第二十六話 迷宮時代の幕開け
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「や、やった……うぐ!」
「秋彦!」
秋彦が膝を折ったことで優太が驚いて向かってきた。
はっきり言ってやり切ったことで、緊張が解けたのだ。なので緊張が抑えていた体へのダメージが出てきた。全身が悲鳴を上げている。
「大丈夫?!」
「ぽ、ポーションくれ……」
「あ、うん、はいこれ!」
「サンキュ」
ポーションを5本飲み干し、秋彦の体も魔力も万全に戻った所で改めてマップを開いて確認する。やはり東京全土にいた魔物は一匹たりともいなくなっていた。
「……本当に解決できたな……俺たちだけで」
誰かがぽつりと言った。もちろん、他の場所ではまだ事は済んでいない。
無傷で終わったわけではない。今回の一件で被災者という形で死者は大勢いた。それこそ数えきれないほどに。
だが、それでもこの東京は自分たちだけでなんとかできた。それはとても自信につながる事だった。それはとても勇気が出る事だった。こんな修羅場を自分たちで解決できたとは。
しかしまだ事が済んでいない以上はまだ気を緩めるわけにはいかない。
全員はとりあえず○○××公園へ戻ることにした。
だが、一つやり残したことがある。
「あ、そうだ、その前に。えっと『力よ、こいつを調べよ』アナライズ!」
そう、自分が戦った化け物の詳細だ。思えば唯一解析できる秋彦が率先して戦いに行ってしまったので解析役がいなかったのだ。秋彦は改めてアナライズを行う。
ダンジョンウォッチが起動しダンジョンウォッチの機能の一つである【ライブラリ】が表示され、アナライズで調べたこのキメラのような化け物の情報が現れた。
名前:フィールドキメラゴブリン
レベル25
肉体力:400
魔法力:300
戦闘力:2000
有利属性:風、地
不利属性:炎、水
スキル
大爪斬り:(【モンスタースキル】【アクティブ】巨大な爪で引き裂く)
双頭噛:(【モンスタースキル】【アクティブ】二つの頭で噛みつく。二回攻撃)
咆哮(大):(【モンスタースキル】【アクティブ】咆哮を上げることで闘争心を掻き立て、敵を怯えさせる。自らの攻撃力を上げ、敵の防御力を下げる)
炎ブレス(頭):(【モンスタースキル】【アクティブ】巨大な炎の息を吐き対象に大ダメージを与える)
氷ブレス(頭):(【モンスタースキル】【アクティブ】凍えるほど氷の息を吐き対象に大ダメージを与える)
毒噛み(尾):(【モンスタースキル】【アクティブ】魔法毒の牙で噛む事で、確率で対象に状態異常【毒】状態にする)
絡みつき(尾)(【モンスタースキル】【アクティブ】長い体で相手を拘束することで、状態異常【拘束】状態にする。拘束している間は自身も動けなくなる)
地上に現れた魔物がダンジョンの生態系外の魔物を喰らい、取り込んだことで生まれた魔物。その見た目、実力に雑魚魔物の面影を感じることはできないだろう。
ユニークモンスターであり、同じ魔物は二度と出現しない。
「一応ゴブリンなのかこれ……」
「戦闘力2000!? そりゃあんな一撃で前線が崩れる訳だよ……」
「ていうか本当によく勝てたな……」
全員がボスのデータを見て全員どよめく。
どうやらアナライズで出たデータは一人が知ると、近くにいるダンジョンウォッチ所有者全員に共有されるらしく、秋彦がアナライズした時点で全員が知ることができるのだ。
最後に一つ確認をした後に改めて全員で○○××公園に戻ることにする。
………………………………
公園に戻ると、公園は大騒ぎになっていた。
避難民はスマホ片手に騒いでいるし、自衛隊はダンジョンから戻った一隊が中の様子を報告してまた騒ぎになっている。
「な、なんなんだこれ……?」
「さ、さあ……?」
「すまない、これから僕たちは自衛隊の方たちと現状と今後の方針を相談してくる。今日はまだまだ終わりそうにないな……あ、皆はテントで休ませてもらうといい。自衛隊の方に休憩スペースを用意してもらうように言っておくから」
雨宮はそういうとさっさと自衛隊の人たちの方へ行ってしまった。
「はぁー……やっと一息つける……」
「あ、あの! すみません、ちょっといいですか!」
お言葉に甘えて、さっさとテントに向かおうとしたら呼び止められた。誰だかは知らないがスーツ姿の男性と女性の二人組。
正直眠くて仕方ないが、無下にできないので応対する。
「はい、なんでしょう?」
「あの、これって本物なんですよね! どうやったらこんなことが!?」
「……ええ!? なんでこれが映像に?!」
スマホに映っていたのはツブヤイッターのツイートだ。
内容はこうだ。
≪東京駅で隠れていたら、目の前で超次元バトルが行われてるんだが、俺は何を見ているんだろう……≫
という一文と、先ほどまでの雑魚魔物の蟲毒バトルからのボスバトルの全貌が上からの目線で一部始終収められていた。ホールの2階部分に隠れていたらしく、外でのバトルはガラス越しに、駅の中でのバトルは真上から撮られていた。
秋彦が一対一で時間稼ぎに戦っていたところとかも丸々映っている。
ネット上ではやれ映画のティザーだのやれCGだのとも言われているが、世界中のあちこちで雑魚魔物が溢れ出ている以上、おおむね真実なのだろうと言われている。
この動画は今後の魔物対策にも使用されるのではという話もあり、映っている人々。特にボスクラスの敵と一対一で戦ったのは一体何者だと、情報が錯綜している。
いや、確かにそうなのだろう。
こうやって自分たちが戦い、奔走すれば、それを面白半分にネットに投稿する人も現れるだろう。もはや無名の誰かではいられないのは分かっていた。
しかし、いつかであって今ではない。そう高をくくっていたのだ。
こんなにもあっさり顔が消されていない。しかもこんな無茶苦茶に戦った動画が出回るなんて……
「教えてください! あなたはどうやってこんな強さを?!」
「あ、あのすみません、ちょっと寝かせてください……なんかもう一気にどっと疲れた……」
フラフラとその場を立ち去る秋彦達。
世界にダンジョンが現れ、そしてそれを受け止め、変化する世界。
国も変わる、状況も変わる。もちろん人も変わる。
この世界は、ダンジョンによって激動の時代を迎えた。
日本においてその最先端にいる探索者達。
第一の変化は、自分たちの知名度の向上、と言えるだろう。
頑張れ秋彦。頑張って受け入れるんだ。
えー、皆様。
長らくのご声援、ありがとうございます。りあダン! 現実世界にダンジョンが?! 本日を持ちまして、第一章、完結となります。
長らくのお付き合いありがとうございます。そしてこれからも、どうかよろしくお願いいたします。




