幕間5 南雲夫妻の帰還
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これも皆さまからのご愛顧の賜物です。
これからもりあダンをよろしくお願いいたします!
「いやー、帰ってこれたねぇ。何というかみんなが僕たちを見る目が怖かったけど……」
「本当! ああ、怖かったわ……」
地方都市奪還作戦終了から一か月後の羽田。
東京国際空港にて安堵の表情を浮かべながら飛行機から降りたつ秋彦の両親。二人は今、ここに降り立つことが出来たことに感動していた。
なんせ今日本行きのチケットはアメリカでは取ることが大変に難しい状態だ。それは今ここは世界一安全な国と言っても過言ではないからだ。
この国は、つい一か月前に全世界最初の魔物の掃討が終了した国である。地上に魔物のいない唯一の国だ。
魔物の脅威に怯える人々なら何を置いても滞在したい場所として人気を集めている。
南雲夫妻は入国審査をさっさと済ませて荷物の受け取りへと急ぐ。
今飛行機から降りてきている人々は日本人、もしくは外国の人々であっても入国拒否の網を通り抜けられた一部の人々だけだ。
滞在したい場所として人気を集めているとはいう物の、だからといって、全世界から人々が一斉にやって来てはこの狭い日本ではあっという間にパンクしてしまう。それ故に現在は日本の上陸審査が厳しいものとなっており、観光だけでなく、仕事や就労、勉学の為であっても日本に上陸することは難しい。
それこそ日本に配偶者がいたり、日本に外国の荷物を届けに来ただけの一時的な上陸などでない限り厳しいものがある。
その点でいえば秋彦夫妻は簡単だ。あくまで二人は仕事でアメリカに行っていただけなのだから当然国籍は日本だ。二人はただ帰ってきただけに過ぎないのであっさりと申請が通った。
だが、申請が確定した時の周りの羨望と嫉妬の視線が絡みつくかのように投げかけられた事を肌で感じていただけに、夫妻は正直今こうして日本に帰ってくるまでは気が休まらなかった。
羨ましいと言ってくるだけの人はまだいい。パスポートやチケットをよこせと言ってくる奴や、逆恨みから嫌がらせをしてくる奴らまでいたのだから正直堪った物ではなかった。人は余裕がなくなるとこうまで浅ましくなるのかと思った物だ。
「でも、それでも僕たちなんてまだましだろうね」
「……ええ、まさか息子の名前に助けられるとは思わなかったわ……」
そう、そんな境遇でも夫妻に降りかかってきた災難などまだマシなのだ。
何せこの夫婦の息子はあの南雲秋彦だ。日本で地方都市奪還作戦を成功の決定打を与えた現代の大英雄。
もしもこの二人に何かがあってその大英雄を怒らせるなんて言うことがあったら、それは大事である。
アメリカ政府が威信をかけて下手人を探して逮捕するだろうし、今の日本政府が抗議をして来たらとてもじゃないがはねのけられないので結局軍、警察が総出で駆り出されることになるだろう。
何よりあのアンデッドドラゴンを倒した秋彦が殴り込んできた、なんてことになったらあの戦いの最後に見せたあの巨大な槍を降って落とさせる技を乱れ撃ちくらいして、都市一つ事壊滅させてでも下手人を殺そうとするかもしれない。
そう考えると、いかに嫉妬に駆られようと、直接的に手を出すのは自殺行為に等しい。詰まらない嫌がらせ程度にとどめておくのが一番。そう考えているのだ。
勿論夫妻はいくら身内に甘く、手を出されたら絶対に手を出し返す性格の秋彦でもそんな無茶苦茶はしないと思っていても、周りがそう思っているのだ。
ならばもうそう思わせておいた方が自分達の安全につながると言う物である。
そもそも根拠のないうわさに勝手に踊らされているのは向こうなのだから、せいぜい勝手にそのまま踊っていればいいとも考えているのだが。
そして荷物を受け取り、空港の出口を出たあたりで、出迎えがあった。
ただし思っていた迎えではなかったが。
「おおおおおおお!!! 南雲夫妻のお帰りだ!」
「おかえりなさい、大英雄のご両親!」
「すみません、お話をお伺いしたいのですが!!」
出迎えの第一陣は、マスコミと秋彦達のファンからの盛大なカメラの撮影によるフラッシュだった。
眩しさに思わず顔を覆うが、シャッター音は止まらない。
「今回の秋彦君の偉業について一言頂けないでしょうか!?」
「今回の帰国はどのような理由なのですか!?」
「あ、あはは……ど、どうも」
余りの勢いに思わずたじろいだが、すぐに気を取り直して軽く挨拶をする。元々この手の連中に囲まれてコメントを求められたのはこの一か月間でアメリカでもよくあったのだ。いい加減慣れると言う物である。
にこやかに挨拶をしつつもそのまま歩いていると、夫妻は再び声を掛けられた。
「来た来た、父ちゃん! 母ちゃん!」
今度は聞き覚えのある声だったので、フラッシュで眩しいながらも目を開く。そこにいたのはよく知った顔だった。
ひときわ大きい筋骨隆々とした二人の自慢の息子と、その親友であり自分達の親友である石動源太の息子である優太君。
そして最近テレビでそんな二人とよく一緒にいるところを見る秋彦達のチームであるレインボーウィザーズの仲間たちの姿である。
その姿に安心して、秋彦と握手をする。
「おかえりー、アメリカどうだった?」
「いや、大変だったよ本当に……いろいろとね」
「まあ、積もる話は家に帰ってからにしようぜ。こんなに人いたら思い出話も出来ねーしな」
「あ、すみません! おかえりになる前に一枚だけよろしいでしょうか?」
「……はーい」
カメラマンから写真のリクエストに応え、一度だけ写真の為に秋彦と早雲の写真を撮らせた後、テレポーテーションで家に帰る。初めてのテレポーテーションによる移動だったが、半ば逃げ帰る様な状態だったので楽しむ余裕もなかったのだけが残念だった南雲夫妻であった。
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次回の投稿は2021年1月4日午前0時予定です。
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