幕間3 ノアズアークにて調べられた槍と緊急事態
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皆様、あけましておめでとうございます。そして大変長らくお待たせいたしました。これよりりあダン、再稼働となります。
これからもりあダンをよろしくお願いいたします!
「やあやあ、黒くん。お招きに預かり光栄だ。さっそくで恐縮なのだが、例の件について君の見解を聞きたい」
「え、は、早……も、もう来たのか!? いつものお前なら一か月遅刻しててもおかしくないのに……」
「私が手塩にかけて育てた英雄の進退が関わっているのだ。今回は一分一秒さえ惜しい、それだけさ」
「……そうかよ」
ため息をつきながら黒と呼ばれた青年は目の前の女を見る。
目の前にいる女、見た目こそ褐色の肌が健康美を強調するミステリアスな若い女性だが、その実最低でも800年をその姿のままで生き、魔術のあらゆる知識をその身に刻む魔性の老婆である。
名前はライゾンと言うが、それも本名なのか偽名なのかは分からない。
人類救済組織、ノアズアークにあってもトップクラスに謎の多い女ともいえる。
とはいえ、ノアズアークにとって最も若輩者である黒でさえ、300年は軽く生きている辺り、この辺に関してはあまり深入りしていい所ではないが。
「とはいえだ。よく来たな俺の研究所に。大してもてなしも出来ねーが、ま、ゆっくりしてってくれや」
「そういいつつも紅茶とスコーン位の気遣いはあるようだね。少しは客人をもてなす精神を覚えてくれたようでうれしいよ」
「ま、ちょっとはご機嫌取りしないとなってだけさ。尤も、一か月後に腐り切ったこれを出して、連絡を取ってすぐに用意した時はいかにもおいしそうだったんだけどって、嫌味の一つでもいってやろうと思ってたんだけどな」
「……全く、レディに対して取る態度ではないね」
呆れた表情で用意された紅茶に口をつける。黒の用意した紅茶は絶品だった。
ああはいった物の、紅茶自体は一級品で、スコーンも悪くない出来のように見受けられる辺り、粗暴な口調のわりに几帳面な男だと苦笑してしまう。
「それで、頼んでいた件についてはどうなっているのだね?」
「ああ、それか。それならばっちり調べを付けておいたぜ」
そういって黒は一つの黄色の光が封じ込められたかのように光るガラス玉のような物をライゾンに渡す。
「ふむ……どれどれ……」
ライゾンはそういうや否やそのガラス玉を地面にたたきつけて割ってしまう。
だが、それは想定内であったらしく黒からは文句の声は上がらなかった。そして、ガラス玉の中にあった光がゆっくりとライゾンにあたり、そして消えていく。
この球に封じ込められていたのは記憶である。黒が生み出した、自分が見て、聞いた記憶を光にしてガラス玉に封印し、ガラス玉を割った人間に記憶を譲渡する【記憶玉】と呼ばれる道具である。
「おお、素晴らしい! 問題なしか!」
黒が共有させた記憶を脳に詰め込まれたライゾンは、その記憶をみて思わず大声を出す。
「ああ、この闇魔法と武具作成を統括しているこの黒部翔太の名に懸けて宣言する。お前が日本の英雄から受け取ったこれは俺がオカルト知識と魔法武具の知識を総動員した上で、一か月の時間をかけて細心の注意を払って調べても、何一つ問題は出てこなかったとな。だからこいつは返しておくぜ、ほらよ」
そういって黒部翔太と名乗った青年はマジックバッグから預かっていた槍を取り出し渡す。
その槍は間違いなくかつてライゾンが渡した槍だったが、以前と違ってその力は以前よりも大幅に制限されているのが分かる。
なぜならライゾンが手に持っても以前のように放たれた雷が出てこないし以前手に持った時の力が感じられないからだ。
「封印処置もしてくれたんだね。ありがとう」
「ついでだ。気にすんな」
礼を言うライゾンに、軽く返す黒部。
「そうだ、ついでだからお前にだけは今ここでいっておくが、近いうちに召集かけるぜ」
「む? 何かあったのかい?」
「ああ、特大のやべー事態だ。まっずいことになったぞこれ」
「……何があった?」
長い付き合いでライゾンは黒部の、まっずいことになったぞこれ、は本当に大変な事態であると知っているのである。その言葉を聞いた瞬間ライゾンの目が真剣になる。
「ああ、まず率直に言うんだが……」
どこか話しづらそうに視線を泳がせ、覚悟が決まったのか話し出す。
その内容は、ライゾンの想像の斜め上を行く衝撃的な内容であった……
………………………………
「それは……大変な事態だね」
「ああ、だから俺はこのことをノアズアーク全員に共有させ対策を講じていくつもりだ。このままじゃ俺らの計画の障害になることは間違いない。これはあくまで俺がこの槍について調べを進めるうちに偶然手にした情報から現地に赴いて手に入れた情報だからな。今のところまだどこにも漏れていないはずだ」
「そうか……リーダーにはもう話したのかい?」
「いや、リーダーとは通常のルートじゃ中々連絡がつかねー。だから緊急招集で呼ぶ必要があるってだけだ。俺らにとって緊急招集なんてダンジョンの管理の根幹を担当しているリーダーと連絡とるための手段でしかねーだろ」
「まあそれはそうなんだが」
そういうとライゾンは頭を掻いてしまう。
思えばこの人類救済組織、ノアズアークのリーダーと連絡が取りづらくなったのはリーダーがこのダンジョンと言う物を世界中に作り上げた時に根幹のシステムを管理、統括しだしたからであり、半ば思い付きのような理由でゲーム的なシステムが生まれた原因の一端であるライゾンは流石にちょっとした罪悪感に襲われた。
「ともかく、この話は後に改めてする。これは俺らの計画を根底から利用され、喰らわれる可能性さえある緊急事態だ。誰もボイコットしないように祈るばかりだが……特にライゾン、お前は緊急招集は応じろよな?」
「わ、分かっているとも、うん。今回のようにすぐに参加しようじゃないか!」
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次回の投稿は2021年1月2日午前0時予定です。
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