第二百三十一話 終わりの始まり 秋彦の覚醒
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「なんでだあああああーーーー!!」
絶望と遣る瀬無さに思わず叫び声をあげた秋彦にレーザービームが放たれた。
しかし、そのレーザービームは秋彦が受けることはなかった。秋彦の後ろから飛んできたレーザービームも強力な魔法力が簡単に打ち消したのだ。
「え、は、はぁ!!? うお?!!」
あの強大なレーザービームを打ち消して尚有り余る炎の魔法力が暴風を呼び、走っていた秋彦の身体を掬い上げ、転ばせる。
慌てて立ち上がろうとしたが上手く立ち上がれない。絶望を押し殺していた心と体が今になって悲鳴を上げたのだろうか。圧倒的な力を前に折れかかった心を無理やりに動かしていたが、極限に達したことでこんなことが起こったからなのか、一気に気が抜けてしまったらしい。
すっかり腰が抜けて動けなくなってしまった秋彦だが、だからこそ頭の回転に労力を割けると言う物である。
へこたれながらも状況を整理するべく頭を働かせるが、やはり何が起こったのかがわからない。無理もない話ではあるが、今の状況はそうそう簡単に理解できるものではなかった。
今の炎は何だ? あのアンデッドドラゴンのレーザービームを打ち消せる威力のある炎?
もしかしたらこんな尻に火が付いたような状態に追い打ちをかける様に全く別の第三勢力でも現れたと言うのか?
一見馬鹿なと思えるような考えばかりが頭がグルグルと回っていき考えがまとまらない。ただでさえ頭が混乱していると言うのに、これ以上状況をややこしくするような事態なんて正直起こってほしくないのだが。
冷静さを保とうにも一旦頭に血が上った状態であった秋彦には容易ではなかった。
だが、次の瞬間にかけられた声に急激に頭が冷えていく。
「秋彦!」
「おおお!!? し、親友か!」
声を掛けたのは、そう、紛れもなく秋彦の親友である石動優太だった。
秋彦は親友たる優太の姿を見ると急激に落ち着きを取り戻していく。長年頼られ続けてきた親友に情けない姿を見せる事は出来ないと言うある種の役割、立ち回りがそうさせたことなのだろうか。優太の前では去勢でもなんでもいいので頼れる人でいたいと言う思いが秋彦に冷静な頭を取り戻させていた。
「無事だったか!」
「うん、大丈夫だよ。そっちは?」
「はは、正直かなりボロボロだ。槍もバッグもどっか行っちまった……」
そういわれて優太は改めて秋彦を見る。生命力感知もそこそこにあるからわかるが、苦笑しつつ自分の被害を語る秋彦の被害は、努めて軽く話しているその口ぶりからは想像もできないほどに尋常ではなかった。
はっきり言って死ぬ一歩手前と言われても信じられる状態だ。どうしてこの状態でそんなに軽く喋れるのか、優太には信じられなかった。
だがそれもたぶん、自分やレインボーウィザーズの仲間を思っての事と思うと納得も出来た。そういう人物であることは優太もよく知っているからだ。
「オッケー、まずは回復しちゃおっか!」
そういうと優太は少し力をためる挙動を行うと、粉か何かを振りまくかのような動作をする。
その挙動からあふれ出す魔法力に、目の前にいた秋彦は恐怖さえ覚えた。
「え、し、親友? 何なんだその魔法力? なんかとんでもないエネルギーを感じるんだが?」
「ああ、うん、ちょっとね。これについては後でちゃんと説明するから、今は飲み込んでて? ね?」
「お、おおう……?」
「まあ行くよ、えええいい!!」
釈然としないままにとりあえず質問を呑み込んだ秋彦。優太はそれに満足し、回復魔法を発動させる。
優太は粉か何かを振りまくかのような動作を何度か繰り返す。キラキラと光る何かが振りまかれる。光り輝くそれは環境結界で暗くなった周辺を明るく照らし、巨大なドーム状に広がっていく。
それを呆気に取られてみている秋彦。気が付くと自分の身体の傷はすべて癒えており、また自分の生命力感知がそのドームの中に次々と人の存在を感知し始めた。
それが意味することを考えた時、秋彦は折角立ち上がったと言うのに再び腰を抜かしそうになった。
「……親友? ま、まさか、今の一手だけで……?」
「うん、周りにいた死に掛けの人たちも一緒に回復させておいたよ」
それがいかに恐るべきことかと言うのは、もはや考える事さえ馬鹿馬鹿しいと感じられることだ。
回復魔法の回復範囲は自分を起点にしている物が多く、通常の光魔法使いLv15が行える回復魔法の範囲はせいぜい半径50mと言ったところだ。
だが今行った、優太の回復魔法の範囲はその常識をたやすく超えた。
少なくとも秋彦の感知スキルの利く範囲である1㎞は軽く超えたはずだ。そして上限は把握できない。
いったいどれほどの魔法力がそれを可能にさせたのか? 少なくとも並みの規模ではあるまい。
その規模はとんでもない、はっきり言って尋常ではない出来事だ。恐ろしい。
「あ、そうそう秋彦?」
「え!? な、なんだ?!」
緩やかに、いつも通りに話しかけられたと言うのに思わず身構えてしまう。
「そんな声出さないでよ、これ、受け取って?」
どこか超然としたままに優太は秋彦に誰かから受け取った神々しい槍を渡した。受け取る秋彦も、どこか不思議そうにしている。
「え、し、親友これは?」
「それね、誰かから秋彦に渡すように言われたんだ。正直ぱっと見でもすごい槍だってわかるし」
「お、おおう……?」
そういわれると秋彦はちょっと首を傾げた。
誰から受け取ったかも覚えていないような武具を何の違和感もなく受け取り、しかもそれを秋彦に渡す。
それはいつもの優太らしくない行動であった。親友らしくないその挙動に違和感を持っていると……
「え、う、うおお!!?」
今度は秋彦の意識が一瞬飛んだ。そしてその一瞬に何があったかも知覚出来はしなかったが、その瞬間に確かに変わったものがある。
「ぐ、はぁ……! あ、ああ、な……何なんだこれ……」
秋彦の身の内から今の優太に負けず劣らずの強大な力が迸っていたことである。
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