第二百三十三話 終わりの始まり 謎の槍
累計PV数394万突破しました!
これも皆さまからのご愛顧の賜物です。
これからもりあダンをよろしくお願いいたします!
「おお……終わったか……」
アンデッドドラゴンが腐り落ちていく様子を落下しながら見届ける秋彦。しかし勝利の余韻に浸る時間はない。何せ見届けている間も絶賛落下中だ。しかももう指一本動かす気力もない。
「これ……死んだかも……」
普段だったらこの程度楽々着陸したかもしれないが、今は満身創痍なうえに指一本動かせない。その状態で落下したら流石に死ぬかもしれない。
命と引き換えにあの化け物を倒した形にはなるのか。残念だとは思いつつも、どこか晴れ晴れとした気持ではある。
早々に諦め死を受け入れている秋彦。だが、そんな彼の耳に聞き慣れた声が届いた。
「おとうさ―――ん!!!」
ものすごい速度で落下する秋彦に向かってきたのは秋彦の従魔である龍之介だ。龍之介は自らをクッションにして、更に落下の速度に合わせて掬い上げるように飛ぶことで上手く秋彦の落下によるダメージを無効化した。
「あ……龍ちゃん……?」
「ごめんねお父さん! 僕、気絶しててすぐに行けなくて、たった今やっと目が覚めたんだ! 上手く笛の音の残滓をたどってきたんだけど……ごめんなさい!」
「いや……むしろナイスタイミングだ……」
涙声で弁明する龍之介だが今となってはどうでもいい事だ。ある意味それのおかげで優太から槍を受け取れ、この意味の分からん力に覚醒できたのだから。
「龍ちゃん……優太おじちゃんが……どこにいるかわかる……?」
「うん! わかるよ!」
「じゃあ……俺を優太おじちゃんのとこへ連れてってくれ……」
「わかった! 任せて!」
………………………………
「「「「秋彦!」」」」
龍之介が向かった先にいたのはいつの間にかレインボーウィザーズ全員が揃っていた。まず真っ先に出迎えてきたのは優太だ。
「やったね! やったんだね!!」
「おー……親友……てか誰かポーションくれ……体がピクリとも動かねー……」
「……はい、ジュディ、飲ませてあげて」
「ええ、分かったわ! さあ秋彦しっかりして、ポーションよ!」
「あ、ありがとさん……」
ジュディは素早く茜からポーションを受け取ると、龍之介の背で倒れている秋彦に膝枕をしながらポーションを飲ませる。
飲ませているジュディと飲まされている秋彦、その二人の様子をすごくいい笑顔で見ている茜のことを優太は見逃さなかった。
茜ちゃんは本当にいい趣味をしている。そう思わずにはいられない優太だった。
………………………………
秋彦の身体がポーションによって動くようになった秋彦はとりあえずアンデッドドラゴンの亡骸ともいえるアンデッドドラゴンのコアの近くにやってきた。
そこには自己主張をするかのように巨大な槍が深々と突き刺さっていた。
「うわー……これ本当に俺がやったんだな……なんか今更ながらに信じらんねー」
「いやいや、秋彦が投げてたからね。僕は感知してたから知ってるよ」
「私たちはまるで感じられなかったけどね」
「うんうん、アンデッドドラゴンに追い詰められてもうだめだー! ってなってたと思ったらアンデッドドラゴンが思いっきり焼かれて、すぐに突然風穴開いて、かと思ったら空に穴が開いて光が差し込んできて、その大穴からこの槍が降ってきたくらいにしか思わなかったもん。秋の仕業とは思わなかったよ」
「……それを感知出来るなんて優もさりげなくとんでもないスペックになってる」
わいわいと騒ぐレインボーウィザーズ。
秋彦だけは槍の前に立ち、おもむろに右手をかざす。すると高層ビルどころか東京タワーほどもありそうな巨大な槍が見る見るうちに小さくなっていき、最終的には優太から受け取った時のサイズとなった。
地面に突き刺さった槍は、秋彦が引き抜くのを待っているかのようにその存在感を保ちつつそこにあった。サイズが変わった事で突き刺さっている先は巨大なクレーターの中心だ。
望みどおりにクレーターの中心へ行き、槍を引き抜く。持った感じとしては、不自然なほどに手になじむと言う印象を受ける。この槍を手に入れたのはついさっきだったはずだ。でもそれを感じないほどに振りやすく、扱いやすい。まるで何十年もこの槍一本で戦い続けたかのような錯覚さえ感じられるほどに。
そしてこの槍の恐ろしいまでの力だ。アナライズをしてみてもやはり「???」とだけ出てきて何もわかりはしないが、持っているだけで自分がとんでもない力を手に入れた事だけは簡単に理解が出来る。
この時に用意されたものではないはずだ。もしそうならもっと早くに投入されていたはずだ。
感じるパワーを一身に受けながら優太に尋ねる。
「しっかしスゲーなこの槍……親友」
「なに?」
「いったいこれ何なんだ?」
「うーん……よくわかんないんだよね、それが。誰かから親友に渡してくれって言われただけだし」
「そうなのか……」
そういって槍をまじまじと見つめる。
「それは今の君には手に余る物だ」
急に後ろから声を掛けられた。だが、声を聴いたらもう驚かなかった。この声はよく知っている。思えば節目節目に必ず聞いた声だ。
体を声の主の方向へ向けると、やっぱりいた。かける声も思わず軽くなると言う物である。ある意味敵で、ある意味味方。友人の様な気楽さをもって話しかける。
「よう、久しぶりじゃん、ライゾン」
皆様からのご愛顧、誠に痛み入ります。
これからも評価、ブックマーク、感想など、皆様の応援を糧に頑張って書いていきます。
次の投稿は10月31日午前0時予定です。
よろしくお願いします!