表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
りあダン! 現実世界にダンジョンが?!  作者: 大道寺 禅
地方都市奪還作戦 本戦開始!
235/385

第二百三十二話 終わりの始まり 奇跡の様な一瞬

累計PV数392万突破、評価者数660人突破しました!

これも皆さまからのご愛顧の賜物です。

今日はお仕事が遅くなった関係で投稿が遅れました。申し訳ございません。

これからもりあダンをよろしくお願いいたします!

 槍から得られた凄まじい力を秋彦は全身で受け止め、優太から受け取った槍を静かに構え、心を落ち着かせ、体を休ませる。

心・技・体を一纏めにし、焼け焦げた肉のにおいを漂わせるアンデッドドラゴンに槍を向ける。

アンデッドドラゴンは残った右腕と頭を液状化しかかっている腐肉と共に引きずって秋彦達の元へ向かっていた。

その様子に秋彦は音もなく優太から渡された槍を構える。


「今なら……やれるか……?」

「やれるよ、きっとね。頑張って!」

「……ああ」


 笑顔で応援する優太に秋彦は一言だけ返す。と、秋彦は跳んだ。

 今だったら先ほど撃った渾身の一撃に足りなかった部分に近づけ、自分の中で最高の一撃として昇華させられそうな気がする。

 そう思ったら跳ばずにはいられなかった。相手はあのどうしようもない質量の怪物。でも今の自分であれば、あれはもはや倒せない相手ではない。根拠も何もなかったが、その確信だけはあった。


「……一つ跳んでは距離を詰め」


 まず一足飛びで飛んだ秋彦だが、すでに距離は十分に詰めることが出来た。距離を詰め、突きの挙動に向けて準備を行う。


「……二つ跳んでは狙いを定め」


 次の二歩目の跳躍で行った事は相手に狙いを定める事であった。如何なる威力を持つ一撃も当たらねば意味がない。


「三つ跳んでは力を籠める!」


 アンデッドドラゴンと距離を詰め、いよいよ外しようがなくなった時、秋彦は最後の跳躍によって自らの全身に最大限力を込めた。


「喰らいやがれ、これが今の俺の全力の突き」


 その一閃を食らわせる刹那、秋彦とアンデッドドラゴンは互いに目を合わせさえした、それほどの長い一瞬であった。


「【三跳一閃突き】だ」


 アンデッドドラゴンは残った腕と頭の内、頭をこの一撃で打ち砕かれた。巨大なビル群を集めたかのような巨体であるアンデッドドラゴンを人形か何かのように貫いたのである。


「うおおお!?」


 秋彦は、自分でも信じられないような勢いでアンデッドドラゴンを貫いた。自らに湧いた力を軸に自らの戦闘による蓄積を組み合わせて繰り出したその一撃は、頭蓋骨を貫き、腐肉を吹き飛ばし、比喩でもなんでもなくアンデッドドラゴンに巨大な風穴を開けた。

 だが、まだ足りない。巨大な咆哮を上げて崩れるアンデッドドラゴンを、跳んだ勢い余って空中に投げ出された秋彦は体勢を変えて見届ける。

 今の一撃で体のどこかにあった紫水晶をも砕いたのだろう。相手のコアはすでに赤黒くなっており、もはや限界近くまで弱り、とどめを刺せるところまで来ている事は明白であった。

 しかし、今の自分は先ほどの奥義によって最大出力で跳んだ事で今は空中。踏ん張りもきかない空中では体勢を変えるだけで精いっぱいだ。突きを完遂したことで力が抜けつつあるこの身体では、とどめを刺す前にコアが再びあの腐り切った体に戻ったら今度こそどうにもならないだろう。


「俺の一撃は無駄で終わるのか……?」


 思わずそうつぶやく秋彦。しかし、優太から譲り受けた槍は勿論そうはさせない様だ。

 槍が淡い光を放つ。すると、先ほどの奥義を放った時と同じような不思議な力が槍を通じて秋彦の中に流れ込むのを感じる。

 今度は自分の戦闘の蓄積関係なく流れ込んでくる強力な力だ。今までの自分の能力とは別物の力と言えるだろう。

 その力は風船に空気を膨らませるために詰め込むかの様だ。最早秋彦に無理やり入り込み力を詰め込んでいるともいえる。

 その散々に詰め込まれた力が求め、訴えるのだ。あの魔物の存在を許すなと。この国に仇名す悪魔を討てと。

 秋彦はその力の訴えのままに言葉を紡ぎ、動き出す。


『……天開き地闢(ひら)く夫婦の御業(みわざ)を此処に』


 落ち行く秋彦は再び体勢を変え、大の字に寝そべるように背中を地に向け、空を見る。


『成り余る逆矛を成り合わざる仇に、刺し塞ぎて産まるるは太平楽土』


 槍を抱き込むように、あるいは念を吹き込むように槍を額に付け、更に続ける。


『国土蹂躙せし悪鬼生くること能わず、天下動乱せし魑魅入ること能わじ』


 槍の放つ光が淡い光から眩い光へと変わる。虹色の光だ。そして秋彦は虹色に光り輝く槍を構える。槍を投擲する構えだ。めきめきと音を立てながら槍を持った右手、右腕が肥大化し、高質化していく。限界まで力をためるつもりの様だ。


『我らの父母(かぞいろ)在りし日の如く、果てなき光輝の満てし世の有らん』


 秋彦は槍を投げた! その槍は魔物に向かってではなく分厚い黒雲が覆う天空に向かって。

 槍は空高く飛んでいき、飛んでいき、どこまでも飛んでいき……黒雲を突き破り空に巨大な大穴を開けた。

 この黒雲を突き破り隠れていた太陽の光が降り注いでいた。その光景は絶望の闇に覆われた世界を切り開くかのような、奇跡のような光景ともいえるだろう。

 だが、この光景を見ていた人々が驚くのはまさにここからである。


『高き橋より矛を指し下ろし、今此れにある渾沌(まろか)れを貫け――――――――!』


 なんと、投げた槍が黒雲に開けた巨大な風穴と同じぐらいの大きさになって魔物に向かって刃の部分からまっすぐ落ちてきたのだ!

 突き破るはずだった雲は秋彦が槍を投げた事で消え、それはまるで空に向かって投げた槍が通り道を作ったかのようだった。その光景はもはや言葉では言い表し切れない程の光景だった。

 神話の一シーンを見ていると言われても納得できる。今まさに生まれた神話のようであった。


「……これで終わりだ。【天魔反(あまのまがえし)】!」


 勿論コアをむき出しにし、動きを止めている魔物にそれをかわす術などありはしない。

 もはや断末魔の悲鳴さえ上げられないその魔物のコアは落ちてきた巨大な槍に貫かれた。前衛探索者が総出で攻撃してやっと傷つけられるコアを、ダイダラボッチがありったけの力を込めてやっとひび割れたコアを

 見事に両断したのだ。

 その時、アンデッドドラゴンの光を放つ瞳から光が消えた。元々腐食していた肉はその場で急激に腐るかのように液状化し、関節から音を立ててあの巨体が崩れ去っていく。


 そうしてこの戦いを勝ち抜いてきた探索者達に甚大な被害を及ぼしたあの巨大な悪魔は、もう二度と動くことはなかった。


皆様からのご愛顧、誠に痛み入ります。

これからも評価、ブックマーク、感想など、皆様の応援を糧に頑張って書いていきます。

今回の天魔反のイカス詠唱を考えてくださったのは私の友人である人です。この場を借りてお礼を申し上げます。

次の投稿は10月28日午前0時予定です。

よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 回復しても事態が掴めない他のメンバーの( ゜д゜)な顔が目に浮かぶwwwwwwww
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ