幕間4 仲町商店街の人々は、探索者達の勢いに乗ってみたい
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これも皆さまからのご愛顧の賜物です。
これからもりあダンをよろしくお願いいたします!
優太の実家である、中華料理店の赤龍。商店街の中で唯一の中華料理店であるこの店は、今戦場のような騒がしさだった。
「おやっさん! オーク肉のチャーシュー麺とオーク肉入りの中華丼をくれ!」
「こっちはオーク肉の回鍋肉を! 3つな!」
「あいよー! ったくてめーらちったぁ手加減しやがれ!」
「やなこった! オーク肉、いや、魔物素材の料理なんてめったなことじゃ喰えねーんだから行けるとこまで行くに決まってんだろ!」
「恨むならおやっさん自身の発言を恨むんだな!」
容赦のない注文に怒り半分呆れ半分に声を出す、優太の父親にして赤龍の店主である石動 源太が大声を出す、が、そんな様子もガハハハッと笑いながら受け流す。
赤龍の常連や商店街の人々は魔物素材で作られた料理を呑み込むように掻き込んでいた。
何せ今の赤龍は秋彦と優太率いるレインボーウィザーズが日本を平和に多大な貢献をしたことで大盛り上がりであり、この日ばかりはめでたさのあまりに店の料理全品無料と言う在庫処分にしたって大盤振る舞いすぎる行為を行っているのだ。
ただの中華料理店ではない、全世界どこを見てもまだ珍しい魔物食材を扱う店がである。勿論店主があの最終決戦が始まる直前に宣言したせいで大勢が知っている訳では無いが、それでも知っている人間は知っているし、そのことをSNSで拡散させた奴はいる。
結果、今赤龍は人がいっぱいになって客全員が魔物食材を使った料理をむさぼっているのである。
当然どんどんなくなる魔物食材に客に遠慮しろと怒っていると思った。が、実際は少し違うらしい。
「そうじゃないよ! 材料とかはこの際いいのよ、ただ皆食べ過ぎよ! 一人で無茶苦茶な量食べてるじゃない! 作るこっちは大忙しよ!」
「女将さんそれだってしょーがねーよ、こんなうまくて食うだけでちょっと強くなれる様な物、いくらでも食えちまう。そんなの店のメニューにおいてりゃそりゃ腹が裂ける程喰っちまうってもんだ!」
「全くしょうがない奴らだよ! 胃薬は売ってないからね!」
呆れたように大声を出す優太の母、石動 耶麻。
正直客に対する言葉づかいではないが、今この店にいる常連たちはすべて同じ仲町商店街で店を出し、時に協力し、時に競い合いながら切磋琢磨し続けてきた人々や、商店街の近くに長く住んでいる客と言うより友人に近い存在ばかりである。このくらいの距離感でちょうどいい位なのだ。
「しっかし……魔物食材ってのはうんまいねー! この肉の暴力的な旨味と言ったらないね!」
「ほんとほんと! 魔物の死骸を肥料にして育てた野菜も育つ速度も味も異常にうまいしなぁ!」
そういいながら回鍋肉をつまみにビールを飲み干す蔵屋敷精肉店の店長と八百屋の北沢の店長。この二人は幼馴染で飲み友達だ。
「今はまだ仕入れ値が高くて手が出せねーんだよな、秋ちゃん達に頼んで俺の店にオーク肉を卸してもらえないか交渉したいくらいだぜ」
「そんなの俺だってそうさ、野菜のような魔物がいた時にはぜひとも秋君達にウチに卸してもらいたいもんだ!」
「あんた達ねぇ、あんまり秋ちゃんと優ちゃんに迷惑が掛かる様なこと言うんじゃないよ? 親として、親友夫婦の息子ってことで家族ぐるみで付き合いのある子として言わせてもらうよ?」
「そんなの分かってるさ、でも赤龍さんの儲かり具合見てると俺らも探索者達と上手く付き合いを持ちてぇなと思っちまうのさ」
それは酒が入っているのでついつい出てしまう、商店街で商売をしている人々が抱えている本音だ。
赤龍は今や探索者御用達の施設であり、物凄い勢いでお金が落ちていく場所だ。しかも東京へは電車で一本の駅近くの商店街でもある。
そのためここには一見そうは見えなくても、実際には金持ちである探索者が頻繁に出入りする場でもある。赤龍目当てにやってきた探索者が興味を引けた店で探索者が大金を落としていくことは珍しくない。
「上手く関係を持てれば、立松さん所の古本屋みたいにめっちゃ稼げるようにもなるだろうしなぁ」
尚、この商店街では赤龍以外にもすでに探索者と良い仲を取り持つことで寂れかかった商店街の中で復活を遂げた店がある。
それが【立松古書店】である。この店は古本屋という性質上、本の買取も行ってきていたが、何の因果かそんな店に職人御用達のレシピ本が流れ込んできたのだ。
そしてそれが赤龍目当ての探索者の目に留まり、そこからレシピ本の買取、売り出しも始めたところこれが大当たりしたのだ。
元々簡単なレベルのレシピ本はすぐに売りに出されるし、読みながら作成するとスキルレベルが低くても上手く作れるようになるレシピ本は、その性質上職人としてスタートしたいと思う人は必ず買う代物である。
なので既にレシピ本なしでも本のすべての道具を作れるようになったら、もう必要ないレシピ本は売るというサイクルが古本屋のやり方と合致していたのだ。
そのついでに今まで店においてあった本にも興味を持ってくれたことで本を大量に買い漁る探索者もいてくれるので、この相乗効果は侮れないものがある。
「そういうの見るとな、栄枯盛衰あれど俺らもこの時代の波に乗りたい! って、思っちゃうんだよなぁ……」
「そういう事でしたら、こちらでもちょっとした企画があるのですが、お話をお聞きいただけませんか?」
「あ、あんたは?!」
思わず愚痴モードに入ろうとしたところで、蔵屋敷精肉店の店長と八百屋の北沢の店長に声を掛ける男がいた。
両店長はその人物にとても見覚えがあった。
皆様からのご愛顧、誠に痛み入ります。
これからも評価、ブックマーク、感想など、皆様の応援を糧に頑張って書いていきます。
次回の投稿は2021年1月3日午前0時予定です。
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