第二百五十三話 封印開放の進捗
累計PV数437万突破しました!
これも皆さまからのご愛顧の賜物です。
これからもりあダンをよろしくお願いいたします!
「あー……参っちまうなぁ……」
「どうしたの秋彦? スマホ片手にため息なんかついちゃって」
「桃の奴からチャット。進捗どうですかだと」
夜7時を過ぎた秋彦の家。ジュディ達は食事を終えてテレビ番組を見ながら紅茶で一服していたところだったのだが桃子から送られてきたチャットで秋彦の表情が曇る。
要するに秋彦が今どれだけ封印開放状態を維持できるようになったかを聞かれているのだ。
桃子も企業の出してくる無茶ぶりを跳ね除ける事は出来るようになったとはいえ、全く無視できる案件ではないのだろう。
「で、実際どう? あのダンジョンいけそう?」
「封印開放を前提にして、稼いだDPを結構使って能力強化と感知系のスキルレベルを上げて、何とか敵が来た時だけ封印開放を行って対処すればいい位には持っていけるようになった。一日最大10分まで行けるようになったから一人でのダンジョン探索ならまあそれなりにって感じかな」
事も無げに自分の近況を報告する秋彦にジュディが固まる。
そして停止が解けた時、ジュディの甲高い声が秋彦の家にさく裂した。
「ん? どうした?」
「ちょ……何それ聞いてないわよ!? あのダンジョンに一人で入っているの?!」
「お、おう。入ってる。あんまり奥にはいけないから出口近くで待ち構えるスタイルだけど」
「なんでそんな危ないことしているの!? なんで言わないの?!」
「え……あれ、言ってなかったっけ?」
「聞いてないわよ! そんな危ない事聞いてたら全力で止めてるわよ!!」
顔を真っ青にして涙目で大声を上げるジュディ。
「いやだって他の皆は完全に戦闘力的にも完全についていけてなかったけど俺はついていけてたじゃん? 一人で行くなら可能性はあるかなって……」
「でもだからって相談も無しに行く人がありますか!」
「あれ、言ってなかった? え、本当に?」
「聞いてないわよ! このバカバカ、お馬鹿!」
胸に抱き着き、涙を流しながらぽかぽかと胸を殴りつける。
事も無げに言った秋彦の言葉はジュディにとっては天地がひっくり返るほどのショックだった。本当にいつ死んでもおかしくないようなとんでもない魔境に知らない間に一人で挑んで一人で勝手に帰って来ていたと言うのだからそれは当然と言えるだろう。
確かに理屈でいえばあの場で足手まといになっていた秋彦以外のレインボーウィザーズの面々がいなければそこそこ探索は出来ていたかもしれない。
だがあんなとんでもない魔境に出入りするのに仲間の誰の相談もなく、しかも本人は相談して許可まで貰ったつもりになっていたと言うのだから始末に負えない。
「秋彦、前々から思っていたのだけれど、貴方って結構忘れっぽいわよね? 龍ちゃんが補助強化行えることも忘れていたし、今回だって相談して入っていたって思いこんでいたわよね?」
「う、そ、そうかな……?」
「そうよ! こんな大事なことを……」
一度怒りが爆発してしまったジュディは最早止まることを知らなかった。こうなってしまったら秋彦はただ自らの巨体を精いっぱい縮こまらせて、この説教を聞き続けるほかない。
話は聞きつつも、この話はいつ終わるのだろうと言う思いを抱きながら。
………………………………
「で、今は封印開放を最大十分まで持続出来て、途中で封印すれば時間は持ち越せて感知系にDPを振り分けた事で封印開放をしないままであのダンジョンを歩いていくことは問題ではない、そういう事でいいのね?」
「は、はい……」
ひとしきり話が終わった後にジュディが秋彦の現状を確認しだした。どうやら恐怖の説教は終わったらしい。
約二時間の長い説教だった。ヒステリックなまでに金切り声を出しての説教はかなり精神に来るものがあった。元を正せば秋彦が悪いのだが。
「と言う事は封印開放を行うのは戦う時だけでいいのね。そして封印をしている状態でもあの暗闇の中感知は出来る。つまり封印開放の10分と言う時間は戦いだけに費やすことが出来るのね」
「あ、ああ。今までもそうやって運用出来ていた。だから皆が何とか守りに徹していればたぶん完全にお荷物のカメラマンさんが変な動きしなければ……」
「行けるのね?」
「たぶん……」
「多分?!」
「い、いけます! やれます!」
かなり圧のある質問を投げかけて来るジュディに秋彦は自信なさそうに答える。正座をして縮こまっている秋彦は見た目以上に小さく見えるし、逆に秋彦の正座をしている膝を踏みつけ怒りを露わにした表情で見るジュディ。
普段は大人しく秋彦の言う事を聞いているジュディに似つかわしくない苛烈な表情で縮こまる秋彦に詰問する。
「そう……分かったわ。でもまだ確証は持てないわ。だから、久しぶりにレインボーウィザーズ全員集めてあのバグダンジョンに入ってみましょう!」
「え?! い、行くの!?」
「行けるんでしょう? なら行く以外に選択肢はないわ。あのダンジョンの魔物を実際にあの一匹一匹がとんでもない悪魔どもを屠る姿を見ないと安心できないもの」
かなりの強弁に思わずたじろぐ。普段あまり自己主張をせず秋彦の選択をよく聞くジュディらしくないとも思える。
だがここ最近同棲している秋彦は知っている。ジュディは本来気が強くかなり自分の意見を通す気質がある。
その性格は頼もしくある一方、独断専行してしまうきらいがあるともいえるが、今は頼りになる。
「まあとにかく俺もそこそこやれるって所を見せなきゃいけないな。俺頑張るよ」
「頼りにしてるからね、ダーリン」
ガッツポーズでやれるアピールをする秋彦。
そんな秋彦を見て、先ほどまであんなに秋彦を激しく叱りつけていたとは思えない笑顔で抱き着いてくるジュディ。この緩急の付け方がジュディの人心掌握術なのかもしれない。
かくしてレインボーウィザーズの面々に召集がかかる。
目指すは、南雲家に生まれたバグダンジョンの探索。お宝は二の次として、魔物の安定した討伐である!
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次回の投稿は2021年1月25日午前0時予定です。
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