第二百五十六話 チームで潜入、南雲さん家のバグダンジョン!
累計PV数437万突破しました!
これも皆さまからのご愛顧の賜物です。
これからもりあダンをよろしくお願いいたします!
「いいか皆……ここでは俺の言う事は絶対だ。伊達にここで長らくバトッてきたわけじゃないって所を見せてやるからな」
「うん、宜しく」
秋彦と優太が会話をする中ジュディ達女性陣はすっかり押し黙ってしまっている。
今いるのは初級ダンジョンがグレイトアンデッドドラゴンの魔法力の影響を受けて超強化されて生まれたバグダンジョンだ。
秋彦の指示によって秋彦以外は全員暗視装置を使用して光のないこのダンジョンを恐る恐る進んでいる。
「俺はもう感知系はたいがいDP使ってまで上げたからね。穴があるとしたらせいぜい罠感知位かな。まあ、並の罠じゃ危険感知でほぼ掌握できるくらいにはしたけど」
「す、すごいね……いつの間にそんなに遠くに……」
「どうせ俺はダンジョン以外に取柄なんてせいぜい職人芸位だもんね。皆と違って黙々とダンジョン潜っていられるのさ。割と性にあってる気もするし」
少し拗ねたような声でしゃべる秋彦。だがその有用性は今この時において類を見ない程であった。
見通しが効かない暗闇に見慣れない暗視装置に頼るせいか足元がおぼつかない優太達と違い、感知系をDPまで使用してでも最大まで高めた秋彦には、色が無いだけで目を開けてみる世界と何ら変わらない所まではっきりと捉えられていた。この世すべてが白と黒、そして灰色に分けられたモノクロームな世界。
それが並の人間には見る事さえできない暗黒の世界にとっては二つとない第三の目と言うべきものとなっていた。
「今の俺は大体半径5㎞以内ならどこに何があるかまではっきりわかるからな。こんな暗闇、なんてこたぁねーよ。本当は皆も全部最大まで上げておくべきだと思うぞ。まあDPとの兼ね合いもあるから無理強いは出来ねーがな」
「そ、そうなのね。感知系をどうするかは後にしておくとして……じゃ、じゃあ警戒宜しくね」
「応ジュディ。任せとけ。伊達にここに出入りしてたわけじゃねーよ。皆そんなにビビるなって、ほら行くぞ!」
「わわわ! ま、待ってよ!」
元気よく前を行く秋彦。他の四人が完全にびくついていることを考えるとその自信満々な態度は流石に場慣れしていると言うか修羅場をくぐった数の差を物語っていた。
「本当に堂々としているね、こんないつ死ぬかマジでわかんないようなところでさ……」
「……大胆不敵」
「まあな。意外と死なないもんだとわかったもんでな。寧ろ今のお前らがビビりすぎまであるぜ?」
「え、そ、そうなの?」
「応さ親友、例えば……お、ちょうどいい。敵が一体。近いぞ」
「?!」
軽口を叩きながらも秋彦は敵を察知した。敵の襲来に及び腰で戦闘準備をする面々。だが秋彦はそれを制す。
「ちょうどいい。今から俺が封印開放無しで兎公と闘り合ってくる。しっかり見とけよ?」
「え!? ちょ、ちょっと待って正気!?」
「騒ぐんじゃねーよ、マジだ。大マジ。ま、たった戦闘力20万前後じゃ敵相手には戦闘力的には倍近い差があるが、戦いってのはそれだけじゃねーってことを見せてやんよ」
そういうと秋彦は大きく深呼吸をし、強化魔法を纏い迎え撃つ準備を行う。
「5……4……3……2……1……おらぁ!!」
槍を構えてゆっくりカウントダウンをし、カウントがゼロになると同時に開戦した。秋彦の槍である天魔槍と闇を飛び回る兎の刃のように固く切れ味鋭い耳が鍔迫り合いを始めたのだ。
「ヌググググ!!! なめんなおらぁあああ!!!」
激しく吠えたてる秋彦と兎。一見じゃれ合っている様にも見える程に愛らしい兎ではあるが、実際人の首を落とし、脳髄を喰らう悪魔のウサギであることは前回のダンジョンアタックで思い知っていることだ。
だが、この時点で既にジュディ達の想像の上を行っていた。なぜならジュディ達にはそもそも兎が接敵してきた事さえまともに感知出来なかったのだ。かつて一度は足を踏み入れた時にはあまりの戦闘力の差にパニックになってしまい、何が何だかわからないままに撤退したと思っていた。
だが、それは今も変わらなかった。
接敵もまともに感知出来ず、気づいたら秋彦と敵は激しい鍔迫り合いをしている。その鍔迫り合いの余波で吹き飛ばされそうになっていることを考えると、完全に自分達の出る幕ではないと、力量差を突きつけられている気さえしてくる。
が、繰り広げられる戦いは待ってはくれない。
そこには既にジュディ達の目では捉えられない異次元の戦闘が繰り広げられていた。
ボーパルバニーに速度も大概早いと言わざるを得ないが、閃光を迸らせながら戦う秋彦はそれ以上だった。
地と平行に走る電撃が兎を追いかけ傷つけ続けている様にさえ見える。一見すれば明らかに秋彦が一方的に相手を傷つけ攻撃し続けているようにも見えるだろう。
だが勿論、ぱっと見で見える光景よりも簡単なものではないのだろう。戦闘力的には圧倒的に上回れているからには一瞬でも気を抜けば死ぬかもしれないような状態だろうに。それを思わせない胆力と精神力を以って戦っていた。はっきり言ってジュディ達にはとてもではないが目で追えない速度での戦闘だったが、それでもうまく戦えているらしい。
秋彦は雷光の如き素早さを以って、その勢いのままに闇に潜む首狩り兎を徐々に追いつめ続け、戦いを有利に進め続けている。一瞬も気の抜けない状態がしばらく続いた。
そして、それはそのままの形勢のまま終了した。兎はとうとうピクリとも動かなくなった。血を流し過ぎたのか、はたまた秋彦の攻撃が致命傷になったのか。
いずれにせよ秋彦はこの悪魔の兎相手にとうとう封印開放無しで勝ったのである。
「はい終わり。一匹だけならまあこんなもんか。幸か不幸か援軍も来なかったしな」
だと言うのに秋彦はこのあっさり加減である。ねぎらいの言葉をためらいたくなる様な気の抜けっぷりである。だが、ある意味ではこの態度こそが、ここで生き抜いてきた軌跡と言えなくもないのだが。
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次回の投稿は2021年1月28日午前0時予定です。
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