幕間6 雨宮と舞薗の会談。ギルドの今後について
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これも皆さまからのご愛顧の賜物です。
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「本当によろしいのですか? 引き続き私がギルドマスターとしてギルドを率いて」
「私たちの結論としては君以上の適任がいないと言う事になったのです。君以外の、君が見出した他の各地方のギルドマスター達もまたそれぞれの地方でカリスマ的な人気を誇っていることですしね」
東京銀座。
その一角の高級寿司店で、今、重々しい会話がなされている。ギルドマスターを束ねる立場である雨宮と、レインボーウィザーズのチームメイトである舞薗茜の父、舞薗巌が、今回は有力な政治家の一族の顔をもって話をしていた。
今の舞薗巌は一人の子を持つ父親ではなく有力政治家としているだけあって物腰が柔らかそうな声と喋り口調をしていても、殺気とも違う闘気とも違う圧倒的なオーラを発している。
対面している雨宮は目の前にいる、雨宮が軽くはたいただけで死にそうな初老の男性に気圧されており、冷や汗が止まらない。
雨宮とて元は新宿歌舞伎町でホストをやっていた男だ。人と話をし、相手に気持ちよく話をさせ、気持ちよく金を出させるプロだった。今でも物おじせずに誰とでも話は出来るつもりだった。
だが、この人はそれまでの人々とは一線を画す物を持っていて、それを前面に出すかのように話をしてきている。油断しているとあっという間に呑まれるような迫力があった。
思わず膝を折りそうになる相手だが、それでも言わねばならないことは言うあたりは流石のギルドマスターである。
「あのアンデッドドラゴンを世に顕現させてしまい、ダイダラボッチによる攻略の失敗をも呑み込むと? 今回の我々の失敗を突かれ続ければ我々は退陣せざるを得ません。ギルドの得ている収益は、皆様方も興味があると思っていましたが」
ギルドは今正に今後の進退の節目にあると言っていいだろう。
探索者のための法整備が進む一方、代わりに国がギルドに対して本格的に介入する。探索者にとって有利な法整備が進むにつれそう噂になってはいたが、ここに来て舞薗巌議員から話がしたいと言って食事に誘われた時はいよいよその沙汰が来たのかと雨宮は覚悟を決めていたのだが。
雨宮達は退陣、探索者達は政府の息のかかったギルドの元で高い税金と渋くなった買取値の元で使われる。
最悪ブラック企業のように朝から晩までギルドにこき使われて探索者達を徹底的に搾り取り、使えなくなったら捨てるまで行くかもしれないとまで思っていた。
雨宮自身は政治家の事を悪くは思っていなかったが、探索者に精一杯配慮し、全力で探索者に寄り添って尚ギルドの上げる収益や支払う税金と言うのは驚くべきものがあった。これがもし人を極限にまで使い倒すほどに働かせればとてつもない収益を生むのは容易に想像がつくと言う物である。舞薗議員のようにそれをよしとせずに抵抗しても、それを押し切ってついに行おうとしているのかと思っていた。
だが、人員も体制も今までとは大きくは変えず、いくつかの追加の義務を課し、政府がよこす御意見番をつける事で大まかな体制は変えないという。
「まあ興味津々な者もいます、勿論。でも一部の人間が考える様な非人道的な方法で探索者の人たちから搾取に近いようなやり方をしても結局困るのは我々なのですよ。君だってそんなことは分かっているはずでしょう?」
「……まあそれは当然ですね」
「今君たちを先の最終戦での失敗を槍玉に挙げて退陣に追いやれたとしても、恐らく探索者達はついてこないでしょう。俺達もギルドマスターのように使えなくなったらポイっと捨てられる。なんて思われてみなさい。今探索者は日本どころか世界中で必要とされています。先の大戦で名を上げた人々はたちまち日本を見限り外国へ渡るでしょう。日本よりも条件のいい稼ぎの場を求めてね」
法の名のもとに探索者をがんじがらめにすることは勿論出来る。多くの探索者達を育てる名目で緩めていた税収を強めていけば国の収益は大きくなるだろう。しかしそんなことをして得られる収益など一時の物に過ぎない。
なぜならそんなことをしていれば探索者達は絶対に日本で探索者としての活動を行う事をやめ、日本よりも条件の良い国へ旅立ってしまうだろう。
そもそも探索者と言うのはダンジョンポイント、通称DPを消費することで学力など、自らの力を上げることが出来るのだ。語学力を上昇させるなどたやすい事だ。
語学の壁もなく、日本の探索者に寄り添わないことを行い続ければたちまち人は離れていくだろう。例え先の地方都市奪還作戦に参加した事でゴールドランク探索者へと昇格した人々であっても、その地位を捨てていくことだろう。
「人材の流出。もう何度も日本はそれで痛い目を見てきた。今回こそは資源になる人材を流出させてはいけない、今度は間違えてはならない。我々はそう思うのです。そしてそのためには、貴方のように探索者に寄り添う人が上に立ってくれていた方が我々としても大変都合がいいのですよ」
「そ、そうでしたか……」
「まあ、反対する者もいますけどね、それは我々が押さえつけていくつもりです。目先の物しか見えていない。若人の行く道を応援するどころか阻害しようとする連中を押しとどめるのも、老人の務めですからね」
「い、いやそんなことは……」
どう返答すべきか返しに困っていると巌はにこりと笑う。
「私がここでの食事を提案したのは単純に君と親交を深めるためだけです。娘の話とは違う探索者達のお話、是非色々お聞かせ願いたい」
どうやら堅苦しい話はここで終わりらしい。先ほどまでの重苦しい空気が窓を開けて風が入ってきたかのように流されていく。
となれば、ここからは雨宮にとっては慣れたものである。ゲストを楽しませる。
「は、はい。わかりました。こう見えて元ホストですからね。話のネタはいっぱいありますよ! では、まず乾杯しましょうか」
「おお、そうだったね、いやすまない。酒を前にして長々と話をしてしまった」
「いえいえ! 面白い事や我々についてもお話しできることはいっぱいありますので、ぜひ楽しんでいってください、では……乾杯!」
「乾杯!」
その後、雨宮はギルドマスターとして一探索者として体験経験したことを面白おかしく語りつくし、巌も大いに楽しめたとても良い酒の席になった。
こうして巌は探索者に対し理解を深め、雨宮は当分は今の体制を続けられることに安堵したのであった。
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次回の投稿は2021年1月5日午前0時予定です。
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