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りあダン! 現実世界にダンジョンが?!  作者: 大道寺 禅
地方都市奪還作戦 本戦開始!
237/385

第二百三十四話 終わりの始まり 始まりの終わり

累計PV数395万突破しました!

これも皆さまからのご愛顧の賜物です。

これからもりあダンをよろしくお願いいたします!

「やっぱし来たか。久しぶりじゃん、ライゾン」

「ああ、皆久しぶりだね」


 親しげに話す秋彦だが、ライゾンは久しぶりだと言うのに表情は真剣そのものである。


「まずは皆日本における魔物掃討完了おめでとう」

「おう、ありがとさん」


 いつもぺらぺらと物事を話すライゾンらしくない口数の少なさだ。どこか焦っているようにも見える。

 少し気まずい沈黙が場に流れたので、ちょうどいいので秋彦が話しかける。


「あ、そうだライゾン。ちょうどいいからちょっと頼まれてほしいことがあるんだけど?」

「む? 君が頼み事とは珍しい、何だね?」


 聞くだけ聞いてくれそうだったので、秋彦は先ほど手に入れた槍を差し出す。


「これさ、ちょっと預かっといて……っていうかどっか適当に処分しといてもらえん?」

「「「「え!!?」」」」


 この場にいる女子全員が声をそろえて驚いた。


「ままま待って待って、何考えてんのさ秋彦! そんな強力強大な槍を預ける、っていうか処分!!?」

「……それを持っていれば恐らくどんなところであっても楽勝、日本を守る事にも貢献できるし、世界規模であらゆる事象に対して有利になる。なぜそれを手放そうとするの?」

「理由はあるんでしょ? 聞かせてほしいわ。いくらそれは貴方の物でそれをどうするのかは貴方次第であったとしても正直納得できないわ」


 桃子は動揺し過ぎて声が上ずっている。茜は努めていつものように話そうとしているがやはり内心穏やかではないらしく、かなり口調が早口になっている。

 ジュディでさえ、理解をしようとして出来なかったらしく理由を求めている。


「いやー、今二回くらい攻撃に使ったけどさー、これ俺の手に余るよ。こんなの使い続けるとか無理。使い続けてたら先に俺死んじゃう」

「あー、そっかそっちかー、確かに突きに一回、投げに一回使っただけで肉体力も魔法力枯渇してたもんね」


 槍を手にしたとき、半ば力を無理やり注がれて、その力をフルに使ってでの攻撃。それをたった二度行っただけで秋彦本人の肉体力も魔法力も空っぽ、体はボロボロの状態になっていた。

 使い続ければいずれ慣れるかもしれないが、使用した感覚から言えば恐らく槍のスペックが高すぎてその前に自分の身体が摩耗しきって死ぬ未来しか見えない。


「それにこんなの強大過ぎて、一個人が持ってていい力じゃねーって。核攻撃みてーな威力と範囲になってんじゃねーか。俺は国の所有物になる気はねぇからな」

「それは……そうかもしれないけど……」

「……でもやっぱりもったいない気がする。せめて国に献上するとか、そういう方向にした方がいいんじゃないの?」

「やだよ、使い手が俺しかいない以上、いざこざが起こって最終手段でこれ使おうって話になったら俺のところに来るじゃねーか」


 そういわれて茜も沈黙してしまう。結局これの所在が明らかになっている以上、誰に渡そうと使い手が秋彦だけである以上結局使用を決定された時お鉢が回ってくるのは秋彦にだ。

 二度使っただけで死に掛ける様なとんでもない武器をである。


「せめてこれがもうちょっと出力抑えられるんなら話は変わるんだけどなぁ……有用なのは俺もわかってる。一回の戦闘で使っただけで死にそうになるくらい摩耗するってのが問題なだけだし」

「うーん……たった一回振るっただけで摩耗しきる様な物を使わせ続けられたら、本当に秋彦が壊れちゃうものね。残念だけどその方がいいのかもしれないわね……」


 全員盛大にため息をつく。どうやら秋彦自身ももったいないとは思っているようだ。だがだからと言って扱いきれないような物を持っている方が、リスクが高いと判断しただけで。

 しかしここでライゾンが思わぬことを口にする。


「う、うむ、それなんだが……私がここに来たのはそれを預かる為だったんだ。君にしか使えないと言っても君に危害が及ぶような物であっては本末転倒だからね。それは我々がしっかりと調べを付け、無害であると判断出来たらさらに力を封印して返そうじゃないか」

「お、ほ、本当か!?」

「うむ、一振り二振り程度では倒れない位に力を制限し、少しづつ慣れていけるように調整しよう。そうしてゆっくり慣れていけば最終的には全力で振れる日も来るはずさ」


 おお! と沸き立つレインボーウィザーズ。


「ただし! これが振るえば振るう程に秋彦に害があると判断した場合はこちらで処分させてもらうよ。それで構わないね?」

「おう、元からそのつもりだし、大丈夫だ。よろしく」

「任されたよ。ではその槍を寝かせる形で置いてくれ」


 言われた通りに秋彦は槍を横に置く。そしてライゾンはそれを手に取った。

が。

 ライゾンの手に突如槍から発せられた電撃が走る。


「ぐお! こ、これは……やってくれたね……」

「な、ら、ライゾン!」


 その槍を持っていた手は炭化し、肘ごと落ちてしまった。勿論槍も一緒に。


「だ、大丈夫かお前!!?」

「ふ、ふふふ……まあちょっと甘く見ていたなこれは……持ち手以外が持つとこうなるという訳か」


 ライゾンは声こそいつもと同じような口調ではあるが、顔には青筋が立っていた。


「ふぅー……ならば私も全力で行くぞ」


 ライゾンがそういうと無くなった肘から先が急に光だし、腕の形になる。そして光が収まると、ライゾンの肘から先が復活した。

 そしてライゾンの瞳が虹色に輝きだす。それと同時にライゾンの身体から膨大な魔法力が溢れ始める。

 その様子にレインボーウィザーズは全員顔が引きつった。優太を除いて。


「こ、この力は……」


 他の誰も気づかなかったが、それは優太がどこだかわからないような場所から持って帰ってきた力に似ている。この場では優太だけがそれに気づいた。

 ライゾンはそのまま腕にその力のすべてを収束させ、マジックバッグから透明なガラスの容器のような物を取り出した。

 そしてライゾンは再び槍を手に持つ。

 槍はまるで意思を持っているかのように雷を出しつつ激しく抵抗するが、今度はライゾンの腕は炭化しない。

 そしてそのままガラスの容器に槍をしまい、腕に集めていた魔法力を今度はガラスの容器に込める。そうするとしばらく容器の中でなお暴れていた槍は次第におとなしくなっていった。

 その様子を満足げに見て、マジックバッグに容器をしまうと満面の笑みを浮かべた。


「ふぅー……全く、力ばかり無駄にあるんだから……よし、これでまずはわたしの用事は完了だ! 皆、改めてお疲れ様!」

「お、おう。すっかりいつもの調子だな……」

「いやー、どうやって君らとの関係を破壊せずにこの槍を渡してもらうか随分悩んだからね」

「つまり、もし槍を渡すことを拒んでいたら殺してでも奪っていたと言う事かしら?」


 ライゾンは悩みの種がなくなったかのようにすっかりいつも通りの口調に戻っていた。だが、槍を渡すことを不服に思っていた茜とジュディが意地悪く聞き返す。


「え、いやまあ……もしもの話じゃないか。そこは気にしないでおこうじゃないか」

「……そもそもあの槍は何?」

「そうね、そこも気になったわ。今までのやり取りからしてアンデッドドラゴンに負けそうだったことを見兼ねて貴方達が渡してきた物ではないみたいだものね」

「そ、それは……」

「……恐らくあの槍による討伐は貴方達にとってもイレギュラーだったのでしょう?」

「う!」


 いつもの余裕の表情はどこへやら、茜とジュディの質問攻めにライゾンは冷や汗をかいている。


「と言う事は、もしかして第三勢力から介入でもされたのかしら?」

「……貴方達には貴方達の目的がある以上敵対組織があるとは思っていたけど、第三勢力もいた。それが横やりを入れる形で強力な力を渡して来たからあわてて回収しに来た、とか?」

「おいおい、その辺にしといてやれよ……」


 見兼ねた秋彦が止めにかかる。これではもはや弱い者いじめだ。


「焦んなくたってどうせ中級ダンジョンは目の前なんだ。しっかり実力付けてからそこら辺にあたり付けたっていいじゃねーか。今は生き残った、それで良しとしとこうぜ」

「うーん……秋彦がそういうなら……」

「……私は正直不服。でも取り上げられた本人にそういわれたらもう何も言えない」

「す、すまない……助かった……」


 すっかりたじたじであったライゾンが思わず礼を言う。


「まあでも、中級制覇したら改めてお前らの目的は聞くからな。その時は観念して喋れよ」

「わかっているとも。では、私はこの辺で」


 それだけ言うとライゾンはふっと消えた。


「……よかったの?」

「いいじゃねーか。ここまであいつらのやることに加担してんだし、今更だろ。いつまでも膨れっ面してんじゃねーよ」


 そういわれて茜はようやく大人しく引き下がった。

 とりあえず回復した探索者達だったらまずこのアンデッドドラゴンの亡骸であるコアの所までくるだろう。とりあえず集合して話し合わないとどうしようもない。

 ここからは日本魔物大氾濫の時以上に周りは騒がしくなるはずだ。それが一段落するまではまた騒がしい日々が続くだろう。探索者達がここに集まるまでの間は、静かである最後の時間だろう。

 今だけはのんびりさせてもらおう。そう思い、どっかりと地面に座り込んだ。

 空を見上げるとすっかり夕方の空になっていた。その空は、探索者達の勝利を明るく祝福しているようにも見える。

 この日を境に、日本は迷宮大国として多くの迷宮から生まれる道具や素材、そしてそれらを使っての装備などを多く生み出していくのだが、それは、もう少し、先の話である……


皆様からのご愛顧、誠に痛み入ります。

これからも評価、ブックマーク、感想など、皆様の応援を糧に頑張って書いていきます。

次の投稿なのですが、りあダンはこれで物語の大きな転換期を迎えました。そこで一旦連載を休止し、書き溜めを作ったりリフレッシュする休暇が欲しいなと思いまして、誠に勝手ながら今回の投稿をもって2か月間ほど休載させてください。

次回の投稿は2021年1月1日午前0時予定です。

しばらくは会えなくなりますが、次は上手く書き溜めを作れたら一気に話を進めていきたいと思いますので、これからもどうか応援宜しくお願い致します!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 一段落、お疲れ様でした。続きを楽しみに待ってます。 [気になる点] しかし、槍は渡さない方がよかったのでは?ライゾン達と戦う時の切り札に成り得たんじゃないかと思うけど。
[一言] 一先ずの連載終了ですね、お疲れ様です! っていうかライゾンは今回のラスボスに日本探索者が勝てると思ってたんだろうか? 何となく最後の最後で介入してきそうだった気もするw では改めて、此処ま…
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