幕間7 半グレ共の管撒きと謎の男
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これからもりあダンをよろしくお願いいたします!
「あー、つまんねーなクソ!」
拳を机にたたきつけて苛立ちを露わにする髪を金と紫に染め上げた男。男の風貌は現代社会において明らかに普通とは外れる。耳には三つのピアス、痩せぎすの身体はパンクファッション系の服装でコーディネートされている。その様子から見てもビジュアル系のバンドメンバーでない限りはまっとうな人間ではないことは明らかだ。
男がいるのはとある路地裏にある少々大きめのバー。その中で酒を飲んで管を巻く数人の集団の一人として酒が入った事で気が大きくなった男が声を荒げたのである。
「本当だよな! 探索者ギルドめ……補導歴程度でガタガタ言いやがって、今人手が足んねーんじゃねーのかよ!」
「せっかく俺らが力貸してやろうってのにさ! ふざけてるぜ!」
ギャーギャーと喚くように探索者ギルドへの不満をぶつけあう。
彼らはいわゆるチンピラ、あるいは半グレと呼ばれるような、暴力を振るう事や自分の力をもって人を脅し、言う事を聞かせることがかっこいい、または自分は強いと勘違いしている連中である。
こんな世の中にあってもこういったタイプの連中は後を絶たずに生まれてくる。彼らの生まれ育った環境には同情すべき点があると言えるかもしれないが、それでも彼らが世や世間を疎んで行う行為は褒められるものではないし、下手をすれば露見していないか、自覚が無いだけで犯罪行為だってある。
そんな連中も探索者と言う職業には大いに興味をそそられていた。いや、むしろそんな連中だからこそと言うべきか。
何せ普段は人から恐れられ、逃げられるだけのような行為である暴力的な行いが魔物相手であれば正当性が発生するどころか、暴力によって魔物を殺せばむしろ称賛されるのだ。暴力を振るう事や自分の力をもって人を脅し、言う事を聞かせることがかっこいい、または自分は強いと勘違いしている連中にとっては天職と言っても過言ではないだろう。
だが、探索者ギルドは犯罪歴、あるいは補導歴のある人々に迷宮探索免許証を発行することはない。
なぜなら探索者と言う職業は信用第一なのだ。
一人一人が成長し、レベルが5になればプロの格闘家、あるいは武術家であっても太刀打ちできないし、レベルが10にもなれば相手が探索者でなければ太刀打ちできるような存在ではない。
そんなものただいるだけで人々にとっては脅威なのだ。増してチンピラだの半グレなんかがそんな力を持つなんて悪夢でしかない。
だがそれは本来探索者であっても同じことのはずである。それほどの力を持ちつつ探索者が世に存在を認められているのは、ひとえに探索者ギルドが発行する迷宮探索免許証の信用性なのだ。
この迷宮探索免許証を持っているだけでも、この人たちは現代社会の道徳性、人間性もギルドが保証する人物であると太鼓判を押している。
この人はレベルがどんなに上がっても決して問題行動を起こさないし、むやみやたらに暴力を振りかざしたりしないという根拠にもなる。
故に、今や法的にもダンジョン周辺にはギルドの監視員が付いて要る為ギルドのライセンスやそれが不要なほどの有名人でない限りは監視員による迷宮探索免許証の提示が求められるようになったが、そのギルドの目をかいくぐり、無断でダンジョンに入ってレベルを上げ、レベル10を超して強くなろうとも人々はそんな連中に依頼などしないし、持ち掛けたりもしない。
ギルドの発行する迷宮探索免許証には国家機関となった今、それほどの信用があるのだ。
当然そんな信用のある物を与えるに当たって、ギルドは細心の注意を払う。
筆記試験もそうだが、試験を受けた者達にはその素性を、それこそ探偵を雇って調査したのではないかと思われるほどに根掘り葉掘り暴かれる。
周囲からの聞き込みなんて生易しい物ではなく、学校などでトラブルを起こしていたか、所属していたサークルや学校のクラスでどういう人間だったかなども、徹底的に洗い出される。そしてその上で総合的に判断を下される。
地方都市奪還作戦前はそこまで厳しくはなかった探索者ギルドの試験だが、最近は特に厳しくなっている。
周囲の目がそれほどに探索者に対して注がれていると言う事でもあり、今の探索者とは、それ則ち魔物達が荒していく人々の暮らしと秩序を守り通す集団であると認識されているのだ。審査も慎重になると言う物である。
「俺らも探索者になってガッポガッポ儲けたいぜ……誰かゴールドランク探索者にコネないのかよ」
「あほか、そんなのいたらとっくにお願いしてるっつーの!」
今から探索者になろうと言う人々にとって最大のハードルは信用に他ならない。筆記試験は必死に勉強すればまだ可能性はあるが、個人の人柄によるその後の信用審査だけはどうしようもない。犯罪歴や補導歴など論外で、いじめの加害者やそう見える様な行いをしたことをあるだけで最近は弾かれてしまう。
だがだからこそ、そんな人達であってもゴールドランク探索者がこの連中は大丈夫だ、もしこいつらが悪事を働いた場合は自分が全責任を取ると言う旨をゴールドランク探索者からの紹介状としてギルドに提出すれば、過去に犯罪歴や補導歴があろうとも可能性の芽が出て来る。
そこら辺は流石に地方都市奪還作戦に参加し、今や人々から【護国の勇士】と呼ばれるに至るゴールドランク探索者達だ。命を懸けて日本の為に戦ったと言う信用はそうそう簡単に崩れるものではない。
しかしもちろん、今の彼らにそんなものがある訳がなく、彼らがダンジョンを使って真っ当に稼ぐ手段、あるいは可能性はほぼないに等しいのだ。
「あーああ、暴力で金になるなんて羨ましいぜ……」
「なんかいい手はないもんかね……」
愚痴紛れに願望を口にした男たち。
それを聞いたのか、その問いともいえないような問いに答えた者がいた。
「ありますよ。そんないい手がね」
「ああ!? なんだおめーは?!」
「私ですか? 私はあなた方の様な人材を探し求めている者ですよ」
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次回の投稿は2021年1月6日午前0時予定です。
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