしでも相手の表情が分かる。暗視装置を付けているせいで顔自体は分かりづらいが、それでも全員困惑しているのは分かった。
「そうね……取り合えずだけど、いったん外に出ましょう」
「賛成。ここで雑談はしたくないよ。ここ、怖い」
「……全く同意」
「は、早く出ようよ!」
急かされるまま、というよりもはや逃げるように秋彦以外の面々は外に向かっていってしまう。
とりあえず秋彦も後を追って外に出る事にした。今は敵の攻撃圏内に魔物はいないとはいえ、戦闘音を聞きつけて来ている奴らがいないとも限らない。
メンバーを守るのが今の秋彦の最優先事項である。
………………………………
「ぷっはー! く、空気が美味しい!!」
「い、生きて帰ってこれたわ……!」
「こ、怖かったー!!」
「……腰が抜けるかと思った」
外に出てきて、秋彦の家にお邪魔したレインボーウィザーズの面々はそれぞれ感想を叫ぶ。よほど恐ろしかったのかその表情は開放感に満ちている。
「あ、あんなところで親友は一人で戦っていたんだね……」
「私たちが会社とか事業とかで放置してしまっている間にずいぶん遠くに一人でいっちゃっていたのね……」
「あ、あのさ秋、もうちょっと命は大切にしようよ? いくら周りは強くなるのを求めているからって死んじゃ元も子もないんだよ?」
「……命あっての物種。一人でそこまで抱え込まなくてもいい」
「おう、人を自殺志願者みたいに言うのやめろや」
「私にはどこに違いがあるのかわからないわよ」
散々な言われようである。確かに封印開放を使いこなすための荒行の様に見えるかもしれないが、実際にはそんな魂胆など毛頭ない。
「よーしだいぶ落ち着いただろうしもういいか? で、テレビが入ろうとしているのはあんなとんでもない所な訳だが、まずは皆の感想を聞きたいんだけどさ。まずラッキーなことに一匹しか出てこなかったこいつだな。おさらいがてらアナライズしようか」
そういうと秋彦はさっき自分が倒した兎の魔物。その首根っこをつかんで持ち上げて見せる。
一見可愛らしい小さめの兎だが、あの暗闇の中で秋彦と一対一で戦い合っていたのは間違いなくこの兎である。
名前:ダーク・ボーパルバニー
レベル45
肉体力:200,000
魔法力:88,000
戦闘力:360,000
有利属性:光
不利属性:闇
スキル
魔力撃Lv3
首狩りLv5:(【アクティブ】相手の首に攻撃が当たった際に確率で、一撃によって相手の首を斬り飛ばすことで即死させる)
緊急回避Lv3:(【アクティブ】当たると致命傷になる攻撃を確実に回避する)
魔抗体Lv4:(【パッシブ】魔法による状態異常に対して強力な耐性を得る)
隠密行動Lv6:(【パッシブ】敵に見つかり辛くなり、不意打ちなどの成功率が上昇する)
脳喰らいLv5:(【モンスタースキル】【パッシブ】相手の頭に攻撃が当たった際に高確率で相手の魔法能力全般を大幅に低下させる。また思考能力も大幅に低下する)
闇溶けの擬態:(【モンスタースキル】【パッシブ】このモンスターが闇の中にいる間は回避能力が大幅に上昇する)
狂化:(【モンスタースキル】【パッシブ】このモンスターが光の下にさらされると思考能力が大幅に低下し、戦闘力が3倍になる。思考能力が大幅に低下したことで敵味方構わずに襲い掛かり、特に光源を持っている相手には過剰なまでに攻撃を繰り返す。その凶暴さは光源を断つまで続く)
一見ただの愛らしい小さな黒兎。しかしてその実態は一流の戦士の目をもってしても見切れない超速で暗闇を飛び回り、人間の首をドワーフの名工が作る剣以上の切れ味を誇る耳で切り落とし、落ちた首から脳みそを美味しくいただく悪魔のウサギ。見た目以上に攻撃力と素早さが高く、基本視界が全く見渡せないこのダンジョンにおいて黒い毛並みは辺りに擬態するにもうってつけ。
基本集団行動をするので一体見かけたら周りに数体はいると思った方がいい。
このダンジョンに住まう物はすべて光に照らされると発狂し、戦闘力が数倍に跳ね上がり襲い掛かる。この愛らしい兎も例外ではないので、決して明かりをもっていってはいけない。特記事項
例外種:通常ダンジョンには決して現れない恐ろしく強力な魔物。特定の条件下のみ現れる。
もう色々と狂っているとしか思えない数値と凶悪なスキル群である。しかも驚くべきはこれがこのダンジョンの一階層目で出て来る敵だと言う事実である。どう考えても殺しに来ているとしか思えない内容だ。
闇に隠れて不意打ちで相手の首を落とし、失敗したら頭を狙って掠りでもすれば脳喰らいが思考能力を奪いそのまま首を落とされる。
そもそも感知系を極めなければ不意打ちの一撃で終了な内容である。強くなったからと言って初級上がりの探索者が入っていい場所ではない。
「たった一度とはいえこれ相手に逃げ切れたのが奇跡だよ……」
「あの時の事は本当に思い出したくないわ……」
「正直あたしこの時の事今でも夢に見るもん。番組でネタにされてるけど正直冗談じゃないよ」
「……私も最初のトライはよく聞かれる。今度は秋彦が頼もしくなっているから大丈夫そうだけど」
「あの時は封印開放も1分しか持たなかったし、物の試しでは行ってみてどえらい目にあったからなぁ」
その狂い様に秋彦以外全員ドン引きである。暗闇の中から一撃で殺すと言う強い意志が見て取れる。
「でもまあ天魔槍に封じられていたスキルの雷光突きがあれば電撃が発する一瞬の光によって向こうの回避は大幅に下がるし、見た目の小ささからも見てわかるだろうけどこいつら攻撃力と素早さ特化だから、当たりさえすれば緊急回避以外では躱されないしな。その緊急回避もレベルによって変動する回数制だから、数回かわさせりゃ一対一なら封印開放無しでも余裕なのさ」
「……秋彦、いつの間にそんな迷宮とあのダンジョンに詳しくなったの?」
「俺は今のところ探索者が本業みたいなもんですからね、情報収集とか一人で考察とか、その考察を活かした実践とかいろいろやってるんですよ。皆さんがいない間にね」
「……もしかして他の皆が忙しくて寂しかった?」
「喧 し い わ 馬 鹿 垂 れ」
ともあれこれでようやく全員が納得する「秋彦さん家のバグダンジョン」の一階層目の潜入の勝算が付いたことになる。
「でも今更だけど敵が出たとしてもその様子をカメラに収められるとは思わないわね」
「え? なんで?」
「今日皆が使った暗視装置なんだけど、私がうちの商品の中で一番いい暗視装置を持って来たのよね」
ジュディが今日使った暗視装置を取り出す。だがその表情は暗い。
「うん……見事に何にも見えなかったよね……秋彦と魔物が早すぎて……」
暗視装置を使ったメンバー全員が首を縦に振った。
暗視装置越しで分かったのは雷による閃光だけだった。それ意外は何も見えず、気づいたら戦闘は終わっていた。
つまり今回の戦闘は既存の暗視装置では到底追いつけない程の速度を以って展開されていたのだ。暗視装置の限界を超えての戦いだったため、暗視装置越しの目では何もわからなかったのだ。
優太達はため込んでいたDPを感知系に振り分けることで解決できるだろうが、カメラマンの持つカメラは、たとえ暗視装置を組み込んでいたとしてもこのとんでもない速度では処理が追い付かず結局徒労になる可能性がある。
「モモ、そこら辺はよく説明しろよ? その上でテレビ局がやりたいってーんならつき合ってやるけど」
「いや、これいい口実だよ。こんな不可抗力な理由なら局側も諦めてくれるかもしれない」
「とりあえず説明と出来るならやりたくないっていう説得宜しく。押し切られてもいいから気楽にな」
「分かった、ごめんね」
そうしてこの場はいったん解散になる。しかし秋彦を除く4人には異次元の戦いと、それを行う秋彦を見た事で、探索者として焦燥感を抱くようになる。
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次回の投稿は2021年1月29日午前0時予定です。
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