第二百四十話 ジュディの現在
累計PV数415万突破しました!
これも皆さまからのご愛顧の賜物です。
これからもりあダンをよろしくお願いいたします!
探索者の義務である測定が終わった後、秋彦達はそれぞれ解散し、家路につく。勿論全員テレポテーションである。
今レインボーウィザーズは全員がテレポテーションを使えるようになっているのだ。
と言うのも、第一次人魔大戦が終わった後、秋彦のレベルも魔法力も向上したため、秋彦がとうとう無属性の魔筆を使えるようになったのである。
それはつまり、魔石を魔法石に加工することが出来るようになったと言う事である。
それはどこの誰であっても待望の瞬間と言えるだろう。無属性魔法の汎用性の高さを考えれば当然だ。
勿論、特に欲しがられたのはテレポテーションの魔法石である。瞬間移動魔法を誰でも扱えるなんて、どこの誰にとっても夢のような話ではあるだろう。
しかしそれを使用してどこかの馬鹿がテロリストとして活動されては困るので、国際法と照らし合わせて協議の真っ最中らしい。
が、とりあえず秋彦は「俺がいるんならどのみち変わんねーんだからいーだろ」としてレインボーウィザーズのメンバーなら問題ないだろうとして先にテレポテーションの魔法石を作成して渡しているのだ。
後に秋彦以外のレインボーウィザーズの面々は「便利すぎてもう手放せない」と口をそろえている。
という訳で帰る場所が同じであるジュディ以外とは一旦別れ、その後ジュディと一緒に帰宅する。
………………………………
帰る自宅は勿論、将来秋彦達に譲渡が決まっているすぐ近くにダンジョンがある方の家である。
日本では一般的に、住宅地の道路に歩道はない為、道路など公共のスペースと私有地との境目として、門やフェンスが設けられているが、この家中々に敷地が広く、道路から門までの距離も普通の一般家庭と比べるとちょっと長い。
車も一応別の入り口から入れるし車庫もしっかりあるが、秋彦達には車を年齢的に運転も所持も出来ないので無用の長物である。まあいずれはと言ったところだろうか。
とは言え流石にもう慣れたもので門の鍵を開けて庭に入ると秋彦の従魔である龍之介とジュディの従魔であるエリザベスが仲良く遊んでいた。勿論人の姿である。
家の小さな池の隣、家の隅に作った砂場で龍之介は砂遊びをしており、エリザベスはそれを微笑ましそうに家の縁側で眺めていた。
龍之介は秋彦の幼少時代を思わせる姿をしているが、エリザベスはある程度成人した姿をしており、長い金髪と相まってその姿は妖精のようである。
だが、そんな背丈の大きい子が花の冠とネグリジェだけの姿と言うのはなかなか目に悪い。しかもそんな姿で平然と外に出るのだから困ったものではある。
龍之介の人間形態の服装は最近人気のアニメのプリントがなされているが普通の服を着ており、全体的に子供っぽいが見てくれ相応であると言うのにエリザベスは頑なにもう冬も近いと言う季節であってもそんな恰好で外をうろつくのである。
どうしてそんなに差がついたのだろうか。
ともあれ、そんな二匹は二人を見つけると声を掛けて来る。
「あ、お父さんお母さんおかえりなさい!」
「おう、ただいま」
「龍ちゃん、エリー、ただいま」
「おかえりなさいませお父様、お母様」
二人とも当たり前のように秋彦達を父と母呼ばわりしている上に、二人とも否定も諌めもしない。将来的にはそうなる可能性が高いのでもう敢えて止めていないのである。何度訂正しても聞かないためもう諦めたともいえるが。
「留守中変わったことはあったか?」
「特にないよ、あ、お母さん宛てに荷物が届いてたよ! えーごで書かれてた!」
「私宛に英語? 通販を頼んだ覚えはないけど」
「お爺様からですわ」
龍之介もエリザベスも最近は人の姿に擬態できるようになったこともあり、留守番も任せられるようになっているのが大きい。ネットショップで頼んだ商品の受け取りも出来るし、侵入者撃退も任せておける。
……最近多いのだ。家に盗聴器を仕掛けに来ようとしたり変な物を家の前に置いていこうとするような連中が。正直秋彦にとっては頭の痛い話だ。ジュディは有名税として割り切っているようだが。
「お父様が? また開発中の商品のレビュー欲しさに送ってきたのかしら?」
「ええ……ここ一か月で既に3個くらい送られてきてるよな……本当に元気だよな、義父様って……」
「あのくらいのバイタリティーが無ければ今の世の中、社長は務まらないのよ」
「そうかな……そうかも……」
言われてしまうとなんだか本当にそんな気がしてくるのが恐ろしい所である。
この家は最近日本にも支社を置いたマクベス夫妻も生活の拠点にしている。主に探索者向けの装備開発に力を入れているようだ。
気持ちは分かる。何せ探索者が何に一番金を掛けるかと言えば自身の装備にだからだ。せいぜい二番目にポーションなどの回復系の道具、三番目に生産スキル御用達のレシピ本と言ったところである。
探索者と言う仕事は相手がどんなに雑魚であろうとも相手がこちらを殺しに来ている以上常に命がけになる。
そんな時に質の悪い装備を付けていて負けて殺された時、装備の質が悪かったから死んだなどと言う後悔などしたくはない。結局探索者は命あっての物種なのだ。
死んでしまっては何の意味もない。死んでしまっては本気の装備で挑めば負けなかったなどと言う言い訳すらできないのだから。
故に装備の開発と言うのは常に探索者から需要があり、場合によっては開発費を出してくれるパトロンでさえある。
探索者に相手にされたいなら装備を作れ、これは探索者と接点を持ちたいあらゆる企業の命題とさえいえるのだ。
「本当に、お父様がもうちょっとおとなしければ、私がこんなに苦労することもないのだけどね」
「あー、次期日本支社長だっけ?」
「とにかく日本とイギリスの関係を良くして日本の顧客を大量に手に入れる事が、今の私の使命よ。探索者としても活動したいんだけどね……」
「お、お疲れ」
「まあやりがいがあるし、私の実力を認めさせるいい機会でもあるわ。ただ家の名前におんぶに抱っこの女じゃないって所、見せてやるんだから!」
激しく野心に燃えるジュディ。魔法力のオーラが炎のように噴き出している。
「とりあえず飯は俺が作るわ。ジュディは風呂の掃除だけ頼む」
「わかったわ、綺麗にするからね!」
皆様からのご愛顧、誠に痛み入ります。
これからも評価、ブックマーク、感想など、皆様の応援を糧に頑張って書いていきます。
次回の投稿は2021年1月12日午前0時予定です。
応援宜しくお願い致します!